追放されたけどFIREを目指して準備していたので問題はない

君山洋太朗

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21話 好調な滑り出し

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「完璧だ」

最後の壁材の価値転換を終えた俺は、満足げに物件の内装を見渡した。一週間の作業を経て、かつてのボロ屋は見違えるような上質な住居へと生まれ変わっていた。

「見事な出来栄えですね」

バートが感心したように内装を眺めながら言った。彼の指導のおかげで、建材の価値転換を最も効率的な順序で進めることができた。

「バートさんのアドバイスのおかげです」

「いやいや」

バートは苦笑した。

「私は段取りを組んだだけです。これだけの変貌を遂げさせたのは、レオンさんの能力ですよ」

確かに、この物件の改修には俺の価値転換が大きく貢献している。安価な建材を高級素材に変換することで、通常なら考えられないような低コストでの改修が実現した。しかし、それを効果的に活かせたのは、紛れもなくバートの経験と知識があってこそだ。

「さて」

バートが図面を広げながら続けた。

「後は入居者を募るだけですね」

「ええ。その件で、既に商業ギルドから何件か問い合わせが来ています」

実は、改修工事の進行具合を見た商業ギルドのアルベルトが、物件の情報を関係者に流してくれていたのだ。

「ほう、さすがは計算上手なレオンさんですね」

バートは感心したように頷いた。確かに、情報を事前に流しておくことで、改修完了と同時に入居者を確保できる可能性が高まる。これも効率を重視した選択の一つだ。

「では、見学の予約を入れましょうか」

その日の午後から、次々と見学者が訪れた。商人や職人、中には冒険者もいる。物件の立地の良さと、予想以上の内装の質に、皆一様に驚きの表情を見せた。

「これで、この家賃ですか?」

ある商人が信じられないという様子で尋ねてきた。確かに、この品質なら相場の倍以上の家賃を取っても不思議ではない。しかし、俺には別の計算があった。

「ええ。長期の契約をしていただけるのであれば、この金額で」

実際の改修コストを考えれば、相場程度の家賃でも十分な利益が出る。それなら、安定した長期契約を獲得する方が合理的だ。

「これは魅力的な条件ですね」

商人は満足げに頷いた。

「ただ、一つ気になることが...」

「何でしょうか?」

「このような上質な物件を、なぜそこまで安く...」

その質問には、既に用意していた回答があった。

「私は長期的な関係を重視しています。一時的な利益より、継続的な収入の方が価値があると考えていますので」

商人は感心したように目を見開いた。

「なるほど。まさに商人らしい考え方ですね」

その日のうちに、最初の契約が成立した。商人の一家が、3年の契約で入居することになった。続いて、街の有名な仕立屋も2年契約で決まった。

「予想以上の好調ですね」

バートが感心したように言った。確かに、一日で二件の契約が決まるのは上出来だ。しかし、俺にとってはこれも計算通りだった。

「下見に来られた方々の反応を見る限り、残りの部屋も早めに決まりそうです」

その言葉通り、翌日には残りの二部屋も契約が決まった。一部屋は冒険者ギルドの事務職員、もう一部屋は魔法道具店の職人だ。いずれも安定した職業を持つ人々で、長期契約を望んでくれた。

「これで全室の契約が完了しましたね」

アルベルトに報告に行くと、彼は満足げに頷いた。

「さすがはクラウゼン様。話には聞いていましたが、本当に素晴らしい手腕です」

「過分なお言葉です」

「いえいえ」

アルベルトは首を振った。

「物件の価値を最大限に引き出しながら、なおかつ長期的な収益を確保する。まさに理想的な不動産投資のあり方ですよ」

その言葉に、俺は内心で満足感を覚えた。確かに、この物件の運営は理想的な形で始まったと言える。しかし、これはまだ始まりに過ぎない。

「アルベルトさん」

「はい?」

「似たような物件の情報があれば、またお願いできませんか?」

アルベルトは意外そうな表情を見せた。

「まさか、まだ別の物件をお考えですか?」

「ええ。できれば、規模の小さいものを」

今回の経験で、自分の能力を使った不動産投資の可能性が見えてきた。小規模な物件から始めて、徐々に規模を拡大していく。そうすれば、より効率的な投資が可能になるはずだ。

「わかりました」

アルベルトは頷いた。

「良い物件があれば、すぐにお知らせします」

商業ギルドからの帰り道。夜空を見上げながら、俺は静かに微笑んだ。不動産からの安定収入、鉱山からの利益。二つの収入源が確立されたことで、FIREへの道筋がより確かなものになってきた。

「でも、まだ満足はできない」

より効率的な投資方法を探り、収入源を増やしていく。それが、確実にFIREを実現するための道だ。

「次は、どんな物件が見つかるかな」

期待を胸に、俺は静かに歩を進めた。夜風が心地よく頬を撫でていく。この風のように、俺の計画も順調に進んでいくはずだ。
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