追放されたけどFIREを目指して準備していたので問題はない

君山洋太朗

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25話 価値の本質

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「実験結果に異常なしですね」

王立魔法学院の研究室で、赤毛の女性研究員が興奮気味に記録を取っている。彼女の名はマリアベル・ヴォートン。価値転換の研究を担当する主任研究員だ。

「次は濃度を上げて試してみましょうか?」

「ああ、構わない」

俺は冷静に答える。週に一度の実験日。最初は時間の無駄になるかと思ったが、意外な発見が多い。価値転換の仕組みを理論的に解明しようとする研究員たちとの議論は、新たな可能性を示唆してくれた。

「レオンさんの価値転換、本当に興味深いわ。通常の魔法とは全く異なる原理で機能しているみたいなの」

マリアベルは目を輝かせながら話す。彼女の熱心な研究姿勢は、俺の価値転換の可能性を広げてくれている。

「おや、今日も盛り上がっているようですね」

実験室の扉が開き、白髪混じりの老研究員が入ってきた。魔法理論の世界的権威、アルバート・ヴィッシュだ。

「先生!ご覧ください。レオンさんの価値転換を分析したところ、面白い発見がありました」

「ほう?」

「はい。価値転換の効果には個体差があるんです。同じ素材でも、もともとの品質が良いものほど、転換効率が良くなる」

俺は思わず身を乗り出した。確かに、経験的にはそう感じていた。しかし、それを理論的に説明されたのは初めてだ。

「つまり、価値転換は対象物が持つ潜在的な可能性を引き出しているということですね」

アルバートが穏やかに言葉を続ける。

「素材の質を見極めることが、より重要になってくる...か」

俺は呟いた。これは重要な発見だ。

* * *

実験が終わり、俺は研究所を出た。ソフィアが待っていた。

「お疲れ様です。実験はいかがでしたか?」

「ああ、重要な発見があった」

帰り道で、実験の成果を説明する。品質の良い素材を厳選することで、価値転換の効率を上げられる可能性。これは事業の方向性を大きく変えるかもしれない。

「そうそう、近隣諸国の商人団の件ですが」

ソフィアが話題を変える。

「ああ、準備の進捗は?」

「はい。視察コースの設定と、サンプルの準備は整いました。ただ...」

「どうした?」

「ルーメリア商会のヨハン・シュミット氏から、個別の商談の打診がありました」

ルーメリア商会。大陸東部最大の商会だ。俺は思案深げに腕を組む。

「面白い。どんな内容だ?」

「最高級の魔獣素材を扱いたいとのことです。特に、希少種の素材に興味があるようです」

俺は目を細める。今日の実験結果と、この話は繋がる。

「つまり、高品質な素材を厳選して、さらに価値を高めるということか」

「はい。数は少なくても、質の良いものを求めているようです」

これなら、価値転換の一日の制限内で十分に対応できる。むしろ、今日判明した効率の良さを最大限に活かせる。

「面白い提案だな」

「レオン?」

「今までは、できるだけ多くの素材を扱おうとしていた。だが、それは違うのかもしれない」

窓の外を見つめながら、俺は考えを巡らせる。

「品質の良い素材を厳選し、より高い価値を生み出す。数は少なくても、一つ一つの価値を最大限に高める」

「なるほど。量より質を重視するということですね」

「ああ。その方が、価値転換の特性を活かせる」

工房に戻ると、すぐに計画の修正に取り掛かった。

「ソフィア、仕入れの方針を変更したい」

「はい」

「これからは、品質の良い素材を重点的に探してくれ。価格は今までより上がるだろうが、それでも構わない」

「分かりました。市場の良質な素材について、すでにいくつか目星をつけています」

さすがだ。ソフィアの先読み力には感心させられる。

「それと、もう一つ提案があります」

「なんだ?」

「希少な素材の買い付けルートを開拓してはどうでしょう?冒険者ギルドとの連携を強化すれば...」

「なるほど。マリアさんに相談してみるか」

長年の付き合いがある冒険者ギルド主任のマリアなら、良い素材の情報を集められるはずだ。

夜も更けてきた頃、ようやく一通りの計画が固まった。

「これで方向性は決まったな」

「はい。あとは実行あるのみです」

その時、工房の扉が叩かれた。

「レオン様、申し訳ありません。マーカス様からの急ぎの連絡です」

「どうした?」

「商人団の視察予定が早まり、明後日になったとのことです」

予想外の展開に、一瞬眉をひそめる。しかし、すぐに気持ちを切り替えた。

「ソフィア、サンプルを変更しよう」

「はい?」

「今ある最高品質の素材を使って、価値転換の真価を見せてやろう」

俺たちは深夜まで準備に没頭した。今日の発見を活かし、より質の高い価値転換を目指して。

「レオン、随分と楽しそうですね」

作業の合間に、ソフィアがそう言う。

「そうか?まあ、新しい可能性が見えたからな」

ランプの灯りに照らされた工房で、俺たちは新たな挑戦に向けて準備を続けた。量から質への転換。それは、重要な一歩となりそうだ。
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