偶像は神に祈る夢をみる

なめこ玉子

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めでたしめでたし 1

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目の前で、だるそうに口を動かしながら、
ポテトフライを頬張るメガネの女性を前にして
僕は何となく居心地がわるかった。

場所はレイニーズ。いつもの店ではない。
駅前にある普通に綺麗な法の店舗だ。

「食べないの?」
彼女はいつも通りの温度のない声で尋ねる。
僕の目の前にはフィレステーキが置かれている。
この店で一番高いメニューだ。

「食べますけど…、食べたらなんかあるとかじゃないですよね?」
割と長い付き合いだが、リサさんに食事に誘われたのはこれが初めてだ。

しかも奢ってくれるという、
迷わず高いものを頼んでみたものの今になって嫌な予感がした。

「何もないわよ。もしかして、ちょっと頼みごとすることにはなるかもしれないけど」
表情は淡々としているが、声にはどこかいたずらっぽさが滲む。

「それが、怖いんですって」
そうは言ったものの。結局は覚悟を決めてステーキを頬張る。

「彼、今頃どうしてるかしらね?」
僕が咀嚼しているのを満足そうに見届けながら、
彼女は何気なく口にする。

彼、ミカガミシンヤが突然姿を眩ませてから、
もう一週間が経とうとしていた。

「どうって、僕にわかるわけないじゃないですか。何も言わずにいなくなったんですから」
ぶっきらぼうに答える。

このことに関して僕は彼に少し怒っていた。
憤りが僕の心からの感情か、
の演算によって生まれているものか迄はわからない。
でも、シンヤならこれも僕自身の感情だと言ってくれる気がする。

「あらら、冷たい。君たち友達になったんじゃなかったの?」

「しばらく留守にするから探すなって、ご丁寧にメモ書きを残していったんだから大丈夫でしょ」
腹立たしいのは、彼が何も告げないで言ってしまったことが寂しくもあったからだ。

「もう、友達とは思わない、とか?」

「その反対ですよ。友達だと思うから、むかつくんです」
腹いせにステーキを口いっぱいに放り込む。

「そう、ならよかった」
「?」
肉を咀嚼する傍らで、盗み見たリサさんの表情は相変わらず読みにくい。

「リサさんって僕らの関係に反対じゃなかったんですか?」
「反対よ」
簡潔に答えが返ってくる。

「きっとあなたは最後に悲しい思いをしてしまうから」
その言葉は何となく悲しくて優しかった。

ウーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!
その時、街中で緊急事態を告げる警戒音が鳴る。
個々人の持つ受信端末が一斉に警告のメッセージを受け取ったのだ。

店内もにわかに騒めき立った。
僕もあわててメッセージの内容を確認しようと、
情報デバイスを空間に立ち上げるために手を動かす。

リサさん一人だけが落ち着きを払って、
コーラをストローですすっていた。

「ねえユウキ」
彼女はいつも通りの落ち着いた声で語りかける。
「やっぱり、ステーキ代分働いてもらうことになるかも」

そんな言葉は、メッセージの文面によって僕の頭から吹き飛ばされたのだった。
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