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純粋どくだみ茶

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18.火龍の神殿

35.火龍の怒り。(その3)

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トロンヘイム王国の部隊が混乱をきたしている時、空に異変が起きた。
ふたつの国境に面した川の上空を飛竜が飛んできたのだ。それも50体以上。

「なんで飛竜があんなに飛んでいるんだ…撤退、撤退しろ、城に戻れ。飛竜の襲撃だ。」

トロンヘイム王国の部隊から叫び声がこだました。
上空を飛ぶ飛竜から何かが投げ落とされた。

それは大きな石の塊だった。
飛竜は足で掴んだ大きな石を、トロンヘイム王国の兵士の頭上に落とし始めたのだ。

トロンヘイム王国の兵士は空から落ちて来る大きな石に直撃されて次々と倒れていった。
その場にいた魔術師が魔法で飛竜を攻撃したが、全くと言っていいほど当たらなかった。
トロンヘイム王国の兵士達は四方八方へと逃げていった。



「あー、ベティかな。神殿の遠くに飛竜の巣があると言っていたけど、そいつらを配下にしたと笑って話していたっけ、あれがそうなのか、すごいな。」

さらに遠くから何かが崩れていく音がした。
音がする方向を目を凝らして見ると、トロンヘイム王国の城が煙を上げて崩れていた。

そこには、茶色い龍が城の城壁の上で踊っていた。

「あれってベティが龍化して城を襲っているのか。でも火龍って赤い色してるんじゃなかったか。あれは茶色に見えるぞ。どうなってるんだ。」

皆もなんでしょうという顔をしながら城が倒壊していく様子をただ見ていた。



火龍(ベティ)は、エルネス王国とトロンヘイム王国の城の近くを飛んでいた。
火龍(ベティ)のすぐ後ろには50体の飛竜も飛んでいた。飛竜の足元には大きな石が捕まれていた。

「皆、面倒な事に巻き込んですまんのじゃ。」

「何をおっしゃいますか。火龍様が助けを申し出てくれたのです。それに協力できるとあれば、我も鼻が高こうございます。」

「そうか、ではではすまぬが手筈通りの攻撃を行ったら程々のところで後は山へ戻ってくれ。」

「承知致しました。」

火龍(ベティ)と飛竜は分かれて飛んだ。火龍(ベティ)は、国境からすぐのところにある丘の上のトロンヘイム王国の城に向かった。

飛竜達は、国境川近くに集まる兵士達の上空へと向かった。
飛竜達は、急降下を始めるとあっという間に地面が近くなっていた。
もうすぐ地面というところで足で掴んでいた大きな石の塊を離して空へと舞い上がった。

大きな石は、次々とトロンヘイム王国の兵士達の頭上に落ちていき、次々と兵士が倒れていった。
魔術師が放ったであろう炎の塊が空に向かって飛んで来たが、飛竜の飛ぶ速度が早すぎて炎の塊は全く当たらなかった。

トロンヘイム王国の兵士達は四方八方へと逃げていった。
それを上空から見ていた飛竜達は、しばらくして空高く舞い上がりどこへともなく飛んでいってしまった。



火龍(ベティ)は、国境からすぐのところにある丘の上のトロンヘイム王国の城の城壁の上に速度を落とさずに着地した。いや語弊があった。城壁に激突したのだ。
火龍(ベティ)が激突した城壁は、粉々になり崩れて見る影もなかった。

火龍(ベティ)の本来の体の色は赤だが、さっきまで体の色は茶色だった。城壁が壊れた拍子に舞い上がった粉塵で今度は、茶色と白色のまだら模様になっていた。

火龍(ベティ)は、崩れた城壁からまだ崩れていない城壁の上へとのぼった。
ところが火龍(ベティ)が城壁の上にのぼるたびに城壁がガタガタと音を立てて崩れていった。

「なんと脆い城じゃ。これは愉快じゃ。」

火龍(ベティ)は、龍の羽をばたつかせながら城壁の上を歩いた。歩きながら両手を振っていた。
端から見るとまるで踊りながら城壁を壊して歩いているようだった。

火龍(ベティ)が城壁を一周すると、そこには崩れて瓦礫の山となった城壁跡と立派な城門だけが残っていた。

「あの城門は立派じゃ。あれは残しておいてやろう。さて、最後にあの城の塔の上でひと声雄たけびをあげて終わりにするかの。」
そういうと火龍(ベティ)は、飛び上がって城の塔へと舞い降りた。

