ラ・メジャーネル海の黒き旋風

カリノア

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兵士の諦観

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 軍の裏事情を知る兵士は、なんとも言い難い微妙な顔を作った。 

 ちなみに、シアンが2日前にこの駐屯所にやってきたとき、ちょっとした騒ぎがあった。どんな騒ぎだったかは今更口に出すのもうんざりするが、まあとにかくこの『キング・オブ・パイレーツキラー』が殊の外嬉しそうだったとはいっておこう。 

 兵士のそんな気持ちに気づいて気づかずか、シアンは思い出したように一つ問うた。 

「もらっても構わないか?」 

「あ? 何を?」

「商品」

 いつものことだが、『黒蛇』は言葉が足りなかった。

 意思を伝える意志があることは分かるのだが、致命的に言葉が少ない。兵士はしばし考えて、『黒蛇』の言いたいことを汲み取った。

「……もしかして、マザレスが脱獄してた間にやってた商売の品のことか?」

 『黒蛇』は、一つ頷いた。

 【賊狩り】が賊を狩ったときの報酬の一つとして、【賊】が溜め込んでいた財産がある。盗難届が出されている品などを除き、【賊】の財産は【賊狩り】の所有にして良いと法律に明記されている。 

「法的にも構わないが……あんた、これまでそんなこと言い出さなかったのに、今日はどうしたんだ? よっぽどいいモノでもあったのかい」 

 『賞金』だけで十分すぎるほど生活が成り立つシアンは、余分な財産は置き場所に困るだけだからと、これまで狩った【賊】の財産を全て軍に寄贈していた。その総額は、1万の軍隊が3年は余裕で生活できるくらいになっていた。軍のほうが申し訳なくなる金額である。 

 そんな彼が、今回初めて財産を受け取る権利を主張してきたのである。長年担当してきた兵士が不思議がるのもおかしくない。 

 このときの返答を後々後悔することも知らず、兵士は珍しく思いながらも快く了承した。 

 そんな兵士に、シアンは美しいが普段はぼんやりしているとも見られる顔に微笑をたたえ、言った。 

「連れにする」 

「は? 連れ……?」 

 猫か鳥でもいたのか、そう兵士は予想した。どちらも、海運業をするものには好まれる動物だ。 

 

 兵士の予想は、ある意味斜め上な方向で裏切られることとなる。 

 

 ある新聞記事を目にした駐屯所の兵士は目をむき出して驚き、その後濃い諦観をにじませたため息を吐いたという。 

 そして、あのとき嬉しそうにしていたのはこのことだったのかと頭を抱えた。 

(そういえば、『剛鉄』は人身売買してたんだっけな……) 






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