追放されたけどFIREを目指して準備していたので問題はない

君山洋太朗

文字の大きさ
45 / 46

41話 自由

しおりを挟む
「来週の土曜日、お茶会を開こうと思う」

街外れの高台に建てた別荘の書斎で、俺はソフィアに提案した。窓からは王都の全景が見渡せ、遠くには王立魔法研究所の尖塔も見える。朝から夕方まで陽が差し込むよう設計された明るい空間だ。

「お茶会ですか?」

机の向こうで書類を整理していたソフィアが顔を上げる。

「ああ。元パーティーのメンバーたちを招きたいと思ってな」

「まあ」

ソフィアの表情が柔らかくなる。

「珍しいですね。レオンから誘いを」

確かにそうだ。以前の俺なら、こんな非効率的な集まりを提案することはなかっただろう。だが今は違う。十分な資産がある。時間的な余裕もある。

「たまには、こういうのも良いだろう」

俺は窓の外を見やりながら言った。庭園に植えられた木々が風に揺れている。

「はい。私も準備を手伝わせていただきます」

ソフィアの声には、かすかな喜びが混ざっていた。

* * *

土曜日の午後。別荘の応接室に、懐かしい顔ぶれが揃った。

「おお、さすがはレオン。立派な別荘だな」

ガイウスが感心したように周りを見回す。彼の顔の傷跡は、相変わらず勇ましい。

「綺麗! まるでお城みたいです!」

ミレイアが目を輝かせながら白い壁や大きな窓を眺めている。その横でセリアが赤い長髪を揺らしながら微笑む。

「金持ちになったな、レオン」

ダグが豪快に笑う。その声は昔と変わらない。

応接室の中央には、白い布をかけたテーブルが置かれている。メイドが準備した茶器セットが、午後の陽光を受けて輝いていた。

「座ってくれ」

俺が促すと、全員がテーブルを囲んだ。メイドが一人一人にお茶を注ぐ。

「では、ここからが本番だ」

俺はテーブルの上に、特別に用意した茶葉の入った小箱を置いた。

「価値転換、か?」

ガイウスが興味深そうに身を乗り出す。

「ああ。少し実験にも付き合ってもらおう」

箱から茶葉を取り出し、俺は集中する。「価値転換」の能力が発動する。茶葉が淡い光を放ち、その色が徐々に変化していく。深い緑から、神秘的な青へ。

「すごい...」

セリアが小さく息を呑む。

メイドに新しく注いでもらったカップに、変化した茶葉を入れる。透明な湯が注がれると、まるで宝石のような青い液体が広がった。

「これは、面白いな」

ダグが興味深そうにカップを覗き込む。

「では、飲んでみてくれ」

全員にお茶が行き渡る。ミレイアが一番に口をつけた。

「すごいわ!」

彼女の声が弾む。

「最初は爽やかな味なのに、飲み進むと甘くて温かい味に変わるの!」

次々と感想が漏れる。確かに、この茶葉には特別な効果を付与した。

「なるほど」

ガイウスが静かに笑う。

「懐かしい味がする。あの頃の...」

「冒険の後に飲んだお茶の味だね」

セリアが目を細める。

「ああ、懐かしいな」

ダグが懐かしそうに言う。

「レオンのおかげで、いつも安定した収入があったっけ」

「私たち、レオンくんの言うことをもっと聞いておけば良かったのかも」

ミレイアが少し申し訳なさそうに言う。

「いや」

俺は首を振った。

「あれで良かったんだ」

「え?」

「お前たちが俺を追い出したおかげで、こうして自分の道を見つけることができた。冒険者としてより、商人として生きる方が俺に向いていた」

窓の外では、夕陽が街並みを赤く染め始めていた。

「それに、今こうして皆と話せるのも、あの経験があったからだろう」

「レオン...」

ソフィアが静かに微笑む。彼女の隣で、セリアが深くうなずいた。

「確かに。私たちも随分と成長させてもらった」

「ああ。お前の『価値転換』には世話になったからな」

ガイウスが言う。魔獣の襲来の際、俺の強化した防具が彼らの命を救った。

「これからは、たまにはこうして集まろう」

ダグが提案する。

「そうですね!」

ミレイアが賛同の声を上げる。

応接室に夕陽が差し込み、テーブルの上のカップが赤く輝く。青いお茶が、夕陽を受けて不思議な色を放っている。

俺は窓の外を見やった。研究所での実験も順調だ。商売も軌道に乗っている。何より、ここに集まった仲間たちと、こうして和やかな時間を過ごせている。

これも、あの追放がきっかけだった。感情的になり、俺を追い出した彼らに、今は感謝している。

「さて」

俺はカップを持ち上げた。

「明日は何して遊ぼうかな」

夕陽に照らされた街並みを見下ろしながら、俺は心からの笑みを浮かべた。

