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5、予感
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「凪心、それは絶対遊ばれてるよ」
「……むぅ」
次の日、これ以上ないくらいに凄い体験だと思って昨日のことを話したのに瑠衣は眉をひそめて辛辣な一言を言ってのけた。
私だって水瀬くんが本気で「いい」とかそんなこと言ってるんじゃないって分かってるもん。
ちょっとくらい舞い上がったっていいじゃん。
別に好きになったとか言ってるんじゃないんだし。
頬を膨らませれば、瑠衣はひそめていた眉をへの字に下げて困った顔を作る。
「凪心に嫌な思いしてほしくないの。女の子のことで水瀬のいい噂聞かないし、凪心は警戒心強いくせに距離感の詰め方ばかだから」
ちゃっかり、というか結構がっつり悪口を言われた気がする。
だけど、そんな顔で心配されたら怒れない。
「そんなことないもん」
憎まれ口は叩くけど本当は瑠衣の言うことは当たってる。
私は昔から変なところで行動力があると言われることが多くて中一で初めて同じクラスになった瑠衣も了解済みだ。
二人で話すのは緊張するけどスポドリは渡せるし、困り果てるくせにおばあさんには声をかける。
要するに考えなしってことだ。
人生で初めての告白は今年のはじめ私が顔見知りくらいに思っていた男の子からの「お前、俺のこと好きだろ? 付き合え」だった。
話したのなんて本当に数えるくらいだったのに何がそう思わせたのか。
瑠衣に言わせれば私の距離感がバグっているからしょうがないらしい。
彼女はこの話がなぜか大好きで何かの拍子に思い出すたびに笑い転げてる。
瑠衣は美人だし、明るいし、運動神経もいいから男の子にもモテモテだ。
そんな瑠衣からすれば私の初めてされた告白なんて笑い話みたいなもんだと不貞腐れた気持ちになる。
親友ながら悪趣味だと思うけど、正直あの告白は自分のことながら笑えて来る。
バカにしてるんじゃなくて自分の情けなさへの。
傲慢すぎる告白をやんわりと断ればよくわからない脅しをかけられるし、反抗したら怒鳴られて泣かれるしでどうしたらいいのかって感じだった。
運よく先生が通りかかって助けられたけど、もうあんな目には二度と会いたくない。
「向坂ー」
私が言葉を続けようとすればタイミング悪く瑠衣を呼ぶ声がかかった。
教室の入り口、瑠衣の幼馴染の遊馬尊人くんが立っていた。
つやつやな黒髪のさわやかイケメンな彼はすっごくモテるけど、瑠衣のことが好きみたいでことあるごとに瑠衣をかまいに来るのだ。
「どうしたの?」
「数学の教科書借りていい? あと、英語の課題写させてっ!」
パチンっと両手を胸の前で合わせてお願いポーズ。
遊馬くんは何かあるとすぐにこうやって瑠衣のところに来てはいろいろと頼み事をしている。
ある意味いつもの光景だ。
「なこちゃん、俺も借りていい?」
だけど、いつもと違うのは遊馬くんの後ろからもう一人顔を出してきたということ。
へらっとした笑顔で顔を出したのは間違いなく水瀬くん。
私はこの人と教科書を貸すくらい仲良くなった覚えはないんだけど、水瀬くんは断られるだなんて思ってなさそうな顔で頼んでくる。
遊馬くんは驚愕な顔をしているしこの上なく気まずい。
「え、何、お前ら知り合い?」
「え、いや知り合いっていうか……」
「彼女なんだってー」
「マジか!」
私が水瀬くんとの関係を言いあぐねていたら横から茶々を入れてきたのは机から教科書を取り出して戻ってきた瑠衣だ。
なぜ瑠衣があっちの味方なのか。
そして遊馬くんも冗談だと分かっているくせにむやみに反応しないでほしい。
この二人、幼馴染だからと言ってふざけすぎだ。
これもいつもの光景として受け入れてしまえる自分にも苦笑が漏れる。
「じゃあさ、夏祭りいこーよ! 四人で」
え?
けらけら笑う二人を横目に数学の教科書を取りに行って戻ってきたらよくわからない話の流れになっていた。
何がどうしてそうなったの?
