追放されたけどFIREを目指して準備していたので問題はない

君山洋太朗

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19話 不動産投資

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「ふむ、これなら順調に進みそうだな」

グランゼリア王国の商業ギルドに足を踏み入れながら、俺は心の中で呟いた。鉱山の管理をソフィアに任せてから一週間が経つ。彼女の几帳面な性格と商売の才覚は、父親譲りというよりも、むしろ上を行くかもしれない。

「おや、クラウゼン様。ご商売の調子は如何ですか?」

受付で声をかけてきたのは、商業ギルドの書記官であるアルベルトだ。中年の痩せた男性で、ギルドの情報通として知られている。

「ああ、順調だよ。今日は不動産関連の情報を探しているんだ」

「不動産ですか?」

アルベルトは眼鏡を上げながら、興味深そうに俺を見た。

「最近、グレンフォードでは修繕が必要な物件が増えていますね。」

「詳しく聞かせてもらえないか?」

アルベルトは周りを確認してから、声を落として話し始めた。

「旧商人街ができてから数十年がたちます。...古い物件が多くあるのです。」

確か、旧商人街ができてから30年はたつはずだ。

「グレンフォードの人口は今も増えていますから住宅の需要は常にあるのですが...古い物件を修繕してまでとなると割に合わないのです。」

これは面白い。「価値転換」があれば、修繕費用を大幅に抑えられる。建材をグレードアップすれば、最小限の投資で価値を上げることができるはずだ。

「ふむ。その中でおすすめの物件を扱っている不動産業者を紹介してもらえないだろうか?」

アルベルトは一枚の名刺を差し出した。

「ブラッドリー不動産です。オーナーのジョセフ・ブラッドリーは私の旧知の仲です」

礼を言って商業ギルドを後にし、さっそくブラッドリー不動産に向かった。店構えは古めかしいが、清潔感のある佇まいだ。

「いらっしゃいませ」

出迎えてくれたのは、がっしりとした体格の中年男性。温和な笑顔が印象的だ。

「ジョセフ・ブラッドリーさんでしょうか?アルベルトさんの紹介で参りました、レオン・クラウゼンと申します」

「ああ、アルベルトからは話を聞いております。若くして実業家として名を上げているとか」

ジョセフは親しげに微笑んだ。

商談は順調に進んだ。物件は確かに手入れが必要だが、立地は悪くない。周辺は以前ほどの賑わいはないものの、まだ人通りは十分だ。

「実は、この物件には少し複雑な事情がございまして」

ジョセフは慎重に言葉を選びながら説明を始めた。

「前オーナーが急な商売の失敗で手放すことになったんです。建物自体は骨格がしっかりしていますが、雨漏りや床の傷みが激しく」

「その分、価格は抑えめですか?」

「ええ。通常の相場の6割ほどです」

俺は物件の図面を見ながら、頭の中で計算を始めた。「価値転換」で建材をグレードアップすれば、修繕費用は通常の3割程度で済む。家賃収入を考えれば、投資回収は1年以内に可能だろう。

「実地を見せていただけますか?」

現地に着くと、確かに建物の状態は良くなかった。壁には亀裂が入り、床は所々が腐っている。しかし、これは俺にとってはむしろチャンスだ。

建物の隅々まで確認し、必要な修繕箇所をメモに取る。「価値転換」の効果を最大限に活用するため、どの部分から手をつけるべきか、頭の中で段取りを組み立てていく。

「どうでしょうか?」

ジョセフが心配そうに尋ねる。

「購入を前向きに検討させていただきたいと思います」

「え?本当ですか?」

ジョセフは驚いた様子だ。

「しかし、修繕費用がかなりかかると思うのですが...」

「その点は問題ありません」

俺は自信を持って答えた。

「私なりの方法があります」

契約の詳細を詰めながら、俺は早くもこの物件の運用計画を練り始めていた。賃貸物件として貸し出せば、安定した収入源になる。さらに、商業地区に近いという立地を活かせば、店舗としての需要も見込める。

商談を終えて外に出ると、夕暮れ時を迎えていた。街灯が次々と灯り始め、人々が家路を急ぐ姿が目に入る。

「計画は予定より早く進んでいる」

俺は満足げに空を見上げた。かつての冒険者パーティー時代、効率を重視する俺の考えは理解されなかった。しかし今、その考えが着実に実を結びつつある。

明日は建材の業者を回り、「価値転換」に最適な素材を探そう。そして早々に修繕工事に取り掛かれば、来月には賃貸募集を開始できるはずだ。

「バートさんにも協力してもらおう」

街を歩きながら、俺は心の中で決意を新たにした。このペースで進めば、FIREまでの道のりは確実に近づいている。そう、これこそが俺の目指す道なのだ。

商業ギルドに戻り、物件購入の報告と必要な手続きを済ませる。アルベルトは満足げな表情を浮かべながら、「さすがはクラウゼン様ですね」と言った。

その言葉に軽く頷き返しながら、俺は次の一手を考えていた。一つの物件で成功すれば、それを足がかりにさらなる展開が可能になる。不動産投資は、まさに俺の能力を最大限に活かせる分野なのだ。

夜の街を歩きながら、俺は今日の出来事を整理していた。ソフィアに報告しなければならないことも多い。彼女の意見は、いつも的確で参考になる。

レオンの背を照らす月明かりが、これから始まる新たな挑戦を祝福しているかのようだった。
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