鏡の中のともだち

すもも

文字の大きさ
4 / 5

04.ともだち

しおりを挟む
「でね、アリス、そのぶらいあんって子も渋々だけれど後で謝ってくれたの。めあり達が居てくれなかったらそんなこと起きなかったと思うの」 

ありすは家に帰ってから、さっそく今日あったことをアリスに伝えた。前にめありのことを話したとき、あまりのり気じゃなかったことは覚えているけれど、どうしても話したかった。アリスにもめありがとてもいい友達なんだってことを知ってもらいたい。

「ふぅん、でもアリス。そのめありって子はともかく、その周りに居る子たちはどうかと思うわ」
「ぇ?」

何を言っているのだろう。めありだけじゃなくめありの友達だっていい子達のはず。だってめありに続いてありすのところに来てくれた。あんなことを言うなんてぶらいあんてば酷い!ありすに謝って!とぶらいあんに強く言ってくれたのも、その子達だ。

「ありす、いーい?その子達はめありがあなたを心配していたから、心配しているフリをしていたのよ?」

フリ?どうしてそんなことをするのかありすには全然分らなかった、ありすはアリスの言葉に首を傾げる。

「その子達はめありの友達であって、あなたの友達ではないのよ」

その言葉にありすはかちんときた。たしかにありすがめありと一緒に話しているときにその子達は来るけれど、ありすとだって話をしたりする。ありすはその子達のことをちゃんと友達だと思っているし、その子達だって同じはずだ。

「アリスってば酷い!アリスはあたしに友達がいっぱい出来るのを嫌がってるんだね!もう知らない!!」

ぷいっとそっぽを向いてありすは鏡の部屋から出て行った。酷い、ひどい!!嬉しいことがあったからそれを知ってほしかっただけなのに!どうしてあんな酷いこと言うの!?どすんどすんとありすは乱暴な足取りで階段を降りて、お菓子でも食べてしまおうとキッチンへと向かった。そこでは母親が夕飯の支度をしていた。

「ねえありすあなた、誰と話をしていたの?大声を出していたみたいだけれど」
「別に」

アリスはありすにとって秘密の友達だと思っているし、喧嘩したばかりで余計にアリスのことを口に出したくなかった。母親は首を傾げたけれど、それ以上追及しようとしなかった。それでもありすがお菓子へと手を伸ばすとぴしゃりと言い放つ。

「もう少しで夕飯だから我慢しなさい」

ここでお菓子を食べると、夕飯が食べれなくなることを自分でも分っていたありすは、むすっとした顔をしてお菓子から手を引いてリビングへと行くと面白くも無いテレビを見た。テレビが見たかったわけでも、お菓子が食べたかったわけでもない、でもこのイライラした気分をどうにかしたかっただけ。でも結局ありすのいらいらした気分は夕飯になっても直ることなんてなくて、帰ってきた父親にもどうかしたのか?と心配されてしまった。ありすは友達と喧嘩した。とだけ伝えた。

****************

でも次の日、ありすはアリスが言っていたことが分ってしまった。知りたくなかった。そんなとこ見たくなかった。ありすがトイレへと行って帰ってきた時だ。めありが日直で黒板の文字をせっせと消して話を聞いていないことと、ありすが居ないのをいいことに、めありの友達が話していた。

「どうしてあのありすって子と仲良くしないといけないのかしら」
「だってほら、めありが気に入ったから」
「なんであんな子?学校にまでぬいぐるみ持ってきてるのよ?正直気持ち悪い」
「ねー、めありがあんな子と仲良くなろうとしなければ、あたし絶対近づかなかったもん」

教室から聞こえてくるその声に、ありすは扉に手をかけたまま動けなくなる。友達だと思っていたのに、他の子達は全然そんなこと思っていなくて、むしろ気持ち悪いと思っていたなんて。ありすの顔から血の気が引く。こんな話を聞いて平然とあの子達と話をする自信が無い。ありすは手が白くなるまで握りしめ、この扉から入るのを諦めてめありが黒板を消している側の扉から入ろうと足を進める。

けれどその足もぴたりと止まってしまう、めありもそう思っていたら?めありだってありすの持っているうさぎのぬいぐるみのことを気持ち悪いと思っていて、かわいそうだと思ったから話しかけたってことだったらどうしよう。そう思ったら胸がぎゅぅっとなって苦しくなった。

そうしたらありすは友達がいなくなってしまう。いなくなった。という表現は正しくない、正確には元々友達なんていなかったということになる、自分だけが友達だと思っていたってことになる。苦しくて、苦しくて、どうすればいいのか分からなくて、扉の前から動けなくなってしまう。怖い、怖くて、怖くて。どうすればいいのか分からない。ぬいぐるみを抱きしめたくとも、トイレにまでは流石に持って行っていなくて足元から崩れ落ちそうになるのを必死で耐える。

