妹って可愛い!

ステラ

文字の大きさ
5 / 7

第5話

しおりを挟む
「あっ……」

 リビングに戻ると、久美さんが椅子に座っているのが目に入った。

「あれ、お父さんは?」
「仕事の人から電話がかかってきたらしいわ」
「あ、そうなんですね」
「ねえねえ、由衣ちゃん由衣ちゃん」
「はい?」

 わたしは久美さんに手招きをされ、久美さんの近くまで歩く。

「これって由衣ちゃんが選んでるの?」

 そう言って、久美さんが指さしたのは部屋の角にある机に置かれている花瓶だった。

 その花瓶には鮮やかな黄色から甘い香りを放つフリージアが飾られている。

「はい。そうですよ」
「そうなんだ! わたしもね、お花大好きなんだよ」
「え、そうなんですか!? めっちゃ分かります! わたしも好きなんです!」

 わたしの唯一の趣味らしいもの。それが花である。

 好きが高じてお花屋さんでバイトするくらいには好きだ。

 花を見ていると、自然と気分が和らぐし、部屋に飾ってあるだけで癒される。

 それに花には花言葉なるものもあり、そんなことを考えたりするのも面白い。

「そうなんだ! なんのお花が一番好きなの?」
「そうですね……」

 好きな花は本当に両手足では数えきれないほどたくさんある。

 でもやっぱり……

「わたしは紫陽花が一番好きですかねー……」

 雨が長く続くことによって、気分が憂鬱になって嫌われがちな梅雨に咲く代表的な花。

 わたしは季節の中でこの時期が一番好きだ。

 なぜなら紫陽花が咲くから。

 昔から雨が降っているのに傘をさして、近くに咲いている紫陽花をよく見に行っているものだ。

 紫陽花の魅力が何かと聞かれると、すごーく長くなってしまいそうな気がするので省略させていただこう。

「あー、わかるなあ。紫陽花っていいよね」
「久美さんは何が一番好きなんですか?」
「わたしはねえ、ちょっとベタかもしれないんだけど、バラ……かな」
「おお! いいですね!」

 花と言えば誰もがイメージするであろう王道中の王道。

 綺麗なバラには棘があるとよくいうものだ。

「由衣ちゃんとはすごく仲良くなれそうだね」
「……! わたしも思ってました!」

 今まであんまりこんな話を身近な人とすることはアルバイトのとき以外ではなかったからものすごく嬉しい。

 まさか姉妹よりも先に久美さんと仲良くなるとは。

 趣味の力恐るべし。

「……その、由衣ちゃん。ちょっと話は変わるんだけどね」
「……? はい?」
「由衣ちゃんはわたしがお母さんになるってことに抵抗はない?」
「えっ……」

 わたしは急に話の流れが変わったことに心をドキッとさせる。

「抵抗……ですか?」
「ほら、本当のお母さんじゃないのに……とか。わたしは由衣ちゃんの本物のお母さんにはどうやってもなれないから……」
「…………」

 久美さん、やっぱりいろいろと考えてるんだなあ。

 すごく優しい人なんだろう。

 そんな人にあんまり嘘つくのも、かえって良くないかな。

「正直に言うと、抵抗ってよりかは不思議な気持ちですかね」
「不思議……?」
「はい。お母さんってずっとうちにはいない存在だったので」

 わたしの本当のお母さんはわたしが三歳のときに病気で亡くなってしまった。

 まだ幼かったのもあってか、わたしにはあまりお母さんの記憶はない。

 ただすごく優しかったというふわっとした記憶だけがずっと残っている。

 そんないないことが当たり前の存在が家にいるっていうのはすごく違和感のようなものがある。

 だから嫌とか抵抗があるっていうわけではない。

 だけどこの違和感の感情はどうしようもないことで、「徐々に慣れていくことしかないよね~」なんて、わたしはすごく気楽に考えていた。

 それを久美さんはもっと深刻に捉えていたのかもしれない。

「久美さんに対して抵抗なんて一つもないですよ」

 これがわたしの本当の本当の本心かはわからないけど、これがわたしの言ってあげたいこと。

 あまり母という役割に縛られすぎないで欲しい。

「それに久美さんと話してると楽しいですし!」
「…………そっか。それなら良かった。これからあの子たちとも仲良くしてあげてね」
「はい、もちろんです!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

