98 / 169
14.魔王を討伐します
10.教会の行く末。(その4)
しおりを挟む俺は、ある提案を手紙に書いて回収の腕輪に送った。
間もなくして手紙の返事が届いた。
「はい、よろこんで。」
とだけ記されていた。
その頃には、街や兵士の救護所に向かって助かった神官や神官兵が教会に戻ってきた。
皆、ボロボロだった。
既にMPが底をついてしまい自身のケガさえも治療することが困難なものばかりだった。
神官が交代でケガをした神官や神官兵の治療にあたった。
教会の奥の部屋で交代で食事をとることにした。
メニューは、先ほど避難していた住民に出した野菜スープと焼きたてパン。それと少し小さいがオムライスを出した。
全て"ココ"の街のレストランのシェフ達が作ってくれたものだ。
彼らには感謝しないとな。
席に座るときに中央の1席だけ開けてもらった。
料理を配り終えて、女神様への祈りを行う時になり、目の前にいつもの光景がお目見えした。
"女神アルティナ様"が中央の席に座っていた。
誰もその存在に気が付くものはいない。
"女神アルティナ様"がそうしているのだ。
誰も気付かないので、俺が"女神アルティナ様"に声をかけた。
「"女神アルティナ様"、本日はご慈悲を賜り、皆の前にご降臨いただき誠に感謝の言葉もありません。」
俺が話す相手を見て、皆が初めて"女神アルティナ様"の存在を認識した。
皆が一斉に椅子から立ち上がり床にひれ伏した。
「神官、神官見習いならびに神官兵のみなさん。苦難の日を迎えて大変困難な状況の中、皆さんが尽くしてくれたおかげで多くの住民が救われました。心からの感謝を捧げたいと思います。」
誰も頭を上げなかった。
ミリアーナとエリカが"女神アルティナ様"の前へ移り、片膝を付き頭を垂れて礼を述べた。
「"女神アルティナ様"、このような場所へご降臨いただきまことに感謝の言葉もありません。本日は、多数の住民と神官が命を落としましたが、それもまた運命です。」
「こうして生き残った者は、死んだ者達への祈りを捧げ、生きる者達への明日への糧となるよう精一杯努力する所存です。」
「本日は、このような場所にご降臨いただき誠にありがとうございました。」
「さあ、皆さん。本物の"女神アルティナ様"が目の前にいらしゃっいます。」
「一緒に食事ができることなどおそらく人生に一度あるかどうかです。」
「存分に楽しんでください。」
床に土下座をしていた神官や神官塀が恐る恐る席に戻り食事を始めた。
"女神アルティナ様"は、にこやかな表情で神官達との会話を楽しんでいた。
「榊さんお話があります。」
ミリアーナとエリカが真面目な顔で話しかけてきた。
「私は、教会の司教様の命令で榊さんを懐柔して教会に連れてくるようにと言われていました。」
「私は、ミリアーナ様が命令を反故にしないか監視と見知った情報を教会へ伝える役を仰せ使っていました。」
「しかし、榊さんのところへ"女神アルティナ様"が度々ご降臨されて、そこでの会話から今の教会の行いに疑問を持ってしまいました。」
「そして今日の出来事です。」
「本来なら現場の指揮を行う神官長様も司祭様も早々に逃げてしまいました。」
「この教会は誰のための教会なのか分からなくなりました。」
「私は、今をもって司祭様からの命令を反故にすることにしました。」
「そして、教会を立て直すために全身全霊を持って邁進する所存です。」
ミリアーナとエリカは、教会の立て直しをすることにしたようだ。
「ちなみに、ミリアーナとエリカが教会からの命令で俺達のチーム入ったのは始めから知っていたよ。」
「しかも懐柔させるために"女の武器"を使ってもよいという話も知ってた。」
その事を聞かされてミリアーナは、顔を真っ赤にしていた。
「いやー。ミリアーナさんがいつ俺のベットに来てくれるのかと待っていたのに一向に来ないので辛抱するのが大変だったんだから。」
するとミリアーナさんから俺の頬にビンタが飛んできた。
「全て知っていたんですね。悩んで悩んで大変な思いをしていたのに。榊さん大嫌いです。」
ミリアーナさんは、怒って礼拝堂に行ってしまった。
まあ、別れにはこれくらいが丁度いいかな。
「エリカさん。これから教会の再建が大変だと思いますが、ミリアーナさんを助けてあげてください。」
「了解です。リーダー。」
そう言うと、エリカは俺の唇に唇を重ねてきた。
エリカは、少し赤くなった顔でウィンクをして礼拝堂に行ってしまったミリアーナを追っていった。
さて、転移門を守っているベティとアレスと交代するか。
クリスを伴って転移門に向かった。
王都城下は、壊れた家、焼けた家が無数に立ち並んでいたが、夜の星々はそんなことなどお構いなしに綺麗に瞬いていた。
0
あなたにおすすめの小説
妻からの手紙~18年の後悔を添えて~
Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。
妻が死んで18年目の今日。
息子の誕生日。
「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」
息子は…17年前に死んだ。
手紙はもう一通あった。
俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。
------------------------------
【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます
腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった!
私が死ぬまでには完結させます。
追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。
追記2:ひとまず完結しました!
私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。
MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません
きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」
「正直なところ、不安を感じている」
久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー
激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。
アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。
第2幕、連載開始しました!
お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。
以下、1章のあらすじです。
アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。
表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。
常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。
それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。
サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。
しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。
盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。
アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?
神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします
夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。
アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。
いわゆる"神々の愛し子"というもの。
神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。
そういうことだ。
そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。
簡単でしょう?
えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか??
−−−−−−
新連載始まりました。
私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。
会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。
余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。
会話がわからない!となるよりは・・
試みですね。
誤字・脱字・文章修正 随時行います。
短編タグが長編に変更になることがございます。
*タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。
タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。
渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。
しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。
「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」
※※※
虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。
※重複投稿作品※
表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる