家族になった人族のポムと魔族のポムの物語

純粋どくだみ茶

文字の大きさ
24 / 35
家族になった人族のポムと魔族のポム

24.新しい配達先(その1)

しおりを挟む
今日も榊さんのレストランに3人で食材の配達に来ています。

レストランの厨房のテーブルにアイテムバックから取り出した食材を並べると、厨房のコックさんが食材の数と品物の質をチェックしています。
いつもこの時が緊張します。

「おっ、ポムくん来てるね、今日はポムくんにお願いがあるんだ。」

ポムくんが食材の配達をしているレストランのオーナーの榊さんに呼ばれて奥の事務所に呼ばれました。

僕達の目の前には、お茶と草餅と道明寺が並んでいますが、悪魔さんの所だけ、草餅と道明寺が山盛りに盛られていました。

悪魔さんはそれを美味しそうに頬張っています。

「ポムくんは、セール王国という国を知っているかい。」

ポムくんは初めて聞く国の名前に首を横に数回降りました。

「僕達が住んでいるこのセイランド王国の隣りにあるバルデ皇国のさらに隣りにある国なんだけど馬車で行っても1ヶ月もかかる遠い国なんだ。」

「そのセール王国には、"水龍"いや"水神様"だね。その"水神様"の神殿があって、神殿に向かう参道に新しい店を出すことになったんだけど、店を出すからには食材を運ぶ人が必要でね、でも普通なら馬車で1ヶ月もかかる場所に"ココ"の街から食材を運ぶなんてありえないよね。」

「けど、この店にはある魔法の道具があるからセール王国まで、あっという間に行くことができるんだ。」

「あら榊さん転移石をお持ちなの。良い物を持っているわね。」

ぼくの隣りで道明寺を食べながらお茶を優雅に飲んでいた悪魔さんが、話に割って入ってきました。

「さすが悪魔さんです。博識です。」

「私だけなら空間を開けてどこにでも自由に出入りできる魔法があるから簡単に移動ができるけど、悪魔じゃないと体が潰れてしまうからポム様には使っていただけないのよねぇ。」

「やはり、いろいろな魔法がお使いになられるのですね。」

榊さんが悪魔さんを褒めています。悪魔さんはまんざらでもない顔をしていますが、榊さんの顔を見ていると悪魔さんをわざとおだてているように見えます。

「そこでポムくんにお願いなんだけど、ポムくん達が運んできている食材を、セール王国のお店にも届けて欲しいんだ。」

「お店の転移石は自由に使っていいからね。それと店が開くのはもう少し先になるから、とりあえずどんな場所なのか行って見てきてほしいんだ。店から出て水神様の参道や神殿に観光に行ってきても構わないよ。殆ど毎日お祭りのように賑わっている場所だから楽しいと思う。」

「行きます。行かせてください。ぜひお願いします。」

ポムさんは、今まで草餅を食べながらつまらなそうに話を聞いていましたが、お祭りと聞いた途端話に飛びつきました。

「じゃあ、今からでもいいかな。」

榊さんにお店にある転移石の前に集まって説明を受けました。

この転移石に触れるともう一方に置いてある転移石の所へ瞬時に移動できるそうです。

魔法ってすごい。

榊さんと僕達3人で転移石を使ってセール王国のお店に行ってみることにしました。

最初は、ポムさんが転移石に触ったと思った瞬間にポムさんが消えてました。

続いて悪魔さん、そして僕の順番です。

転移石に触れた途端、部屋が変わっていました。

そこには、転移石に触った瞬間に消えたポムさんと悪魔さんが居ました。

続いて榊さんの姿も現れました。

「どう、転移石でもうセール王国に来ることができたよ。」

でも僕には、ここがセール王国だとは思えませんでした。お店の中の感じは、"ココ"の街のレストランとあまり違ってなかったからです。

榊さんは、店の人に僕達を紹介してくれました。

「じゃあ、お店の中も案内したし、これお店の周辺の地図ね。ここが水神様の神殿。ちょっと遠いけど、ここに女神ラティア様の神殿もあるから、今度行ってみるといいよ。」

「あっ。そうそう。これ店の店員証。首からこれをぶら下げておいて。この札を持っていれば店の店員だって分かるから。店員証の裏に店の住所とか地図も入っているから、迷子になったそれを見てね。」