「ありすちゃん!!」

目の前の扉が急にがらがらと開いて、出てきたのはめありだった。驚いたのもあるけれど、それだけじゃない動悸がありすを襲った。嫌いだって思われてるかもしれない、気持ち悪いって思われているのかもしれない。

「どうしたの?顔真っ青だけれど」

優しく顔を覗き込んできためあり。びくりと身体をすくませてしまうけれど、ありすはおずおずとめありと視線を合わせた。

「……めありちゃん、は……友達、だよね」

怖くて震える声になってしまう。

「何を言ってるの?」

友達なわけないじゃない、という言葉が続くのかと思って身構えてしまう。

「友達に決まってるじゃない」

ふんわりと微笑まれてほっとする、めありはちゃんと友達だって思ってくれていたんだ。よかった。他の子なんてどうでもいい、めありが友達と言ってくれるのなら、ありすはそれだけで十分だった。

「うん」

ありすは安心しきって笑顔で頷いた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

王子を身籠りました

青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。 王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。 再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。

意味が分かると怖い話(解説付き)

彦彦炎
ホラー
一見普通のよくある話ですが、矛盾に気づけばゾッとするはずです 読みながら話に潜む違和感を探してみてください 最後に解説も載せていますので、是非読んでみてください 実話も混ざっております

さようなら婚約者

あんど もあ
ファンタジー
アンジュは、五年間虐げられた婚約者から婚約破棄を告げられる。翌日、カバン一つを持って五年住んだ婚約者の家を去るアンジュ。一方、婚約者は…。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

二十年以上無視してきた夫が、今さら文通を申し込んできました

小豆缶
恋愛
「お願いです。文通から始めてもらえませんか?」 二十年以上会話もなかった夫――この国の王が、ある日突然そう言ってきた。 第一王妃マリアは、公爵家出身の正妃。だが夫はかつて、寵愛する第三王妃の話のみを信じ、彼女を殴ったことがある。その事件が原因で、マリアは男性恐怖症が悪化して、夫と二人きりでは会話すらできなくなっていた。 それから二十年。 第三王妃はとある事故で亡くなり、夫は反省したらしい。だからといって――今さら夫婦関係をやり直したいと言われても遅すぎる。 なのに王は諦めない。毎日の手紙。花を一輪。夜食の差し入れ。 不器用すぎる求愛に振り回されるうち、マリアの中で止まっていた感情が少しずつ動き始める。 これは、冷えきった政略夫婦が「文通」からやり直す恋の話。 ※本作は「存在されていないことにされていた管理ギフトの少女王宮で真の家族に出会う」のスピンオフですが、単体で読めます。

私の息子を“愛人の子の下”にすると言った夫へ──その瞬間、正妻の役目は終わりました

放浪人
恋愛
政略結婚で伯爵家に嫁いだ侯爵令嬢リディアは、愛のない夫婦関係を「正妻の務め」と割り切り、赤字だらけの領地を立て直してきた。帳簿を整え、税の徴収を正し、交易路を広げ、収穫が不安定な年には備蓄を回す――伯爵家の体裁を保ってきたのは、いつも彼女の実務だった。 だがある日、夫オスヴァルドが屋敷に連れ帰ったのは“幼馴染”の女とその息子。 「彼女は可哀想なんだ」 「この子を跡取りにする」 そして人前で、平然と言い放つ。 ――「君の息子は、愛人の子の“下”で学べばいい」 その瞬間、リディアの中で何かが静かに終わった。怒鳴らない。泣かない。微笑みすら崩さない。 「承知しました。では――正妻の役目は終わりましたね」

【完結】悪役令嬢ですが、断罪した側が先に壊れました

あめとおと
恋愛
三日後、私は断罪される。 そう理解したうえで、悪役令嬢アリアンナは今日も王国のために働いていた。 平民出身のヒロインの「善意」、 王太子の「優しさ」、 そしてそれらが生み出す無数の歪み。 感情論で壊されていく現実を、誰にも知られず修正してきたのは――“悪役”と呼ばれる彼女だった。 やがて訪れる断罪。婚約破棄。国外追放。 それでも彼女は泣かず、縋らず、弁明もしない。 なぜなら、間違っていたつもりは一度もないから。 これは、 「断罪される側」が最後まで正しかった物語。 そして、悪役令嬢が舞台を降りた“その後”に始まる、静かで確かな人生の物語。

【一話完結】断罪が予定されている卒業パーティーに欠席したら、みんな死んでしまいました

ツカノ
ファンタジー
とある国の王太子が、卒業パーティーの日に最愛のスワロー・アーチェリー男爵令嬢を虐げた婚約者のロビン・クック公爵令嬢を断罪し婚約破棄をしようとしたが、何故か公爵令嬢は現れない。これでは断罪どころか婚約破棄ができないと王太子が焦り始めた時、招かれざる客が現れる。そして、招かれざる客の登場により、彼らの運命は転がる石のように急転直下し、恐怖が始まったのだった。さて彼らの運命は、如何。

処理中です...