家族になった人族のポムと魔族のポムの物語

純粋どくだみ茶

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家族になった人族のポムと魔族のポム

23.食材探しと裁縫をする悪魔

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ツリーハウスに戻り、幌を梯子に置いてから僕とポムさんと悪魔さんで、草原に出かけて食材探しを始めました。

林を抜けて少し歩くと、よく魚釣りに来た川に出ました。

最近、お金に余裕ができたせいで川で魚を釣ることが少なくなったけど、魚が美味しいのでまた釣りに来たいとポムくんは考えていました。

すると、ポムくんの側にな立っていたポムさんがぽつりと言いました。

「私、魚はあまり好きじゃないな。でもポムくんの家に初めて来た時に食べさせてもらった魚は美味しかった。」

ポムさんを助けて最初に食べてもらったのが、ポムくんが川で釣った魚でした。

悪魔さんが川で何かをしています。

すると、川から魚が3匹浮いています。

「えっ。どうして網も無いのに魚がとれるの。」

「ポム様、私めが魔法を使えば魚を獲ることなど簡単です。でも、一度に獲ってしまうと川から魚がいなくなってしまうので、今日は3匹といたしましょう。」

「うん。そうだね。悪魔さん偉い。」

悪魔さんの魔法は、何でもできそうです。



「さて次は、あれかしら。」

悪魔さんんは少し大きな木の枝に何かを見つけたようです。

「悪魔さん、あれって蜂の巣?」

「そうですポム様。蜂の巣です。あそこから蜂蜜を少しばかりいただきます。」

「蜂も全部の蜜を取られてしまうと大変ですから半分だけにします。」

悪魔さんは、そう言うと魔法で蜂の巣から蜂蜜を取り出しました。

蜂蜜は、丸い形をしてふわふわと浮いています。

悪魔さんは家から持ってきた口の広い空の瓶を取り出すと、ふわふわと浮いている蜂蜜を瓶の中へと器用に入れていきます。

「やっぱり悪魔さんの魔法はすごいや。」

「ポム様に褒めてもらえて私は幸せものです。」



川沿いを歩いているとポムさんが走ってきました。

「みてみてクルミを見つけたの。これでクルミパンが作れるはずよ。」

ポムさんが手にいっぱいのクルミを見つけてきました。

でもクルミは少し焼けていました。

「あなた、火魔法を使ったでしょう。それだと木が燃えて次の年にクルミができなくなるわよ、もう少し気を使って取りなさい。でもクルミパンはいいわね。ご苦労様。」

ポムさんは、悪魔に褒められたことが以外だったようで、その場で固まって動かなくなっていました。



ふと気が付くと、川向こうにオークが1体立っていました。

オークも僕達のことに気が付いたようです。

オークは、川を渡って僕達の方へと走ってきました。

「あっ、オークだ。皆逃げよう。」

「待ってくださいポム様。オークの肉は美味しいんですよ。」

「ここは私めにお任せを。」

そう言うと悪魔さんは、河原から小さな石を拾ったかと思うとオークに向かって投げつけました。

すると、悪魔さんが投げた石はオークの腹に当たり、川の中で片膝を付いて座りこみました。

「あら、あのオーク以外と丈夫ね。あの石はオークの腹を貫通したのに。じゃあもう一度。」

そう言うと、悪魔さんは、また河原の小石を拾ってオークめがけて投げつけました。

今度は、オークの頭に当たりました。

すると、オークは川の中に倒れ込んで動かなくなりました。

悪魔さんは、川の中に倒れたオークを魔法で河原まで移動させました。

「ポム様、短剣をお持ちでしたね。オークを解体しますので短剣を貸していただけますか。」

ポムくんは、悪魔さんに短剣を渡しました。

すると、あっという間にオークを解体して食べられる肉の塊を仕分けてしまいました。

「じゃあ、残りの部分を置いておくと魔獣達が集まってくるから処分しますね。」