僕達は、榊さんから地図と店員証をもらってお店を後にしました。

水神様の神殿に向かう参道に出ると、人で道が埋め尽くされていました。

「えっ。本当にこんなに人がいるの。人の多さに酔いそう。」

ポムさんは既に人の多さにあてられたようです。

参道には、見たこともない食べ物を売る出店や土産物を売るお店が遥か彼方まで続いています。

ポムさんの目が土産物屋さんの店先でうるうるしています。

「ポムくん、あれ何、あれは。もう楽しい。」

「ちょっと。恥ずかしいからやめなさいよ。私達田舎者だってバレバレじゃないのぉ。」

ポムさんのはしゃぎぶりに悪魔さんが珍しく赤い顔をしています。



■龍神様視点

その日も水神様は、神殿でくつろぎながら神官達と他愛のない話に花を咲かせていた。

ところが、椅子に座っていた水神様の顔色が青くなり急に立ち上がった。

「いかん、いかんぞ!」

「水神様、どうされたのですか。」

水神様の今までに見た事もない程の動揺ぶりが神官達を不安にさせた。

「非常事態じゃ。この神殿のすぐ近くに魔族と悪魔が出よった。」

「魔族はまだどうにかなる。しかし悪魔はまずいのじゃ。この魔力の反応からするとわしでは…相手にならぬか。」

水神様は、青い顔をしたまま流れ出る冷や汗をぬぐうことも忘れて考え込んでいたが、この状況は一刻を争う。

神官達をあつめて水神様の状況説明が始まった。

「神官達よ。この街に魔族と悪魔が出よった。この街をいやこの国を守護する以上、見過ごす訳にはいかぬ。今までこの神殿のために努めてくれた事に感謝する。」

「神官は武装してわしに続け。」

神官達は、慌てて武具を取り出し水神様の後に続いた。
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

靴屋の娘と三人のお兄様

こじまき
恋愛
靴屋の看板娘だったデイジーは、母親の再婚によってホークボロー伯爵令嬢になった。ホークボロー伯爵家の三兄弟、長男でいかにも堅物な軍人のアレン、次男でほとんど喋らない魔法使いのイーライ、三男でチャラい画家のカラバスはいずれ劣らぬキラッキラのイケメン揃い。平民出身のにわか伯爵令嬢とお兄様たちとのひとつ屋根の下生活。何も起こらないはずがない!? ※小説家になろうにも投稿しています。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

ゲーム未登場の性格最悪な悪役令嬢に転生したら推しの妻だったので、人生の恩人である推しには離婚して私以外と結婚してもらいます!

クナリ
ファンタジー
江藤樹里は、かつて画家になることを夢見ていた二十七歳の女性。 ある日気がつくと、彼女は大好きな乙女ゲームであるハイグランド・シンフォニーの世界へ転生していた。 しかし彼女が転生したのは、ヘビーユーザーであるはずの自分さえ知らない、ユーフィニアという女性。 ユーフィニアがどこの誰なのかが分からないまま戸惑う樹里の前に、ユーフィニアに仕えているメイドや、樹里がゲーム内で最も推しているキャラであり、どん底にいたときの自分の心を救ってくれたリルベオラスらが現れる。 そして樹里は、絶世の美貌を持ちながらもハイグラの世界では稀代の悪女とされているユーフィニアの実情を知っていく。 国政にまで影響をもたらすほどの悪名を持つユーフィニアを、最愛の恩人であるリルベオラスの妻でいさせるわけにはいかない。 樹里は、ゲーム未登場ながら圧倒的なアクの強さを持つユーフィニアをリルベオラスから引き離すべく、離婚を目指して動き始めた。

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

処理中です...