追放されたけどFIREを目指して準備していたので問題はない

君山洋太朗

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20話 バートの協力

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「おや、レオンさん。朝早いですね」

アパートの管理人室から出てきたバートが、がっしりとした体格を揺らしながら声をかけてきた。

「バートさん、おはようございます。今日は建材の買い付けで早めに動こうと思いまして」

「ほう、昨日話してた物件の件ですか?」

バートは興味深そうに眉を上げた。彼は元建築家で、不動産の目利きには定評がある。昨晩、購入を決めた物件について相談したところ、「立地は良いが、修繕には相当の技術が必要だな」と言われたものだ。

「はい。実は、バートさんにご相談があります」

「なんです?」

「物件の修繕について、アドバイスをいただけないでしょうか」

バートは丁寧な口調で答えた。

「いいですよ。私も暇を持て余していたところです。では、図面を見せてくれますか?」

俺は準備していた図面を広げ、昨日の調査で気になった箇所を説明した。雨漏りの原因となっている屋根の劣化、床材の腐食、壁の亀裂。通常なら莫大な修繕費用がかかる箇所ばかりだ。

「ふむ、確かにこれは大掛かりな工事になりそうですが...」

バートは図面に目を通しながら言葉を続けた。

「何か考えがあるのですか?」

「はい。私の能力を使えば、建材自体の品質を上げることができます」

バートは興味深そうに俺を見つめた。

「価値転換、でしたか?」

「ええ。ただし、一日に使える回数に限りがあります。できれば効率的に...」

「なるほど」

バートは何かを思いついたような表情を見せた。

「それなら、こんな方法はどうですか」

彼の提案は実に的確だった。まず雨漏りの原因となっている屋根を修繕し、その後で床材、最後に壁と、優先順位をつけて作業を進める。各工程で必要な建材を事前に価値転換しておけば、作業効率も上がる。

「バートさん、その手順なら私の能力を最大限活用できます」

「そうでしょう?」

バートは満足げに頷いた。

「建築の基本は段取りです。能力を使う順番を間違えれば、せっかくの能力も無駄になってしまいますから」

話し合いの結果、バートに工事の監督を依頼することになった。彼の経験と知識があれば、より効率的な修繕が可能になるはずだ。

「ありがとうございます。報酬の件は...」

「いやいや」

バートは手を振った。

「私にとっても良い暇つぶしになりますから。それに...」

彼は少し考え込むような表情を見せた。

「久しぶりに本気で建築の仕事に関われるのは楽しみです。報酬は通常の半分で十分ですよ」

その言葉に感謝しながら、俺は早速建材の買い付けに向かった。

最初に訪れたのは、街の北門近くにある「グレイストーン建材店」だ。

「いらっしゃいませ」

店主のマーカスが出迎えてくれた。彼とは鉱石の取引で既に面識がある。

「マーカスさん、今日は建材の相談です」

必要な建材のリストを見せながら説明すると、マーカスは首を傾げた。

「これだけの量となると、かなりの額になりますが...」

「ええ、わかっています。ただし」

俺は意味ありげに笑みを浮かべた。

「品質の良くない物で構いません」

「え?」

「私なりの方法で、品質は上げられますので」

マーカスは一瞬怪訝な顔をしたが、すぐに察したように目を見開いた。

「なるほど、例の"能力"を使うと」

「ええ。在庫処分品でも構わないので、できるだけ安く」

交渉の結果、通常価格の4割ほどで必要な建材を確保できた。価値転換で上質な建材に変えれば、実質8割以上の経費削減になる。

昼過ぎ、建材を運び込んだ物件で、早速価値転換の作業を開始した。

「ふむ、これは面白い」

バートが感心したように見つめる中、俺は建材に手を触れ、集中力を高めていく。

「価値転換」

淡い光が建材を包み込み、みるみるうちに色艶が変化していく。質の悪かった木材が、高級な銘木のような輝きを放ち始めた。

「見事です」

バートが感嘆の声を上げる。

「これなら上等な材料として十分使えますよ」

「ありがとうございます。ただ、一日に使える回数は限られているので...」

「ええ、わかってます」

バートは頷いた。

「だからこそ段取りが重要です。今日は屋根用の材料を優先しましょう」

その日は屋根材の価値転換を終えたところで作業を終了した。体力の消耗は激しかったが、魔力ポーションで回復しながら、予定通りの成果を上げることができた。

夕方、作業の報告のために商業ギルドに立ち寄ると、アルベルトが声をかけてきた。

「クラウゼン様、工事の準備は順調ですか?」

「ええ、予想以上にいい進捗です」

「それは何より」

アルベルトは満足げに頷いた。

「実は、他にも興味深い物件の情報が...」

「申し訳ありません」

俺は丁寧に断った。

「今は一つの物件に集中したいので」

アパートに戻る途中、ソフィアからの伝言を受け取った。鉱山の作業も順調とのことだ。

「計画は着々と進んでいる」

月明かりに照らされた街並みを見上げながら、俺は満足げに微笑んだ。予定通りに進めば、この物件は大きな収入源となるはずだ。そして、それはFIREへの確実な一歩となる。

「さて、明日は床材の価値転換か」

どこまでも冷静に、計画的に。それが俺のやり方だ。そんな姿勢が、今では確かな結果として実を結びつつある。

夜風に吹かれながら、俺は次の日の作業手順を頭の中で整理していった。
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