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22:狂愛者
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あの騎士。名を、ヴィアンといった。
「ヴィア」――「世界の理を見守りし者」。その名を受け継ぐ者。
愛しき存在と同じ名を有する者。
どういう事だ―――?
わたしの中に出てきた最初の疑問は、それだった。
昔馴染みである魔族の仮の王の姫マシヴィアに頼まれて、わたしは昨夜一人の騎士の暗殺に向かった。
だが、失敗した。
本来なら、あり得ない事だ。このわたしが、ただの人間ごときに敗れるなど。
あの人間は、特に何をしたわけでもなかった。ただ立って、私を見ただけだった。
――――カインキスト
ああ、そうだ。
奴も、奴もそんな事をしていた。
このわたしが、唯一自由にできなかった人間。この私が何よりも大切にしていた存在を踏みにじり葬った者。
だが、そうか。そうなのか。
『彼女』は、まだ生きている―――――――――っ!!
死んでなどいない。殺されてなどいない。
全て、『彼女』のちょっとした悪戯だったのだ。そうに違いない。
何だ、まんまと騙されてしまった。
『彼女』はきっと今頃、悪戯が成功したと楽しげに笑っているだろう。昔のように。いや、むしろ、何故もっと早くに気が付かなかったのかと、怒っているのかもしれない。
何にしても、早く迎えに行かなければ。こんな穢れが凝り固まって大陸ができたかのような場所から、早く去らなければ『彼女』の体にも障る。『彼女』はこの世で最も至高の存在に近い者なのだから。
わたしは逸る気持ちを抑えきれずに、『彼女』のもとに転移した。――いや、しようとした。
だが、どうした事だろうか。転移が発動しない。何者かに阻まれているような感触がした。
またか。また、わたしから××を遠ざけようとするのか、カインキストよっ!!
そんな児戯じみた小細工が、この私に二度も通用すると思うな。今度はわたしが勝つ。
怒りに任せて魔力を開放した。力業で妨害を突破する。以前に比べて若干容易になった気がするが、それは私の力が増した結果だろう。愛の力、などと言ったら、『彼女』は変な顔をするのだろうか。そんな顔も愛おしいのだが。
――――まあ、いい。そんな事は。
わたしは『彼女』の気配を追って転移する。
――――今度は、わたしが『彼女』と共にある番だ。
「ヴィア」――「世界の理を見守りし者」。その名を受け継ぐ者。
愛しき存在と同じ名を有する者。
どういう事だ―――?
わたしの中に出てきた最初の疑問は、それだった。
昔馴染みである魔族の仮の王の姫マシヴィアに頼まれて、わたしは昨夜一人の騎士の暗殺に向かった。
だが、失敗した。
本来なら、あり得ない事だ。このわたしが、ただの人間ごときに敗れるなど。
あの人間は、特に何をしたわけでもなかった。ただ立って、私を見ただけだった。
――――カインキスト
ああ、そうだ。
奴も、奴もそんな事をしていた。
このわたしが、唯一自由にできなかった人間。この私が何よりも大切にしていた存在を踏みにじり葬った者。
だが、そうか。そうなのか。
『彼女』は、まだ生きている―――――――――っ!!
死んでなどいない。殺されてなどいない。
全て、『彼女』のちょっとした悪戯だったのだ。そうに違いない。
何だ、まんまと騙されてしまった。
『彼女』はきっと今頃、悪戯が成功したと楽しげに笑っているだろう。昔のように。いや、むしろ、何故もっと早くに気が付かなかったのかと、怒っているのかもしれない。
何にしても、早く迎えに行かなければ。こんな穢れが凝り固まって大陸ができたかのような場所から、早く去らなければ『彼女』の体にも障る。『彼女』はこの世で最も至高の存在に近い者なのだから。
わたしは逸る気持ちを抑えきれずに、『彼女』のもとに転移した。――いや、しようとした。
だが、どうした事だろうか。転移が発動しない。何者かに阻まれているような感触がした。
またか。また、わたしから××を遠ざけようとするのか、カインキストよっ!!
そんな児戯じみた小細工が、この私に二度も通用すると思うな。今度はわたしが勝つ。
怒りに任せて魔力を開放した。力業で妨害を突破する。以前に比べて若干容易になった気がするが、それは私の力が増した結果だろう。愛の力、などと言ったら、『彼女』は変な顔をするのだろうか。そんな顔も愛おしいのだが。
――――まあ、いい。そんな事は。
わたしは『彼女』の気配を追って転移する。
――――今度は、わたしが『彼女』と共にある番だ。
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