81 / 169
12.仲間が誘拐されました
07.転移門が現れました。
しおりを挟むなぜか王都の中央通りに門があった。
中央通りの道の真ん中に門だけが立っていた。
王都の城壁には当然ながら門は存在する。
ただ、通りには門などなかった。さっきまでは。
通りに面した商店の店主や店員、通りを歩く通行人は、こんなところに門など無かったはずなのに
気が付いたら門が存在していたので不思議に思った。
意識しないと存在していることに気が付かないということがある。
しかし、通りの真ん中に門だけがあるというのはいささか無理がある。
通行人が門に触れた。
何の変哲もない門だった。扉は閉まっていた。
門の反対側に回ってみる。扉は無かった。
通行人に呼ばれた数人の兵士が駆けつけた。
通りに門を設置したなどという話は、聞いていなかった。
少しの時間が経ち、王国の魔術師が到着した。
魔導士は門を見るなり驚愕した。
「…転移門だ。」
「国王様に連絡だ。転移門だ。兵士達よ、直ぐに他の兵士を呼んでこい。」
「この街を封鎖せよ。誰か分からぬが転移門が現れたということは、この王都に攻め込もうとしている者がいる。」
「何をぐずぐずしている。早くしろ。」
魔術師は、伝令の兵士に直ぐに動くように伝えた。
中央通りに突然現れた門の前には、数百人の兵士が長槍と盾を構え、数百人の兵士が弓を構えた。
門が開かぬように鎖や縄で何十にも封が施された。
さらに門の前には、建築用の大石が運ばれ門の戸が開かないように配置された。
「おい、王都にいる兵士はたったこれだけか。」
「ここにいる兵士は500人もいないではないか。」
「今、国王様の命令で王都の守備隊の殆どが城壁の外にいます。」
よりにもよってこんな時に兵士の殆どが城壁の外にいるとは。
「今すぐ城壁の外にいる兵士達を呼び戻せ。」
「しかし、国王陛下のご命令で城壁の外にいるのです。」
「そんなことは分かっている。王国魔術師長である私が言っているのだ。守備隊の指揮官に伝令を出して全部隊をこの門の周辺に配置するように伝えろ。今すぐにだ。行け。」
事の重大さに魔術師は動揺した。
この門が意味するところを理解している者は皆無だった。
魔術師が指示を出さなければ、この先にどんな結果が待っているか想像に容易かった。
「この一帯の住民の避難は済んだか。」
「それが、手間取っております。家財道具を移動させようと急に馬車が増えて道がごった返しています。」
「ええい、家財道具と己の命とどっちが大事なのかも分からぬか。」
「家財道具の移動は禁止だ。」
「住民の避難が最優先だ。」
魔術師は、この転移門が何を意味するのか理解していない兵士に向かって住民の避難を最優先するように伝えた。
王国魔術師数十人が門の前に居並び呪文を唱え始めた。
封印の魔法だ。
王国魔術師でも転移門を見たことがある者は数人しかいない。
まして、封印の魔法で転移門が"開かれる"ことを防ぐことができるのかも不明だった。
しかし、今できることはそれくらいだった。
魔術師は、王国軍の部隊長にこの門が何であるかを説明し、この先に起こるであろう惨劇について自身の考えを示した。
部隊長は額から汗を流していた。
王都でそんな事が起きたら、この王都は崩壊してしまう。いや、この国が崩壊してしまう。
城外にいる国王軍の司令官へ事の重大さを伝え、早急に城内に戻るように伝令を送ったが、なかなか伝令が帰ってこない。
あせる心を落ち着かせ、部隊長は深呼吸をした。
目の前にある門。転移門がいつ開くのか戦々恐々の眼差しで見ていた。
「どうだ。他にはあったか。」
「はい。ここ以外に2箇所ありました。」
「ですが、ひとつは門が半分ほど地面に埋まってました。」
「もうひとつは、城壁に半分のめり込んでいました。」
「両方とも門を開くことは敵わないでしょう。」
部下の兵士が部隊長へ報告を上げてきた。
転移門は何もひとつとは限らない。
もし、転移門を送ってきた相手が大部隊を送るつもりでいるならば、複数の転移門を用意しなければ門の狭さから門を通る者たちが滞ってしまい、結果戦力の大量投入ができなくなるのだ。
「わかった。各門に見張りを数名はり付けておけ。何か動きがあったら直ぐに知らせろ。」
部隊長は、少し安堵した。
これで転移門はひとつに絞られた。
この門から出て来るであろう敵にのみ集中していれば、恐れることはない。
既に伝令が事の重大さを城外の国王軍の司令官に伝えているはずである。
城外にいる王国軍さえ駆けつけてくれれば、十分対応可能であると部隊長はたかをくくっていた。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる