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14.魔王を討伐します
09.教会の行く末。(その3)
しおりを挟むミリアーナとエリカは、教会に戻り住民の治療に当たることにした。
まだ、城下には多数の魔獣が俳諧してる。
俺達から離れると危険だと警告したが、神官である以上ケガ人の治療をしたいというので了承した。
レディを護衛に付けた。
レディは、"隕石の女王"という武具(神器)で隕石を降らす召喚魔法が使える。
この魔法は、草原などで大群を相手にする場合は、実に都合のよい召喚魔法なのだが、王都城下のように人や建物が密集した場所で使うと巻き沿いが多数出るので使いどころが難しい魔法なのだ。
ただ、今は出せる人がいない状況なので、レディに2人の護衛をお願いした。
ちなみにレディは、剣技Lv4を持っており俺よりもはるかに剣の腕前は上だ。
2人が教会に到着すると、行き場を失った数百人の住民が礼拝堂で女神様に祈りをささげていた。
数十人の兵士と神官兵が教会の入り口を守っていた。
ただ、この兵の数ではオーガ1体でも戦力不足だ。
神官兵に教会の門を開けてもらい敷地内に入る。
そこには、魔獣の攻撃を受けて死亡した数百人の住民が横たわっていた。
さらに先に進むと神官と神官兵の亡骸が数十体ほど横たわっていた。
つい最近まで一緒に教会で生活を共にしていた神官や神官見習いの姿があった。
目から涙が出そうだったが堪えた。
亡骸の側にいって泣きたかったが堪えた。
教会の礼拝堂には、多数の住民が助けを求めて、救いを求めて集まっているのだ。
その人達の前で神官が泣き崩れる姿など見せられない。
両手の拳を握り閉めて涙を我慢した。
門の外から魔獣が門の扉を叩き壊そうとする音がした。
庭先にある高い塔の上から兵士が魔獣に矢を放つが、殆どダメージを与えることができなかった。
兵士は、門の扉を壊されまいと必死に扉を押さえていた。
扉は、持ってあと数分というところだろうか。
すると空から閃光と爆音が鳴り響いた。
その音は、教会の門の前の道に向かって真っすぐ向かって落ちた。
物凄い爆音と砂塵が舞った。
兵士達は、門と塀の内側にいるので事なきを得たが、道にはかなりの大きさの穴が開いていた。
そこには、数体の魔獣の死体が黒焦げになって転がっていた。
まだ穴からは煙が上っていたが、そこをゴージャスなドレスを着飾った女性がひとり歩いてくる。
"コンコン"。
「ここを開けてください。」
兵士が門を恐る恐る扉を開けると、ゴージャスなドレスを着飾った女性がひとり立っていた。
ミリアーナとエリカがレディの姿を見てビックリしていた。
「レディさんどうしてここに来たんですか。転移門は大丈夫なんですか。榊さんは…。」
「主様がミリアーナさんとエリカさんを守るようにと。」
2人は嬉しくなった。
正直、2人で教会に行っても魔獣に出くわしたら命はないと思っていたからだ。
兵士に案内されてレディは塔の上に移動した。
ここらなら道を進む魔獣が見える。
レディの隕石召喚の魔法は、発動から地面へ隕石が着弾するまでにタイムラグがあるのだ。
早めに魔法を発動して予想した着弾地点に誘導する必要があるため、高い位置から周りを見渡せる方が都合が良いのだ。
ミリアーナとエリカは、レディに礼を言うと礼拝堂に入りケガ人の治療に専念した。
たまに外から爆音と衝撃波が来るが、レディが放つ魔法によるものなので返って安心できた。
不安がる住民へも問題ないと伝えて安心させた。
やがて、辺りは暗くなり門を守る兵士達も、治療にあたる神官達も疲労困憊となった。
食料や水は、少しの蓄えがあったが、それはあくまで神官や神官兵のためのもので、教会に避難している数百人の住民に行き渡るほどの量ではなかった。
神官達が集まって食料と水の確保をどうするか頭を悩ませている時だった。
榊とクリスが教会にやってきたのだ。
皆、クリスの顔を見た途端、教会の壁に飾られている"女神アルティナ様"の肖像画とを見比べて、教会にいる全員が土下座を初めてしまった。
拝み、泣き、すがりつく者さえいた。
皆には、クリスは"女神アルティナ様"ではないと言ったが、場が場なだけに誰も信じてはくれなかった。
仕方なくクリスを礼拝堂の正面に座らせた。
皆、クリスを"女神アルティナ様"として祈りの歌を歌い奏でることで心の不安から解放されたようだった。
俺は、ミリアーナとエリカに避難している住民の食事について確認した。
やはり食料の確保ができずに困っていたようだ。
アイテムバックから転移石を取り出して、"ココ"の街の自宅に戻りレストランのシェフ達に王都での出来事を説明した。
皆、喜んで手伝ってくれるというので大鍋に野菜スープを作り、大量のパンを焼いて住民に振る舞うことにした。
調理は"ココ"の街の俺のレストラン。できたものからアイテムバックに入れて転移石で教会に運んだ。
住民には、大鍋の野菜スープ(肉も入っているよ)と大量の焼きたてパンを振る舞った。
皆、喜んで食べていた。
子供には、シュークリームを配った。子供の顔から不安が消え笑顔が戻っていた。
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