誰にでもできる簡単なお仕事です。

純粋どくだみ茶

文字の大きさ
160 / 169
18.火龍の神殿

40.魔族と悪魔の働き先。(その1)

しおりを挟む
※お話の展開上、今後「家族になった人族のポムと魔族のポムの物語」とお話が重なります。ご了承ください。

俺は、クリスとベティを連れて珍しく王都の城に来ていた。

少し"コネ"を使って現国務大臣のリーガル伯爵に面会してあるお願いをするためだ。



「お久しぶりです国務大臣。お忙しいところお時間を頂いて申訳ありません。」

俺達は、伯爵様の執務室に通されて美人の秘書さんから出されたお茶を飲み始めた。
ベティはさっさとお菓子を食べ初めたが、美味しかったようでご満悦だ。

「いやいや、何の役職もない貴族のわしが国務大臣などやらせてもらっているのは、全て榊殿のおかげだからな。会いたいと言われたら仕事を蹴っても来ましすよ。」

リーガル伯爵に今日はお願いが…あれ、伯爵の隣りに立っている秘書の女性、どこかで見た記憶があるが思い出せない。かなりの美人だ。はて、どこで合ったのやら。

「おや榊殿、彼女の顔を覚えているがどこで合ったか思い出せないって顔だね。」

「わしと榊殿が出会うきっかけを作ったのが彼女の傭兵団じゃよ。」

「あー、思い出しました。伯爵の馬車を襲っていたあの。」




伯爵は、その後の話をしてくれた。

伯爵の馬車を襲った傭兵団の幹部だったのがこの彼女だ。
その時、この彼女を捕まえたのがクリスだった。

捕まった傭兵団の彼女は、伯爵家に連れていかれて仲間を殺された騎士達の"慰み者"になるはずだった。

ところが、剣の腕が立つというので、試しに伯爵家の騎士隊第3位の剣の腕前を持つ2番隊の副隊長と真剣で戦うことになり、彼女は騎士を見事に打ち負かしてしまった。

その後、伯爵家の騎士隊の第2位の腕前を持つ1番体の副隊長とも真剣で戦い、これも打ち負かしてしまった。

流石に騎士隊で第1位の腕を持つ騎士隊隊長には勝てなかったが、その腕前を高く評価され"慰み者"にするには惜しので、騎士隊で使いたいと隊長から懇願されたそうだ。

その後、事務処理にも長けている事がわかり秘書兼護衛として伯爵の元にいるとのこと。

「こやつ、最初は言うことを聞かなかったのしゃがな、いつかお前を倒したクリスと再戦できるやもしれんと言ったら急に態度を改めよった。」

「じゃがクリス殿と闘いたいのであれば、まずわしの騎士隊の隊長を倒さなければ、再戦は認めんと言ってあるんじゃよ。」

伯爵が座るソファの横に立っている美人秘書さんは、見た目は冷静を装っているがクリスを見る目の色が違った。今にも飛び掛かろうとする魔獣そのもの目だった。

無理もない、彼女は、傭兵団の団長と恋中にあったのだ、その団長を殺したのは外ならぬクリスだ。

「彼女は、こうやってわしの秘書をやっておるが朝と夜の剣の鍛錬は欠かしたことがない。まだ再戦の夢は諦めていないようだ。」



「そうですか、あれからクリスも腕を磨いています。いつかクリスと再戦できる日を楽しみにしています。」

俺は、この女性秘書を殺さずに生かしておいたクリスには、先見の明というか何か未来が見えていて、それを見据えて行動しているのかと思えてならない。

お茶を飲みながら公爵様と雑談をしていると、今日は何の用事があってこんなところに来たのか要件を忘れるところだった。

「そうでした、お茶が美味しかったのでつい要件を忘れるところでした。今日ここに来たのはあるお願いがあったのです。」

「実は、王立魔術院の魔術師と講師に推薦したい者がおります。」

「ふたりの実力は折り紙付きです。といいますか講師に推薦したい者は、この王国にはぜひとも必要な人材です。彼がいれば魔族国は、どんな理由があってもこの国と金輪際、戦争をしません。それくらい強力な人材です。」

「おおっ、そんな凄い人材を見つけて来たのか。榊殿が一番良く知っていると思うが、この国は、魔族国との戦争で殆どの魔術師を失ってしまったのでな。どんなに国内を探しても、そんな都合の良い人材などそう簡単には見つからんのだ。」