「そう言うと、オークの体はあっという間に火達磨になって骨も跡形もなく消えてしまいました。」

魔法が得意なポムさんも唖然としています。

「では、ポム様、家に帰りましょう。」



家に帰ると、悪魔さんが小麦粉をこねてクルミを混ぜたパンを焼きました。

魚とお肉も焼きます。スープにはお肉も入れました。ツリーハウスの下で育てた赤く熟したトマトもテーブルに並んでいます。

「さあ、食べましょう。」

悪魔さん特製の夕ご飯です。

「このパン美味しい。」

悪魔さんが焼いたパンは僕が作ったパンよりも何倍も美味しかった。

「パンには、少し蜂蜜をかけてありますから甘くて美味しいですよ。」

「魚と肉には、草原で見つけたハーブを隠し味にしてあります。」

「本当だ、魚も肉もいつもと違う優しい味がしている。」

「お褒めにあずかり光栄です。料理は、手間と工夫と少しの愛情があれば美味しくなります。」

「ポム様に食べてもらえると思えば、手間と工夫など取るに足りません。」

悪魔さんの料理が美味しくて皆で楽しい食事ができました。



皆で食後のお茶を飲んでいると、悪魔さんが荷馬車の幌の穴を直しています。

「悪魔さんは、裁縫もできるんだね。」

「裁縫くらいできないと笑われてしまいます。これも悪魔のたしなみです。」

悪魔は、ポムさんの顔をちらっと見ました。

「なんか今、私の顔を見た気がした。」

ポムさんが棘のある言葉で悪魔さんに向かって話始めました。

「いえ、私は、悪魔のたしなみとして言ったまでです。人族の女の子が裁縫もできないなんてそんな悲しい事はないですよね。」

ポムさんは胸を押さえて床に倒れ込んでいました。



「ポム様、ズボンを脱いでください。」

悪魔さんが荷馬車の幌の直しが終わったかと思うと、突然ポムくんにズボンを脱ぐように言ってきました。

「ちょっと、ポムくんのズボンを脱がせてまた何かいやらしいことをするつもり。」

ポムさんが悪魔さんの顔を睨み付けました。

「はあ、この子はいつもポム様の近くにいるのに気が付かないのかしら。全くダメな子だわぁ。」

「ポム様、ズボンにほつれがあります。私が直しますのでズボンを脱いでください。」

ポムくんが立ってズボンを見回すと何ヶ所かにほつれがありました。

「えっ、本当だ。悪魔さんよく気が付いたね。」

「ポム様のことはよーく見ていますから何でも分かります。」

ポムくんはズボンを脱ぐと悪魔さんに手渡した。

悪魔さんはズボンのほつれを器用に直していきます。

「はいできました。ポム様、これで明日も大丈夫です。」

「悪魔さん、ありがとう。」

「まっ。私に礼など。嬉しすぎて涙が出そうです。」

悪魔さんは、ポムくんに礼を言われて喜んでいました。



「じゃあ、そろそろ寝ようか。悪魔さんはそのベットを使って。」

そう言ってポムくんは、自分のベットに入ろうとすると、悪魔さんもポムくんのベットに
入ってきました。

「ちょっとあんた何のつもり。」

ポムさんが悪魔に向かって睨み付けています。

「あら、私としたことが。ちょっとした間違いよ。もうそんな怖い顔して睨まないでよぉ。」

「じゃあ、お休みなさいって、おいあんた。あんたはこっちのベットでしょう。」

「ポムくんのベットには、いつの間にかポムさんが寝ていました。」

「ははは。私もちょっとした間違いよ。」

「油断も隙もないわね。」

「これじゃ、うかうか寝てられないわね。」

「何よ。先にやったのはそっちじゃない。」

「うるさいわよ。ねえ。ポム様。」

ポムさんと悪魔が寝る前になって喧嘩を始めました。

「もう、ふたりとも落ち着いて。冷静になって、皆ちゃんと自分のベットに寝るんだよ。いい。」

「はーい。」

「はい、ポム様。」

ランプの灯を消して暗くなったツリーハウスの中で、落ち着いた3人は静かに眠りにつきました。
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