誰にでもできる簡単なお仕事です。

純粋どくだみ茶

文字の大きさ
115 / 169
17.水神様と女神様

02.水神様との出会い。(その2)

しおりを挟む
そうだ、こういうときは糖分でもとって無い知恵を絞り出すとしよう。
そう思ってアイテムバックから"シュークリーム"を取り出した。

「あー、なんか美味そうなものを食おうとしておるな、それをよこすのじゃ。」

女の子が両手をバタバタして俺が手に持ったシュークリームを取ろうとしていた。
ケガの功名、シュークリームに食いつた。

「お嬢ちゃん、シュークリームが欲しければ、まずは、その禍々しいオーラを引っ込めてくれないか。」

「おぬしには、このオーラが見えるか、やはり女神アルティナが言っていたとおりじゃな。」

女の子は、体から発する禍々しいオーラを引っ込めようとはしなかった。
仕方なく、俺は手に持っていたシュークリームをひとくち食べた。

「あー、シュークリームとやらを食いよった、それはわしのじゃ。よこすのじゃ。」

えらくシュークリームにご執心のようだ。

「じゃあ、まず名前を教えて。」

とりあえず、俺の膝の上に座る女の子の名前を聞くことにした。

「わしは、この街にある神殿で水神をやっておる水龍じゃ。」

「えー。」

思わず全員で叫んてしまった。

「うるさいぞ、食堂で騒ぐでない。ほれ、頭に角もあるじゃろう。龍神になると頭に角が生えるのじゃ。」

水神様におこられてしまった。

「ほれ、よい角じゃろう。触ってみるか。」

俺は、水神様に言われるがまま角を触ってみた。

「あっ。あん。」

水神様は、子供のくせにいきなりエロい声を出した。

「バカ者。角に触るでない。いきなり龍神の角に触りおって。お主は、わしに求婚でもするつもりか。」

龍神様に怒られてしまった。なんでも、龍神の角に触るというのは、求婚する時に行う行為らしい。

「水龍様って、洞窟の神殿にいるんじゃないんですか。」

さっきの観光ツアーのガイドさんの話では、水神様は神殿にいると言っていたのでサティが疑問に思った。

「神殿の中はつまらん、だからたまにこうやって人化して遊ぶのじゃ。」

「あー、またシュークリームとやらを食べよった、わしによこすのじゃ。」

「さっき"わしの土地"と言っていましたが、あれはどういうことでしょうか。」

さっきまで水神様がベティに真顔で睨み付けていたので、どういうことなのか聞いてみると。

「そうじゃ、ここは水龍であるわしの縄張りなのじゃ、そこに他の龍が入りこむとはどういう了見じゃ、しかもそれが火龍であれば、なおさらじゃ。」

「それは失礼しました。まず彼女ですが、呪いによって人化が解けないのです。殆ど人とかわりません。」

ベティが呪いで人化している事を伝えてみたが。

「そんなことは見れば分かる。わしの目は節穴ではないぞ。」

なんだ、知ってたのね。

「それでもじゃ、わしの縄張りに入るのであれば、挨拶に神殿に来るくるのが筋であろう。土産は忘れるでないぞ。」

おっ、これはうまく場を収められそうだ。俺はそう思いながら水神様を少しからかってみることにした。

「知らぬこととはいえ、失礼しました。」

「では、こういたしましょう。」

「ここに、シュークリームの詰め合わせがあります。これを挨拶と土産のかわりとしたいのですがいかがせしょう。」

アイテムバックからユークリーム12個が入った折詰を取り出して、水神様の目の前に置いてみた。

「ふん、そんなことではごまかされんぞ。」

水神様は、そっぽを向いたが目はシュークリームを見ているようだ。
やった、かかったぞ、もうひと押しだ。
俺は、シュークリームが入った折詰からシュークリームひとつ取り出して食べようとした。

「わーん、またシュークリームを取られた。」

「水神様、どうします?」

「…分かった、そのシュークリームの詰め合わせとやらで手をうつのじゃ。」

シュークリームの入った折詰を水神様に渡すと、折詰からシュークリームを取り出してそそくさと食べ始めた。

「うまい、うまいのじゃ。」

水神様は、シュークリームを気に入ってくれたようだ。
俺は、湯飲みにお茶をつぎ足して、水神様の前にさっと出した。

「水神様、お茶ですよ。誰もシュークリームを取ったりっしませんから、ゆっくり食べてください。」

「おお、おぬし、気が効くな。よいやつじゃ。」

水神様の口の周りはクリームだらけだ。

「他にははないのか。」

3個目のシュークリームを食べ終えた水神様は、次なる食べ物を要求してきた。
これは、攻めどころか。

「これから女神ラティア様の神殿に行くんですが、女神アルティナ様にたのまれてこの和菓子を献上する予定なんです。」

そう言って、アイテムバックから、草餅と道明寺が入った折詰を出して、わざと折詰を開けて中身を見せた。

「それも美味そうじゃ、わしによこすのじゃ。」

「だめです、これは女神ラティア様へ献上するものです。」

「むー、頑固者め。」

「分かったのじゃ、交換におぬしらがここへ来た目的である武具をいくつかやろう、それでどうじゃ。」

「なぜ、それをご存じなのですか。」

「女神アルティナから話はきいておる。おぬしは、美味い甘味を作るのが得意だと聞いておったので、食べてみたかったのじゃ。」

「なんだ、ただの食いしん坊か。」

「食いしん坊いうな!」

俺は、草餅と道明寺の入った折詰を水龍様の前に差し出した。

「では、交渉成立じゃな。」

水神様は、女神ラティア様に献上するはずだった折詰の中から道明寺を取り出して食べ始めた。
こんどは、口の周りが餡子だらけだ。

「水神様、お茶をどうぞ。」

「やはり、おぬしは気が利くな、ますます好きになったのじゃ。」

どうも水神様は、女神アルティナ様から俺たちが来ることを知らされていたようだ。
それで、女神アルティナ様から自慢された甘味を食べてみたくて、小芝居をうったようだ。
肝を冷やして損をしてしまった。
しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

処理中です...