「行きたい! 灯里は?」
「俺もいいよ」
水瀬くんは遊馬くんの問いかけに頷きながらこっちをうかがってくる。
「凪心もいこーよ」
瑠衣もノリノリだ。
断る理由はない。
瑠衣がいればきっと楽しいと思う。
ただ、この子はさっきまで私に「遊ばれている」と言っていなかっただろうか。
別に瑠衣の意見に全部流されるわけじゃないけど、このまま仲良くなっても本当にいいのかな。
というか瑠衣は意見が変わりすぎだ。
「なこちゃん、ダメ? 俺、なこちゃんと花火見たい」
私と行きたいみたいな言葉をいかにも切実そうな顔で発する水瀬くん。
こういうのがこの前みたいな女の子とのけんかに繋がるのだとこの人は分かっているのかいないのか。
確信犯だとしたら私はもう男子を信用できなくなると思う。
「うん」
気づいたらウルウルな目に押されて頷いていた。
呆れてたはずなのに断ろうとは思えなかった。
いや、少し……本当に少しだけど、私も水瀬くんと見る花火を期待したかもしれない。
「悪いなー、灯里は」
「なにがだよっ、別にホントのことだし」
男子二人のよくわからない言い合いを聞きながら、密かに胸がソワソワするのを留められない。
「……むぅ」
次の日、これ以上ないくらいに凄い体験だと思って昨日のことを話したのに瑠衣は眉をひそめて辛辣な一言を言ってのけた。
私だって水瀬くんが本気で「いい」とかそんなこと言ってるんじゃないって分かってるもん。
ちょっとくらい舞い上がったっていいじゃん。
別に好きになったとか言ってるんじゃないんだし。
頬を膨らませれば、瑠衣はひそめていた眉をへの字に下げて困った顔を作る。
「凪心に嫌な思いしてほしくないの。女の子のことで水瀬のいい噂聞かないし、凪心は警戒心強いくせに距離感の詰め方ばかだから」
ちゃっかり、というか結構がっつり悪口を言われた気がする。
だけど、そんな顔で心配されたら怒れない。
「そんなことないもん」
憎まれ口は叩くけど本当は瑠衣の言うことは当たってる。
私は昔から変なところで行動力があると言われることが多くて中一で初めて同じクラスになった瑠衣も了解済みだ。
二人で話すのは緊張するけどスポドリは渡せるし、困り果てるくせにおばあさんには声をかける。
要するに考えなしってことだ。
人生で初めての告白は今年のはじめ私が顔見知りくらいに思っていた男の子からの「お前、俺のこと好きだろ? 付き合え」だった。
話したのなんて本当に数えるくらいだったのに何がそう思わせたのか。
瑠衣に言わせれば私の距離感がバグっているからしょうがないらしい。
彼女はこの話がなぜか大好きで何かの拍子に思い出すたびに笑い転げてる。
瑠衣は美人だし、明るいし、運動神経もいいから男の子にもモテモテだ。
そんな瑠衣からすれば私の初めてされた告白なんて笑い話みたいなもんだと不貞腐れた気持ちになる。
親友ながら悪趣味だと思うけど、正直あの告白は自分のことながら笑えて来る。
バカにしてるんじゃなくて自分の情けなさへの。
傲慢すぎる告白をやんわりと断ればよくわからない脅しをかけられるし、反抗したら怒鳴られて泣かれるしでどうしたらいいのかって感じだった。
運よく先生が通りかかって助けられたけど、もうあんな目には二度と会いたくない。
「向坂ー」
私が言葉を続けようとすればタイミング悪く瑠衣を呼ぶ声がかかった。
教室の入り口、瑠衣の幼馴染の遊馬尊人くんが立っていた。
つやつやな黒髪のさわやかイケメンな彼はすっごくモテるけど、瑠衣のことが好きみたいでことあるごとに瑠衣をかまいに来るのだ。
「どうしたの?」
「数学の教科書借りていい? あと、英語の課題写させてっ!」
パチンっと両手を胸の前で合わせてお願いポーズ。
遊馬くんは何かあるとすぐにこうやって瑠衣のところに来てはいろいろと頼み事をしている。
ある意味いつもの光景だ。
「なこちゃん、俺も借りていい?」
だけど、いつもと違うのは遊馬くんの後ろからもう一人顔を出してきたということ。
へらっとした笑顔で顔を出したのは間違いなく水瀬くん。
私はこの人と教科書を貸すくらい仲良くなった覚えはないんだけど、水瀬くんは断られるだなんて思ってなさそうな顔で頼んでくる。
遊馬くんは驚愕な顔をしているしこの上なく気まずい。
「え、何、お前ら知り合い?」
「え、いや知り合いっていうか……」
「彼女なんだってー」
「マジか!」
私が水瀬くんとの関係を言いあぐねていたら横から茶々を入れてきたのは机から教科書を取り出して戻ってきた瑠衣だ。
なぜ瑠衣があっちの味方なのか。
そして遊馬くんも冗談だと分かっているくせにむやみに反応しないでほしい。
この二人、幼馴染だからと言ってふざけすぎだ。
これもいつもの光景として受け入れてしまえる自分にも苦笑が漏れる。
「じゃあさ、夏祭りいこーよ! 四人で」
え?
けらけら笑う二人を横目に数学の教科書を取りに行って戻ってきたらよくわからない話の流れになっていた。
何がどうしてそうなったの?
「行きたい! 灯里は?」
「俺もいいよ」
水瀬くんは遊馬くんの問いかけに頷きながらこっちをうかがってくる。
「凪心もいこーよ」
瑠衣もノリノリだ。
断る理由はない。
瑠衣がいればきっと楽しいと思う。
ただ、この子はさっきまで私に「遊ばれている」と言っていなかっただろうか。
別に瑠衣の意見に全部流されるわけじゃないけど、このまま仲良くなっても本当にいいのかな。
というか瑠衣は意見が変わりすぎだ。
「なこちゃん、ダメ? 俺、なこちゃんと花火見たい」
私と行きたいみたいな言葉をいかにも切実そうな顔で発する水瀬くん。
こういうのがこの前みたいな女の子とのけんかに繋がるのだとこの人は分かっているのかいないのか。
確信犯だとしたら私はもう男子を信用できなくなると思う。
「うん」
気づいたらウルウルな目に押されて頷いていた。
呆れてたはずなのに断ろうとは思えなかった。
いや、少し……本当に少しだけど、私も水瀬くんと見る花火を期待したかもしれない。
「悪いなー、灯里は」
「なにがだよっ、別にホントのことだし」
男子二人のよくわからない言い合いを聞きながら、密かに胸がソワソワするのを留められない。
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