ラ・メジャーネル海の黒き旋風

 かつて、この世界には大きな戦争があった。世界を巻き込んでの大戦だ。

 後の世で、この戦は『太古の大戦』と呼ばれるようになる。

 肥沃大地ラーデ大陸を巡って、数多くの国々が争い、勝ち、敗れ、分裂し、併わさり、血で血を洗い、権謀術数の限りを尽くし―――秩序を失った。

 人口はみるみる減っていった。戦争が始まって100年が経った頃には、戦争が始まる前と比べて、3分の1以下の人口しか生き残っていなかった。

 しかし、人間には、もはや争いを止めることは困難だった。

 そこで困ったのが、この世界を作った創造主。後の世に、最高神と畏れ敬われる存在である。

 最高神は人間が絶滅しないように(暇つぶしがなくならないように)、眷属たる神人のうち最も信頼する二柱の神に人間界へ下るよう命じた。

 二柱の神は最高神の命を受け下界へ下り、一人の青年と出会う。

 この青年が、後に世界を統べることになるラクソリス帝国初代皇帝その人であった。

 青年は二柱の神の力を借り、世界各地で起こる争いに次々と終止符を打っていった。



 そうして、最高神の思惑通り、世界から戦争は消えた。



 青年は、人類の歴史上初めて世界を統べる者、皇帝となった。



 二柱の神はその後天界へと帰ったが、皇帝の権威は揺るぎないものとなっていた。

 世界から戦争は消え、人々は平和を取り戻した。


 それから約1000年。初代皇帝の英雄譚が「建国記」の名で伝説化されてしまった頃のこと。

 相変わらず平和を甘受しているラクソリス帝国の国民だったが、ここ100年ほど、太古の大戦に比べれば可愛らしいものであるものの、だが確実に大きな脅威にさらされていた―――。


 戦争が起きない代わりに【賊】が蔓延るようになった時代。

 ラーデ大陸北西のある港町には、ラ・メジャーネル海の海賊に『黒き悪夢』として知られる【賊狩り】がいた。



 多くの人々に囲まれながらも亡き相棒の面影を追い続ける孤独な【賊狩り】と、 その【賊狩り】に買われた訳あり【奴隷】姉弟、海賊に使われていた乞食の少年、大罪を犯した前世の記憶を持つた廃皇子、そしてそれを取り巻く群衆の物語。




 ※ BL風味。初めの方は全く(?)その気配はありません。
   【賊狩り】さんとその相棒の生まれ変わりの皇子、そこに横恋慕する(というより憧れを抱く)【奴隷】少年(後に青年)。

  勢いだけで書いてますので、今あるストックが切れたらマイペースすぎる更新になります。
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