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第二章 森の平定
第77話 痴情のもつれ?
しおりを挟む闘仙流という名前が決まったのはいいが、その中身についてはまだまだ未完成である。
子供達には基礎を学んで貰っているが、俺達は俺達で技や技術の開発を進めなくてはならない。
「じゃあ、もう一度お願いします。スイセン師匠」
「……なんで『さん』が取れたと思ったら、今度は『師匠』が付くんですか?」
「……それは、なんというか……、照れがあるというか……。稽古中はその方がしっくりするなって思うんだけど、駄目かな?」
俺は少し茶目っ気を出して頼んでみる。
「……全く。稽古中だけですよ?」
(よし、さすがお姉さん!)
などと心の中でガッツポーズを取ったが、実際はせいぜい2~3歳程度しか離れてないだろう。
しかし、ここの所頼られるばかりであった為、頼れる存在であるスイセンには少しだけ甘えたい気持ちがあったのだ。
「失礼します!!」
「おわっ!?」
そんな少し甘い空気を切り裂くよう、勢いよく扉を開けてきたのはアンナである。
その後ろには、アンネも付いて来ていた。
「ど、どうした? アンナ?」
「……油断しました。まさか、ここまで状況が悪化しているとは……」
な、なんだ? アンナから、妙な迫力が滲み出ている気がする。
心なしか、アンネの方も少し怖いような……
「オホン!」
アンナはワザとらしく咳ばらいをしてから、閉じていた目をうっすらと開く。
「……トーヤ様、そしてスイセン様も、少々お顔がだらしなくなっていますよ?」
「なっ!? そんなことは……って、えぇっ!? アンナさん、目が開くようになったんですか!?」
アンナの言葉に激しく動揺しつつ、さらにアンナが目を開いていることに驚愕するスイセン。
中々に面白いリアクションである。
「ええ。トーヤ様の愛が、私の目を優しく癒してくれたのですよ。こう、後ろから抱くようにして」
そう言ってアンナは、アンネを後ろから抱きしめるような演技を見せつける。
「ちょっ!? アンナ!? それはちょっと誇張過ぎだろ!?」
流石にあんな風に抱きしめたりはしてない筈……
……してないよな?
もっとこう、サッ、パッ、パッ! みたいな感じだった筈だ。
「……トーヤ様?」
なんだろう……
スイセンの視線が少し刺々しい気がする。
笑顔なのが逆に怖い。
「……か、彼女の目を治したのは本当だよ。原因は、精霊が宿主を守る為の過剰防衛だったみたいでね。彼女の精霊に語り掛けることで、それを解除したもらったんだ。だから、決しやましい気持ちはなかったし、あんな風に抱きしめたりもしていない、です」
「そんなことはありません! トーヤ様は私を優しく抱いてくれました! 他にも、布団の中で優しく頭を撫でてくれたり……ぽっ」
おいいいいいいぃぃ! 絶対ワザと言ってるよね!?
ぽっ、て何!? 口で言ったよね今!?
「姉さん……、トーヤ様……?」
流石のアンネも若干引いている。
俺に対してではなく、アンナのらしくない言動に対してではあるが……
「トーヤ様……?」
スイセンの笑顔も一層深まり、対照的に薄く除く眼光は光を増している。
これは、非常にマズい状況ではないだろうか……
「ま、待ってくれ! 確かにアンナが弱っている時、励ますために頭を撫でたりもしたけど、本当にやましいことはしていない! 第一、アンナはまだ子供じゃないか! 俺にとっては、娘みたいなものなんだよ……」
言い訳のように聞こえるかもしれないが、事実である。
アンナは確かに美しい少女だと思うが、俺としては娘や妹のような存在としか思っていなかった。
「トーヤ様! 私は今年で12になりました! あと2年もすれば、立派な大人です!」
あと2年って、14で成人するってことか?
いつの時代だよ……
……いや、別に不思議な話でもないのか?
日本のような平和な国ならともかく、ここは魔獣だの盗賊だのが跋扈する魔界である。
元の世界でも成人が早い国はあったし、過酷な環境ではそれも普通のことなのかもしれない。
「……でも、まだ2年もあるってことだろ? 俺も配慮に欠けていたとは思うけど、もう少し頭の中を整理する時間をくれないか……?」
「……私も駄々をこねるようなことを言ってしまい、申し訳ありません。ただ、私だってそんなに子供じゃないってことを知って欲しかったんです。だから、2年経ったら……、ちゃんと私を見てくれますか?」
12歳と言えば、人間ベースで考えると思春期真っ盛りである。
多感な時期だし、子供扱いをさせるのを嫌がるのは別におかしなことではない。
やはり、俺がもう少し配慮すべきだったのだろう。
「……もちろんだ。その時はアンナを大人として扱うと約束しよう」
「っ! では! 2年後、私をトーヤ様の妻にしてください!!!」
…………………………。
その瞬間、世界が凍り付いた気がした。
事実、その場にいたアンナ以外の者は、表情も呼吸も完全に止まっていた。
その状況を流石に不振に思ったのか、アンナが近づいてき俺の頬をつんつんと突く。
「あの、トーヤ様?」
「………………………………ぶはっ!?」
頭に酸素が行き届き、止まっていた思考回路が徐々に動きを再開する。
スイセンやアンネも、俺とほぼ同時に呼吸を再開したようだ。
「……えっと、アンナ? 今なんて?」
「ですから、私を、トーヤ様の奥さんにしてください」
「…………はい?」
俺の思考回路は再び機能を停止する。
「「そ、そんなの駄目です(だよ)!!」」
固まった俺を押しのけるように、スイセンとアンネがアンナににじり寄る。
「……スイセン様やアンネに止める権利なんて無い筈です! ……いえ、アンネにとってはトーヤ様が兄になるということなので、認めて貰う必要はあるかもしれませんが……」
「「そういう問題じゃありません(ないよ)!!」」
何故だか呼吸がピッタリのスイセンとアンネ。
俺は完全に置いてけぼりである……
「……あ、あ~、うん、3人共待ってくれ。少し熱くなり過ぎていると思うんだ。まずは落ち着こう」
「「「誰のせいだと思っているんですか!?」」」
「ハイ! スイマセンデシター!!」
何故だ!? 問答無用で俺が悪いことなっている!?
ぎゃあぎゃあと三人は詰め寄って言い争っている。
女三人寄れば姦しいとは言うが、これがそういうことなのだろうか……
結局、俺は暫くの間、三人の言い争いをただ見ていることしかできないのであった。
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