君と初恋

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11、それでもやっぱり好きだから

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「きゃー!」

 体育館のなかはさっきから黄色い歓声でいっぱいだ。
 前に数回ほどみた水瀬くんのバスケ姿はやっぱりまぶしすぎるほどかっこよかった。だけど、私は昨日返ってきた水瀬くんの伝言が頭から離れない。

『俺も話したいことある。明日、放課後にあの公園で待ってる』

 話したい事って何だろう。
 始めは私が遊馬くんに伝言を頼んだ。
 私の話したいことはやっぱり友達にはなれかもしれないと言うことだった。
 初めて本当に「好き」になった人だから変に気持ちを押し殺して水瀬くんの隣にいるのは違う気がしたんだ。
 それをちゃんと目を見て直接謝りたかった。
 本当に大切に思っているからお祭りの時みたいな流された言葉じゃなくて考えて悩んだ言葉を伝えなきゃって思える。
 帰り際に体育館裏を何気なく通ればなんだか騒がしい。そこら辺にあったてきとうな柱の陰からのぞけばなんと水瀬くんが女の子に囲まれていた。
 もしかしたら、公園には来られないかもしれない。
 だけど、やっぱり帰る気になれなくてあの日の公園に来てた。二人で座ったベンチに今日は一人で座る。
 思い返せば、水瀬くんの人気ぶりを目の当たりにしたのは今日が初めてだったかもしれない。もしかしたら、あの中の誰かと付き合うのかな。
 今も告白されていたりするんだろうなあ。
 遊馬くんから話を聞いてもっとちゃんと向き合いたいと思ったのはいいけど、あまりにも高い壁すぎてさっそく心が折れそう。
 今日、もう一度、告白しようと思っていたのだ。
 どれくらいそうしていたのか日が傾いてきてさすがに家に帰ろうと立ち上がったまま私の体は固まった。

「なこちゃん! ごめん、こんな時間まで待たせて」

 公園の入り口に水瀬くんが立っていたのだ。
 あの女子の大軍をかいくぐりきる時間まで公園でぼーっとしていた自分に内心そっと引いた。
 ちょうどいいところで帰ってもきっと水瀬くんは怒らないし、そのほうが彼に気を遣わせずに済んだかもしれなかったのに。
 めちゃくちゃ気まずいのに、久しぶりに水瀬くんと話せたのがうれしすぎて頬が緩んじゃいそうだ。

「あ、私水瀬くんに言いたいことあって」
「うん、俺も言いたいことあるけど……とりあえず、涼しいとこ行こう」

 この暑い中私が公園でぼーっとしていたのが悪いのに熱中症になったりしたら大変だからとスポドリを買って家に招待してくれた。
 慌ててお金を払うと言えばこの前のスポドリのお礼だと言われた。お礼のお礼をされて何となく複雑な気分になったけど、それ以上は全然受け取ってくれなかった。
 それにしても突然家ってハードル高い。
 なぜか今日はとても頑固な水瀬くんに押されまくって恐縮しながら初めての男の子の部屋に入る。

「コップ持ってくるから適当に座ってて」

 水瀬くんが出て行って急に静かになる部屋に落ち着かない。
 壁にそっておかれたベッドと対角に置かれている黒の机。机の上には夏休みの課題の山が積まれていて少し親近感がわく。
 やっぱり水瀬くんは勉強が好きなのかもしれない。

「あれ?座っててくれてよかったのに……はい、どうぞ」

 ずっと突っ立ったままだった私にコップを置いたサイドテーブルに近いベッド前にしかれたラグを勧めてくれた。
 ベッドに寄りかかるように座った水瀬くんにならって隣に座る。

「話したい事って?」
「うん、あのね。……やっぱりあなたと友達にはなれない。ごめんなさい」

 座ったまま水瀬くんに頭を下げる。

「……そりゃ、そうだよな。そんな提案受け入れてくれるほうが優しすぎて心配になるよ」

 乾いた笑みを浮かべているのにやっぱり傷ついた顔をしてる水瀬くん。

「ち、違うの!大切だって思ってるから。……その、だから、嘘をついて友達の顔をしてあなたのそばにいる私を私が許せないの。…………水瀬くん、好きです。今まで本当にありがとう」

 どうか、わがままな私を許してほしい。

「君が許してくれるなら、俺の話も聞いてくれる?」

 頷けばほっとしたように笑う。

「好きなんだ、なこちゃんのこと。めちゃくちゃ大好き」
 ……なんで?

 真っ先に浮かんだ言葉はそれだった。
 だって、おかしい。こんな急に友達になりたいって言っていた人がこんなこと言うのはおかしいんだ。
 確かに、遊馬くんはああ言っていたけどそれにしたってこんな風に気持ちが変わったらおかしい。
 もしかして気を使われているのかもしれない。

「っ……うそ」
「嘘じゃないよ。最初は正直そんなに印象なかった。ただ、優しい子なんだろうなって。次に会った時は思ったことをずばっっていうのがいいなって思ったけど、それだけだったらそのうち忘れてた。スポドリくれた日、思ったより頑張って話す君がかわいくて。ちゃんと話してみたら大人っぽいのに自信のない感じが、守りたくなった。俺にもう一度この感情を教えてくれてありがとう。守りたい大切な人を作らせてくれてありがとう。傷つけてごめん」

 水瀬くんの口から出てくる信じられない言葉の数々に頭が混乱する。
 今立とうと思ったら多分腰がぬけて立てなくなっていると思う。
 だけど、もう嘘だとは言えなかった。
 そんな風にお礼を言われてしまったら否定をする気にはなれなかったから。

「でも、友達って」
「俺、もう好きな子は作らないって思ってたんだ。怖かった、大切な人を何度も失うのは。だから、友達ならいいと思った。でもさ、結局そんなのただの言い訳で友達だろうと恋人だろうとなこちゃんのことを大切だと思う自分の心は変わらないんだ。それに気づいたから君に好きだって伝えたくなった。逃げてないで伝えなきゃって思った」

 きっとなのかさんのことを言っているんだと思う。
 すごく苦しんできたんだ。
 私なんかじゃ到底わからないくらい苦しんで悩んで、それでも私に好きだと伝えることを選んでくれたことを知ればますます水瀬くんを好きになる。

「だから、なこちゃんがまだ俺のことを好きだって思ってもらえるなら……俺と付き合って下さい」

 まっすぐに差し出された手ににたまらず怖気づく。
 この思いに私は本当に答えられるのだろうか。答えていいのだろうか。

「よっよろしくお願いします!」

 ううん、答えたいんだ私は。
 水瀬くんの手を握れば心底ほっとしたような顔をされた。
 ほら、少し勇気を出せば大切な人のこんなにもうれしそうな顔が見られるんだから。
 自信がなくて勇気を持てない強くなれない私をそのままに好きだと言ってくれる人だから伝えたいって思う。
 水瀬くんの笑顔にずっとドキドキさせられる日々が続くために私はこの日勇気のない自分を好きになりたいと思った。
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