落ち込んでいたら綺麗なお姉さんにナンパされてお持ち帰りされた話

水無瀬雨音
恋愛
実家の花屋で働く璃子。落ち込んでいたら綺麗なお姉さんに花束をプレゼントされ……? 恋の始まりの話。

(完)百合短編集 

南條 綾
恋愛
ジャンルは沢山の百合小説の短編集を沢山入れました。

小さくなって寝ている先輩にキスをしようとしたら、バレて逆にキスをされてしまった話

穂鈴 えい
恋愛
ある日の放課後、部室に入ったわたしは、普段しっかりとした先輩が無防備な姿で眠っているのに気がついた。ひっそりと片思いを抱いている先輩にキスがしたくて縮小薬を飲んで100分の1サイズで近づくのだが、途中で気づかれてしまったわたしは、逆に先輩に弄ばれてしまい……。

身体だけの関係です‐三崎早月について‐

みのりすい
恋愛
「ボディタッチくらいするよね。女の子同士だもん」 三崎早月、15歳。小佐田未沙、14歳。 クラスメイトの二人は、お互いにタイプが違ったこともあり、ほとんど交流がなかった。 中学三年生の春、そんな二人の関係が、少しだけ、動き出す。 ※百合作品として執筆しましたが、男性キャラクターも多数おり、BL要素、NL要素もございます。悪しからずご了承ください。また、軽度ですが性描写を含みます。 12/11 ”原田巴について”投稿開始。→12/13 別作品として投稿しました。ご迷惑をおかけします。 身体だけの関係です 原田巴について https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/734700789 作者ツイッター: twitter/minori_sui

名もなき春に解ける雪

天継 理恵
恋愛
春。 新しい制服、新しいクラス、新しい友達。 どこにでもいる普通の女子高生・桜井羽澄は、「クラスにちゃんと馴染むこと」を目指して、入学早々、友達作りに奔走していた。 そんな羽澄が、図書室で出会ったのは—— 輝く黒髪に、セーラー服の長いスカートをひらりと揺らす、まるで絵画から抜け出したような美しい同級生、白雪 汀。 その綺麗すぎる存在感から浮いている白雪は、言葉遣いも距離感も考え方も特異で、羽澄の知っている“普通”とは何もかもが違っていた。 名前を呼ばれたこと。 目を見て、話を聞いてもらえたこと。 偽らないままの自分を、受け入れてくれたこと—— 小さなきっかけのひとつひとつが、羽澄の胸にじわりと積もっていく。 この気持ちは憧れなのか、恋なのか? 迷う羽澄の心は、静かに、けれど確かに、白雪へと傾いていく—— 春の光にゆっくりと芽生えていく、少女たちの恋と、成長の物語。

春に狂(くる)う

転生新語
恋愛
 先輩と後輩、というだけの関係。後輩の少女の体を、私はホテルで時間を掛けて味わう。  小説家になろう、カクヨムに投稿しています。  小説家になろう→https://ncode.syosetu.com/n5251id/  カクヨム→https://kakuyomu.jp/works/16817330654752443761

身体だけの関係です‐原田巴について‐

みのりすい
恋愛
原田巴は高校一年生。(ボクっ子) 彼女には昔から尊敬している10歳年上の従姉がいた。 ある日巴は酒に酔ったお姉ちゃんに身体を奪われる。 その日から、仲の良かった二人の秒針は狂っていく。 毎日19時ごろ更新予定 「身体だけの関係です 三崎早月について」と同一世界観です。また、1~2話はそちらにも投稿しています。今回分けることにしましたため重複しています。ご迷惑をおかけします。 良ければそちらもお読みください。 身体だけの関係です‐三崎早月について‐ https://www.alphapolis.co.jp/novel/711270795/500699060

放課後の約束と秘密 ~温もり重ねる二人の時間~

楠富 つかさ
恋愛
 中学二年生の佑奈は、母子家庭で家事をこなしながら日々を過ごしていた。友達はいるが、特別に誰かと深く関わることはなく、学校と家を行き来するだけの平凡な毎日。そんな佑奈に、同じクラスの大波多佳子が積極的に距離を縮めてくる。  佳子は華やかで、成績も良く、家は裕福。けれど両親は海外赴任中で、一人暮らしをしている。人懐っこい笑顔の裏で、彼女が抱えているのは、誰にも言えない「寂しさ」だった。  「ねぇ、明日から私の部屋で勉強しない?」  放課後、二人は図書室ではなく、佳子の部屋で過ごすようになる。最初は勉強のためだったはずが、いつの間にか、それはただ一緒にいる時間になり、互いにとってかけがえのないものになっていく。  ――けれど、佑奈は思う。 「私なんかが、佳子ちゃんの隣にいていいの?」  特別になりたい。でも、特別になるのが怖い。  放課後、少しずつ距離を縮める二人の、静かであたたかな日々の物語。 4/6以降、8/31の完結まで毎週日曜日更新です。

処理中です...