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09.魔族戦争です
01.行軍初日です。
しおりを挟む"ココ"の街を出発した。
今は馬車に揺られている。
馬車には、クリス、サティ、ベティ、アレス、レディ、俺の6人が乗り込んでいる。
すぐ隣りには、右腕を絡ませているクリス。反対側には左腕を絡ませているサティ。
向いにはベティ、その隣りにはアレス、レディが座っている。
辺りは既に暗くなっている。
本来、馬車は夜の暗い街道を走ることはしない。
暗い夜の街道を走ると事故が絶えないのと魔獣に襲われる可能性があるからだ。
しかし、今日は違う。
王国軍の2000人の兵士が馬車に乗り込み、その周りを騎乗した騎士が行軍中なのだ。
この先の山間いを抜け峠を越えた先に"バーラ"の城塞都市がある。
"バーラ"の城塞都市には、セイランド王国の諸侯の軍勢約10万人が集結する予定だ。
王国軍の斥候の話では、魔族軍約30万人が"バーラ"の城塞都市に向かっているらしい。
思い出してほしい。"ココ"の街を守る戦いでは、2000人の兵士で籠城戦を行う予定だった。だが、実際に戦った兵士はたった1000人だった。残りの1000人は行軍中に敵の攻撃に遭い戦闘に間に合わなかったのだ。
つまり、今回もその可能性が十分にあるのだ。
おそらく、この行軍もどこかで戦闘が始まり"バーラ"の城塞都市の戦闘には間に合わなくなるだろう。
その時、俺達は敵の攻撃を黙って見ているのか。
それともここで皆と戦い部隊の移動を優先するのか。
いや、もうひとつある。
俺達だけが先行するのだ。
風魔法"フライ"で"バーラ"の城塞都市に向かって飛ぶ。
おそらく、この2000の兵士が"バーラ"の城塞都市に到着しても30万の敵に対しては焼石に水だろう。
なら俺達だけでも先行して、魔族軍に"隕石の雨"を降らす方がこの戦いに"負けない"ためには一番良いのでないか。
この戦いは兵士の数が違いすぎて"勝つ"ことは絶対ありえない。"負けない"算段が必要だ。
たぶん、王国軍で"負けない"算段は誰もできないだろう。
この戦いには"勇者"と複数の"Sクラス冒険者"が参戦すると聞いている。
しかし、王国軍が"勇者"と"Sクラス冒険者"に"おんぶにだっこ"したところで30万の敵に敵うどおりはないのだ。
俺は、この行軍に参加している冒険者ギルドのギルド長が乗っている馬車へお邪魔した。
ギルド長へ俺の考えを伝えた。
「榊君の好きにしていいよ。そもそも王国軍の作戦に榊君は戦力として入っていないからね。少しでも敵の数を削れるだけでも王国軍のメリットになるよ。」
「ただ、ひとつだけお願いがある。"バーラ"の城塞都市に先行する時は、私を一緒に連れて行って欲しい。」
「君達だけで先行しても敵と間違われるのが関の山だよ。私は、小さい街のギルド長だが、それなりに顔を知られているからね。」
「少しは役にたつと思うよ。それに、現役は退いたけど私も元Aクラス冒険者だ。自分の身を守る以上の働きはできるさ。」
くーう。何だかんだ言ってやっぱりギルド長だけのことはある。言うことが違うね。泣けてくるよ。かっこいいよあんた。
この部隊の行軍が止まった時点でギルド長を迎えにくる。そして、そのまま風魔法"フライ"で"バーラ"の城塞都市に向かうことを約束した。
夜遅くに峠の手前にある山間の村外れに到着した。
野営の準備をして今夜はここで寝ることになった。
"探査"と唱えて周囲の探索する。
あ、いるいる。魔獣が山の上で多数待ち構えている。
そのことは、王国軍も把握しているので、深夜といえども部隊の守りは厳重だった。
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