80 / 169
12.仲間が誘拐されました
06.王都へ迎えに行きます。(その2)
しおりを挟む俺達は、王国軍の兵士が隊列を組んでいる丘の手間で"風神"と"雷神"の雲から降り立った。
皆で街道を歩き王都へと向かう。
丘の上に王国軍5000人の隊列が見える。
騎士が騎乗した馬がこちらに向かって走ってくる。
「お前たちが"ココ"の街から来た冒険者か。」
「間もなく国王の使者が到着する。それまでここで待たれよ。」
馬に騎乗した騎士の一見紳士的な態度に安堵するが、考えてみれば仲間を誘拐されたのは俺達の方だ。
いちいち騎士の指示に従う必要もないのだ。
「悪いが国王が送ってきた使者とやらに仲間が2人誘拐された。」
「先ほどここを通った馬車で王都に連れていかれた。」
「騎士は、国王が誘拐を行ったことを許容するのか。返答やいかに!」
騎士は、国王がそのような事をするはずがないと驚愕するばかりだ。
「待たれよ。使者が到着するまでもう少し待って欲しい。これ以上進まれると敬らを捕らえなくてならないのだ。」
狼狽する騎士に向かって残念な顔を向ける。
「騎士さんも仕事でやっていることは理解している。だが、例え国王でも善悪の判断はできるはずだ。」
「誘拐は、"善"か"悪"か。返答やいかに!」
騎士は、何も言えず俺達へ道を譲った。
「アレス。"阿行"と"吽行"を召喚してくれ。」
「"阿行"と"吽行"には、俺達の護衛として行動してもらう。戦闘はなるべく避けたい。」
アレスは、頷き"阿行"と"吽行"を召喚した。
体長4mを越える筋肉の塊。
オーガおも一撃で葬る究極の肉体を前に隊列を組んだ兵士は誰も動かない。
"阿行"と"吽行"が一歩一歩進むたびに地面が揺れる。
振える兵士も少数ではない。
"バーラ"の城塞都市の防衛戦で"阿行"と"吽行"が万に達する魔族軍の魔獣を葬った話は、兵士達の中では公然の秘密なのだ。
それが兵士の前を公然と歩いている。
兵士の唾を飲み込む音があちこちから聞こえてくる。
兵士の中には、口から泡を吹いて倒れるものも少なくなかった。
「またれよ。」
ひとりの騎士が、騎乗していた馬から降りて俺達へと歩み寄ってきた。
「人違いなら許せ。わしは、"コナ"の城塞近くの国境の川でバルデ皇国の魔法攻撃に撃たれて死にかけたことがある。そこで冒険者らしき青年に"短剣"を代償に助けられたことがあっての。」
「あれは、お主ではないか。」
あー。あった。確かにあった。
「あの時の騎士隊の隊長さんですか。」
「やはりお主か。お主に渡した短剣を持ってから悪いことばかり起きての。」
「結局あのザマだ。お主にあの短剣を渡してから体調もよくなり、こうやって騎士隊の隊長にも復帰できた。」
こんなところで初めて女神様から依頼された武具の回収を行った時に、回収する武具を所持していた騎士隊の隊長に出くわすとは。
さて、この出会いは"吉"と出るか"凶"と出るか。
「我々は、国王に仇名す冒険者から王都を守るように命じられた。」
「しかし、こちらの御仁は"バーラ"の城塞都市を魔族軍から守った英雄のはず。」
「なぜ、そのような御仁が国王に仇名すと誹りを受けるのか理解できぬのでな。」
俺は、多少のウソを交えて"バーラ"の城塞都市での出来事を話した。
公爵は、無謀な作戦を実行して3万近い兵士を無駄死にさせたこと。
本来、その責任は自身が負うはずのものだが、自身の責任を全く理解せず全ての責任を俺達に押し付けようとしたこと。
心労がたたって倒れたことを俺の仲間のせいにして国王が仲間を誘拐したこと。
公爵も国王も国の長として何ひとつ正しい行いができないのであれば、それを正すのも臣民の務めと嘘くさい言葉を並べて騎士隊の隊長の心を揺さぶった。
騎士隊の隊長は、考え込んでいた。
世の中、正しいことが全てではない。それは子供でも分かる。
間違った事でも正しいと言い張る場合の方が多いかもしれない。
さあ、あんたはどう判断する。騎士隊の隊長さん。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる