今日も僕は、先輩の官能的な攻めに耐えられない

九傷

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第35話 麻沙美先輩への理解

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麻沙美まさみ先輩、先に行っちゃいましたけど、何かあったんですか?」


 伊万里いまり先輩と合流して早々、麻沙美先輩の件について尋ねられてしまう。


(進行方向が同じなので当然だけど、やはり麻沙美先輩はここを通って先に行ったんだな……)


 であれば、伊万里先輩が疑問に思うのも当然である。
 しかし、さっきのことをなんと説明すればよいのやら。


(……黙っているってワケには、やっぱりいかないよね)


 恐らくだが、麻沙美先輩はさっきのことを気にせず伊万里先輩に話してしまうだろう。
 となると、僕がここで適当に誤魔化しても無駄ということになる。
 むしろ誤魔化した分、何故あのとき誤魔化したりしたのだと言われかねないので、黙っているという選択肢はなかった。


「伊万里先輩……、怒らないで聞いて貰えますか?」


「……それは内容にもよりますよ」


 ですよね。僕だって実は浮気してますとか言われたら怒らない自信ないし。
 まあ、これは浮気じゃないからいいけど……。いや、いいのか……?


(はぁ……、超気が進まないよ……)


 それでも、そのまま伝える以外方法はなさそうなので、僕は覚悟を決める。


「……実はですね、先程麻沙美先輩に、僕にはやはり伊万里先輩以外ありえないので、そういった行為はやめてくれないかと伝えました」


「まあ……」


 伊万里先輩は驚いた表情をするも、心なしか嬉しそうに見える。
 問題はここからなのだが、その機嫌を損ねないかが心配だ。


「それでですね、一応麻沙美先輩は、僕の恋人になることについては諦めてくれたというか、既に諦めていたらしいんですよ」


「そう、だったのですか……」


 これには伊万里先輩も少々複雑そうな表情になる。
 誰かが選ばれるということは、誰かが選ばれないということであり、それは仕方のないことなのだけど、心情としてはやはり複雑なものである。
 それが仲の良い者同士であればなおさらと言えるだろう。


「ただ、ですね……、麻沙美先輩は、恋人になるのは諦めましたが、その……、〇フレになるのは諦めないと言い出しまして……」


「……はい?」


 やはり、そういう反応になりますよね……


「……〇フレとは、ようするに〇ックスフレンドということですよね?」


「そ、そうです」


 迂闊だった。ナチュラルに〇フレと略してしまった……
 どうやらちゃんと伝わっていたみたいだけど、伝わらない可能性を考慮していなかった。
 ……まあ、伊万里先輩は麻沙美先輩に色々と指導・・されているみたいだし、知っている可能性は十分にあったけど。


「……そうきましたか」


「はい……。もちろん断ったんですけど、麻沙美先輩は諦めるつもりはないと……」


「成程……」


 そう言って伊万里先輩は黙り込んでしまう。
 無理もないだろう。自分の彼氏が堂々と〇フレに誘われたのだ。
 その心情は察するに余るというか、正直察したくない。
 一体伊万里先輩は、今の話を聞いてどういう心境になっているのだろうか。


「……そのことについては、一先ず保留にしましょう」


「……え、ええぇ!? ほ、保留って、いいんですか!?」


 まさかの保留発言に僕の方が驚いてしまう。
 てっきり、もっと攻撃的な発言になると思っていたのに……


「いいというか、それしかないのですよ。麻沙美先輩が諦めないと言っているのですよね? であれば、恐らく誰から何を言われようと、諦めることはありません」


 それは……、そうかもしれない……
 短い付き合いだが、麻沙美先輩の性格については十分理解できているつもりだ。
 少なくとも、誰かに何かを言われて諦めるようなタイプじゃないことは、間違いないだろう。


「それに……、麻沙美先輩がある種の悩みのようなものを抱えていることは、前々から知っていますから……」


 それは、処女云々の話だろうか……
 いや……、それよりももっと深い話なのかもしれない。
 残念ながら、この国では同性愛者への理解が十分にはされていない
 同性婚の法制化も進んでいないので、麻沙美先輩の未来はあまり明るいものとは言えないハズだ。


「セクシャル・マイノリティへの理解は、やはり難しいと言わざるを得ません。固定観念を崩すのは、とても難しいことですから」


 そう言って伊万里先輩は一歩前に出て、僕に振り返る。


「それでも、私は麻沙美先輩の友達なので、彼女の気持ちは理解したいと思っています。藤馬君のことはこれからも振り回してしまうかもしれませんが、もう少しだけ、こんな関係にお付き合いいただけますか?」


 伊万里先輩は、真剣な表情で僕にそう願い出る。
 そんな彼女のお願いを、断れるハズがなかった。


「もちろんです。僕にとっては、麻沙美先輩も大事な友達ですからね」


「ありがとうございます。大好きです。藤馬君♡」


そう言って抱き付いてくる伊万里先輩を、今日ばかりは拒まず受け入れるのであった。


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