メキメキメキ。

火龍(ベティ)が城の塔の上に降り立った瞬間、塔は火龍(ベティ)の重さに耐えきれなくなり悲鳴を上げ始めて白い煙を噴き上げながら倒壊していった。

火龍(ベティ)は、倒壊する城の塔の上に乗ったまま一緒に崩れていった。

「なんじゃ、なんなのじゃ。」

倒壊した城の塔は、瓦礫の山となってベティの上に覆いかぶさっていた。

「ぺっぺっ。うー、口の中が塵だらけじゃ。気持ち悪いのじゃ。」

火龍(ベティ)が気が付くと城の塔が倒れた勢いで他の城の建物も倒壊していた。

もうこの城で残っていた建物は、壊さずに残しておいた城門だけだった。

火龍(ベティ)は、最後は威勢よく雄たけびを上げて逃げる予定だったが、城が全て崩れてしまったので、そのまま黙って飛んで逃げることにした。

火龍(ベティ)の体は、いつの間に城が崩れた時に飛びちった瓦礫が巻き上げた粉塵で白く
なっていた。
火龍(ベティ)は、空高く舞い上がりながら城跡の瓦礫の山を見ていた。

「城とはあんなに脆いのか。なら、次の城もそうなら面白いのじゃ。」

火龍(ベティ)は、不吉な言葉を残して空高く舞い上がって飛んで行った。




俺達は、諜報部の人と、守備隊の守備隊の隊長と、派遣されて来た部隊の部隊長さん達と城壁の上で事の成り行きを見守っていた。

「あー、トロンヘイム王国の城、完全に倒壊してしまいましたね。龍が乗っかるだけで城って崩れるんですね。脆いですね。あれじゃ戦争に使えませんねえ。笑いがこみ上げてきます。」

エルネス王国の国境には、レディがさっき築城した堅牢な城だけが残った。

「この要塞、本当に使っていいのですか。」

「ええ、自由に使っていただいて構いませんよ。この要塞なら王都の城より堅牢かもしれません。一度、王様に視察にでも来てもらってください。もし、褒美をくれるというなら、火龍神殿にでもあげてください。では、我々は、火龍神殿に戻ります。」

俺達は、アレスの"風神"と"雷神"の雲に乗って火龍神殿へと向かった。



火龍神殿に戻ると、ローザが真っ赤な顔をして俺に勢いよく話始めた。
でも、ダークエルフの顔が真っ赤ってある意味すごい。

「榊殿、トロンヘイム王国の城が無残にも崩壊していたが、あれはなんのだ。」

「ああ。あれはベティが龍化して城に突入したら城が全て崩壊したというわけだ。」

「ベッ、ベティ殿はこの神殿の主だと思ったが。本当に火龍なのか。」

「ベティは、俺が神器の呪いで人化させてしまった火龍なんだ。最近"龍神"に昇華したから今は火龍というより"龍の神"と言った方がいいかもな。」

話を聞いているローザの顔がより赤くなっていくのが俺でもはっきりとわかった。

「凄い、凄すぎる、冒険者チームに"龍神"がいるなど聞いたことがない。しかもだ、あの様な巨大な城塞を目の前であっという間に築城することが簡単にできるとは。」

ローザは、空を見上げながら目から涙を流していた。

「あれだけの力があれば、国を攻め落とすなど造作もないのではないか。」

「あー、その件ね。でも国を攻め落とした後の事を考えると面倒なんだよね。だから魔族国とは停戦協定を結ぶことにしたんだ。その方が国政とか面倒な事をやらなくて済むよね。」

俺は、少し嘘を織り交ぜて適当に盛った話をしてみた。

「それに、クリス殿、ガーネ殿、アレス殿、レディ殿は神器だと聞いたが。」

「そうだね、彼女たちは、神器が人化した者達だから人族のスキルと比べると世界が違いすぎるんだ。」

「そうか、そうなのか。今回は、私の出番はなかったが、ぜひ、ぜひ次回も呼んでくれ。私の出番が無くても構わない。城が崩壊するところが見られるだけでいい。彼女たちが闘うところを見せてもらえるだけでもいい。ひひひっ。」

あー、ローザが涙を流しながら笑ってる。ローザが壊れたのか。城ひとつが崩壊するところなんて見せたから頭がいってしまったのか、へんな物見せたかな。
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