* * *

「今日は素敵な会でしたね」

客人たちを見送った後、ソフィアが言う。

「ああ」

「レオン、本当に変わりましたね」

「そうか?」

「ええ。でも...それでこそ、私の知っているレオンです」

ソフィアが照れくさそうに微笑む。

夜風が庭園の木々を揺らす。明日は研究所で新しい実験が始まる。取引先との商談もある。やることは山ほどあるが、焦る必要はない。

すべては、自分のペースで。

「じゃあ、明日の実験の準備をするか」

「もう? まだ日は暮れたばかりですよ」

「研究も、俺の趣味だからな」

ソフィアは呆れたように首を振ったが、その表情は優しかった。

月明かりが書斎を照らす中、俺は明日の実験計画を立て始めた。これも、自由な時間の使い方の一つ。

誰に強制されるわけでもなく、自分の意思で選んだ道。

それこそが、俺が求めていた本当の自由なのだから。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

「お前の代わりはいる」と追放された俺の【万物鑑定】は、実は世界の真実を見抜く【真理の瞳】でした。最高の仲間と辺境で理想郷を創ります

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の代わりはいくらでもいる。もう用済みだ」――勇者パーティーで【万物鑑定】のスキルを持つリアムは、戦闘に役立たないという理由で装備も金もすべて奪われ追放された。 しかし仲間たちは知らなかった。彼のスキルが、物の価値から人の秘めたる才能、土地の未来までも見通す超絶チート能力【真理の瞳】であったことを。 絶望の淵で己の力の真価に気づいたリアムは、辺境の寂れた街で再起を決意する。気弱なヒーラー、臆病な獣人の射手……世間から「無能」の烙印を押された者たちに眠る才能の原石を次々と見出し、最高の仲間たちと共にギルド「方舟(アーク)」を設立。彼らが輝ける理想郷をその手で創り上げていく。 一方、有能な鑑定士を失った元パーティーは急速に凋落の一途を辿り……。 これは不遇職と蔑まれた一人の男が最高の仲間と出会い、世界で一番幸福な場所を創り上げる、爽快な逆転成り上がりファンタジー!

【収納∞】スキルがゴミだと追放された俺、実は次元収納に加えて“経験値貯蓄”も可能でした~追放先で出会ったもふもふスライムと伝説の竜を育成〜

あーる
ファンタジー
「役立たずの荷物持ちはもういらない」 貢献してきた勇者パーティーから、スキル【収納∞】を「大した量も入らないゴミスキル」だと誤解されたまま追放されたレント。 しかし、彼のスキルは文字通り『無限』の容量を持つ次元収納に加え、得た経験値を貯蓄し、仲間へ『分配』できる超チート能力だった! 失意の中、追放先の森で出会ったのは、もふもふで可愛いスライムの「プル」と、古代の祭壇で孵化した伝説の竜の幼体「リンド」。レントは隠していたスキルを解放し、唯一無二の仲間たちを最強へと育成することを決意する! 辺境の村を拠点に、薬草採取から魔物討伐まで、スキルを駆使して依頼をこなし、着実に経験値と信頼を稼いでいくレントたち。プルは多彩なスキルを覚え、リンドは驚異的な速度で成長を遂げる。 これは、ゴミスキルだと蔑まれた少年が、最強の仲間たちと共にどん底から成り上がり、やがて自分を捨てたパーティーや国に「もう遅い」と告げることになる、追放から始まる育成&ざまぁファンタジー!

【完結】魔王を倒してスキルを失ったら「用済み」と国を追放された勇者、数年後に里帰りしてみると既に祖国が滅んでいた

きなこもちこ
ファンタジー
🌟某小説投稿サイトにて月間3位(異ファン)獲得しました! 「勇者カナタよ、お前はもう用済みだ。この国から追放する」 魔王討伐後一年振りに目を覚ますと、突然王にそう告げられた。 魔王を倒したことで、俺は「勇者」のスキルを失っていた。 信頼していたパーティメンバーには蔑まれ、二度と国の土を踏まないように察知魔法までかけられた。 悔しさをバネに隣国で再起すること十数年……俺は結婚して妻子を持ち、大臣にまで昇り詰めた。 かつてのパーティメンバー達に「スキルが無くても幸せになった姿」を見せるため、里帰りした俺は……祖国の惨状を目にすることになる。 ※ハピエン・善人しか書いたことのない作者が、「追放」をテーマにして実験的に書いてみた作品です。普段の作風とは異なります。 ※小説家になろう、カクヨムさんで同一名義にて掲載予定です

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!

