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訴えとその結末
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ぼくはしんだ。なんの前触れもなく。
両親にさよならも言えずに。
ぼくは神様に訴えた。
「育ててくれた家族のところに行かせてください。お別れを伝えたいのです。」
神様は聞き入れてくれた。
「良かろう。けれども、人間の姿で行かせるわけにゃいかねえ。それは承知してくれ。」
わかりました。ぼくは答える。
「それから、会えるのは一度だけだ。よく考えるんだな。」
「はい。ありがとうございます!」
そうして、ぼくはまた旅立った。そういえば、ぼくは何の姿になっているんだろう。
羽で飛んでいるから鳥とかかな。
「あ!」
どこかで聞いた歌みたいな赤い屋根の家。生まれたときから住んでいるぼくの家。
また、会えるんだ。
「お父さん!お母さん!」
ぼくはわずかに開いていた窓から入り込んだ。
だいぶ小さな生き物に変身させられているらしい。
リビングを抜けると、小さな仏壇の前で正座する両親の姿があった。
「本当にごめんね……お母さんがちゃんと見ていなかったから……。」
「まだこんなに小さいのに……。」
ぼくは必死に叫んだ。訴えた。
「ここ!ここにいるよ!心配しないで!」
でも、その声はブーンとした音にかき消される。
何の音かはわからないけど、そのせいで伝わっていないんだと思った。
「ねえ!聞こえてる?!」
耳元に近づくと……
パン!!!
視界が暗くなった。
「ねえ貴方、今って蚊の季節だったかしら?」
「いや、あまり見かけないな。」
「そうよね。何も、私たちが悲しんでいるときなんかに出てこなくても良いのにね。捨てておきましょう。」
The END
両親にさよならも言えずに。
ぼくは神様に訴えた。
「育ててくれた家族のところに行かせてください。お別れを伝えたいのです。」
神様は聞き入れてくれた。
「良かろう。けれども、人間の姿で行かせるわけにゃいかねえ。それは承知してくれ。」
わかりました。ぼくは答える。
「それから、会えるのは一度だけだ。よく考えるんだな。」
「はい。ありがとうございます!」
そうして、ぼくはまた旅立った。そういえば、ぼくは何の姿になっているんだろう。
羽で飛んでいるから鳥とかかな。
「あ!」
どこかで聞いた歌みたいな赤い屋根の家。生まれたときから住んでいるぼくの家。
また、会えるんだ。
「お父さん!お母さん!」
ぼくはわずかに開いていた窓から入り込んだ。
だいぶ小さな生き物に変身させられているらしい。
リビングを抜けると、小さな仏壇の前で正座する両親の姿があった。
「本当にごめんね……お母さんがちゃんと見ていなかったから……。」
「まだこんなに小さいのに……。」
ぼくは必死に叫んだ。訴えた。
「ここ!ここにいるよ!心配しないで!」
でも、その声はブーンとした音にかき消される。
何の音かはわからないけど、そのせいで伝わっていないんだと思った。
「ねえ!聞こえてる?!」
耳元に近づくと……
パン!!!
視界が暗くなった。
「ねえ貴方、今って蚊の季節だったかしら?」
「いや、あまり見かけないな。」
「そうよね。何も、私たちが悲しんでいるときなんかに出てこなくても良いのにね。捨てておきましょう。」
The END
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