追放されたけどFIREを目指して準備していたので問題はない

君山洋太朗

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22話 街の噂

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「アルベルト君、クラウゼンの件について報告してくれ」

商業ギルドの応接室で、ギルドマスターのヴィクター・ロートハルトが若き部下に声をかけた。夕暮れの光が窓から差し込み、重厚な家具に深い影を落としている。

「はい」

アルベルトは手元の書類に目を落とした。

「まず不動産事業についてですが、二ヶ月で五件の物件を取得し、全て満室の状態を維持しております」

「ほう」

ヴィクターは眉を上げた。

「あの老朽化した物件群を、か?」

「はい。しかも、改修費用は当初の見積もりの三分の一ほどで済んでいるようです」

「そんなことが可能なのか?」

「建材の調達ルートについて調査してみたのですが...」

アルベルトは言葉を選ぶように間を置いた。

「不思議なことに、通常の流通経路では確認できない高級素材が使われているのです」

ヴィクターは物思わしげに顎髭をなでた。

「鉱山の方はどうだ?」

「これがまた驚くべき数字でして」

アルベルトは別の書類を取り出した。

「廃鉱と言われていた場所から、市場価値の高い鉱石が次々と産出されています。品質の面でも、他の鉱山の追随を許さない高さです」

「ふむ。確かに常識では説明のつかない成功だな」

ヴィクターは立ち上がり、窓の外を眺めた。

「しかし、だからこそ興味深い。彼には何か...特別な手段があるのかもしれんな」

「そのように推測しております」

「だが、それを我々が詮索する必要はない」

ヴィクターは微笑んだ。

「むしろ、彼の存在自体が街の発展に寄与しているのだ」

* * *

「まさか、あの物件まで押さえられていたとは」

王都随一の商会「ヴィルヘルム商事」の応接室で、マーカス・ヴィルヘルムは驚きの声を上げた。

「ええ」

取引先の商人が頷く。

「しかも、改修後の内装は王都の高級物件にも引けを取らない品質だそうです」

「若いというのに、恐ろしい手腕だ」

「あの廃鉱の件といい、常人では考えられない成功を収めていますからね」

マーカスは書類に目を通しながら考え込んだ。レオン・クラウゼン。この二ヶ月で、その名は街の有力者たちの間で頻繁に囁かれるようになっていた。

「しかし、不思議なことばかりだ」

別の商人が口を開いた。

「あの年齢で、どうしてあそこまでの judgmentができるのか」

「それに、資材の調達ルートも謎に包まれている」

「鉱山からの収益も、常識では説明がつかないほどだ」

話題は次々と広がっていく。レオンの成功の裏には、何か特別な秘密があるのではないか。そんな推測が、商人たちの間で交わされていた。

「おそらく」

マーカスが静かに言った。

「我々の知らない何かを、彼は持っているのだろう」

「まさか、魔法の類では?」

「さあな」

マーカスは首を振った。

「だが、それを探るよりも、彼との関係を築く方が賢明だろう」

商人たちは黙って頷いた。確かに、レオンの手法は不可解だ。しかし、その結果が街にもたらす恩恵は明らかだった。

* * *

「レオン様、また新しい話が来ているようですね」

夜更けの事務所で、ソフィアが書類を整理しながら言った。

「ああ」

レオンは帳簿から目を上げた。

「噂が広まるのは、想定より早かったな」

「ご自身の能力が、あまりにも凄まじい成果を上げているからです」

ソフィアの言葉に、レオンは少し考え込むような表情を見せた。

「確かに、価値転換の能力には感謝している。でも」

「でも?」

「能力だけじゃない。計画性と、効率を重視する判断があってこそだ」

レオンは立ち上がり、窓の外を眺めた。街は既に暗く、あちこちの明かりが星のように瞬いている。

「俺には目標がある。FIREを実現する。そのために、この能力を最大限に活用している。それだけのことだ」

「でも、その『それだけのこと』が、街の有力者たちを驚かせているんですよ」

ソフィアは微笑んだ。

「まあ、人が何を考えようと構わない」

レオンは肩をすくめた。

「俺は俺の計画通りに進むだけだ」

「相変わらずですね」

「当然だろう」

レオンは席に戻りながら言った。

「感情に流されず、効率を追求する。それが俺のやり方だ」

ソフィアは静かに微笑んだ。レオンの冷静な判断力は、時として非情にも見える。しかし、その背後には常に明確な計算と目的があった。

「では、明日の商談の準備を」

「ああ、頼む」

二人は再び仕事に戻った。外では、街の噂が次々と広がっていく。しかし、その中心にいる若き実業家は、相変わらず自分の計画に没頭していた。噂などどうでもよい。彼の目には、ただFIREという目標だけが輝いているのだ。
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