防御力を下げる魔法しか使えなかった俺は勇者パーティから追放されたけど俺の魔法に強制脱衣の追加効果が発現したので世界中で畏怖の対象になりました

かにくくり
ファンタジー
 魔法使いクサナギは国王の命により勇者パーティの一員として魔獣討伐の任務を続けていた。  しかし相手の防御力を下げる魔法しか使う事ができないクサナギは仲間達からお荷物扱いをされてパーティから追放されてしまう。  しかし勇者達は今までクサナギの魔法で魔物の防御力が下がっていたおかげで楽に戦えていたという事実に全く気付いていなかった。  勇者パーティが没落していく中、クサナギは追放された地で彼の本当の力を知る新たな仲間を加えて一大勢力を築いていく。  そして防御力を下げるだけだったクサナギの魔法はいつしか次のステップに進化していた。  相手の身に着けている物を強制的に剥ぎ取るという究極の魔法を習得したクサナギの前に立ち向かえる者は誰ひとりいなかった。 ※小説家になろうにも掲載しています。

追放された荷物持ち、スキル【アイテムボックス・無限】で辺境スローライフを始めます

黒崎隼人
ファンタジー
勇者パーティーで「荷物持ち」として蔑まれ、全ての責任を押し付けられて追放された青年レオ。彼が持つスキル【アイテムボックス】は、誰もが「ゴミスキル」と笑うものだった。 しかし、そのスキルには「容量無限」「時間停止」「解析・分解」「合成・創造」というとんでもない力が秘められていたのだ。 全てを失い、流れ着いた辺境の村。そこで彼は、自分を犠牲にする生き方をやめ、自らの力で幸せなスローライフを掴み取ることを決意する。 超高品質なポーション、快適な家具、美味しい料理、果ては巨大な井戸や城壁まで!? 万能すぎる生産スキルで、心優しい仲間たちと共に寂れた村を豊かに発展させていく。 一方、彼を追放した勇者パーティーは、荷物持ちを失ったことで急速に崩壊していく。 「今からでもレオを連れ戻すべきだ!」 ――もう遅い。彼はもう、君たちのための便利な道具じゃない。 これは、不遇だった青年が最高の仲間たちと出会い、世界一の生産職として成り上がり、幸せなスローライフを手に入れる物語。そして、傲慢な勇者たちが自業自得の末路を辿る、痛快な「ざまぁ」ストーリー!

スキル間違いの『双剣士』~一族の恥だと追放されたが、追放先でスキルが覚醒。気が付いたら最強双剣士に~

きょろ
ファンタジー
この世界では5歳になる全ての者に『スキル』が与えられる――。 洗礼の儀によってスキル『片手剣』を手にしたグリム・レオハートは、王国で最も有名な名家の長男。 レオハート家は代々、女神様より剣の才能を与えられる事が多い剣聖一族であり、グリムの父は王国最強と謳われる程の剣聖であった。 しかし、そんなレオハート家の長男にも関わらずグリムは全く剣の才能が伸びなかった。 スキルを手にしてから早5年――。 「貴様は一族の恥だ。最早息子でも何でもない」 突如そう父に告げられたグリムは、家族からも王国からも追放され、人が寄り付かない辺境の森へと飛ばされてしまった。 森のモンスターに襲われ絶対絶命の危機に陥ったグリム。ふと辺りを見ると、そこには過去に辺境の森に飛ばされたであろう者達の骨が沢山散らばっていた。 それを見つけたグリムは全てを諦め、最後に潔く己の墓を建てたのだった。 「どうせならこの森で1番派手にしようか――」 そこから更に8年――。 18歳になったグリムは何故か辺境の森で最強の『双剣士』となっていた。 「やべ、また力込め過ぎた……。双剣じゃやっぱ強すぎるな。こりゃ1本は飾りで十分だ」 最強となったグリムの所へ、ある日1体の珍しいモンスターが現れた。 そして、このモンスターとの出会いがグレイの運命を大きく動かす事となる――。

処理中です...