「榊殿が連れて来られた森の奥深に住むというエルフの魔術師達は、本当によい人材だった。」

俺達が武具の回収で向かった森の奥にエルフが住む村があったのだが、同じ森に住むオーガ族と対立関係にあり数百年の間、殆どのエルフが森から出ることはなかったのだ。

いろいろあって、オーガ族とエルフ族の対立関係に終止符を打つ事ができ、エルフ族から見分を広めるために魔術師として働き先を紹介して欲しいと言われて王立魔術院を紹介した経緯があったのだ。

「ありがとうございます。私もそれを聞いて安心しました。」

「それでですね、まず魔術師ですが人族ではありません。それどころか魔族の女の子です。」

「なんと、敵国の者とな。」

いきなり紹介する者が敵国の魔族と聞いて伯爵様もビックリしていた。

「はい、私のレストランで食材を買い付けている村があるのですが、そこの村に住んでいる少年と一緒に住んでいます。人族でいうと16歳くらいでしょうか。」

俺は、伯爵様に魔族の少女の素性を説明した。

おそらく魔族国が"ココ"の街を攻めた時に魔族国の魔術師として闘いに参加していた。
俺達が魔術で魔族国の軍勢に対して広域殲滅魔法を使った事で魔族国の軍隊の殆どが全滅。
その闘いで生き残ったはいいが、頭にケガをして以前の記憶がなく、草原で倒れているところを村の少年に助けされて一緒に生活をしていると。

「いつも食材の配達には、少年とその女の子が来ているのですが、その道すがら出没する魔獣を魔法で退治しているそうです。」

「先日、その魔法の腕前を見せてもらいましたが、人族の魔術師に比べても腕前は負けていません。それどころか、魔族としても"魔力"量は桁外れです。

ただ、歳がまだ若く経験がないので、それを魔術院で補っていけば、この周辺の国でもトップクラスの魔術師になれると思います。」

「ほう、榊殿がそこまで言うのだから相当な腕前なんじゃろう。分かった検討しよう。」



「それと先ほどのお話にあった講師に推薦したいという者ですが、かなりの曲者です。はっきり言うと普通なら絶対に我々の側につく事など未来永劫ありえない人物です。」

伯爵様は俺の話に食い入るように聞いていた。伯爵様の隣りで立ちながら話を聞いている秘書さんも興味津々といった顔つきだ。

「その者は、さっきお話した食材の配達をしている少年の従者をしています。どうして彼が少年の従者をしているのか理由は不明ですが、その少年の従者をしている者とは"悪魔"です。」

伯爵の顔つきが途端にかわった。悪魔と言われてそれを真に受ける人など普通はいない。

「…。まってくれ、それはあの聖典とかに出てくる悪魔か。」

「はい。伯爵様もお話を聞いた事があるとお思いますが、わが国を攻めた魔族国が300年前にある悪魔に襲われて国が崩壊寸前にまでなった話です。それを行ったのがその"悪魔"です。」

「話によると、悪魔に蹂躙された3つの魔族国の魔術師達が血眼になって悪魔を封印の魔術でロバにしたらしいのですが、そのロバが300年間あちこちの国をさまよっていたようです。」

「その封印を解いたのがその少年らしいのです。その後、少年は悪魔を従者にすることに成功したらしく、今は先ほどお話した少年と魔族の女の子と悪魔が一緒に同じ屋根の下で生活しているのです。」

「…まってくれ、まってくれ。わしはお伽噺を聞いておるのか。にわかには信じられん話だ。」

しおりを挟む
感想 13

あなたにおすすめの小説

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

【完結】使えない令嬢として一家から追放されたけど、あまりにも領民からの信頼が厚かったので逆転してざまぁしちゃいます

腕押のれん
ファンタジー
アメリスはマハス公国の八大領主の一つであるロナデシア家の三姉妹の次女として生まれるが、頭脳明晰な長女と愛想の上手い三女と比較されて母親から疎まれており、ついに追放されてしまう。しかしアメリスは取り柄のない自分にもできることをしなければならないという一心で領民たちに対し援助を熱心に行っていたので、領民からは非常に好かれていた。そのため追放された後に他国に置き去りにされてしまうものの、偶然以前助けたマハス公国出身のヨーデルと出会い助けられる。ここから彼女の逆転人生が始まっていくのであった! 私が死ぬまでには完結させます。 追記:最後まで書き終わったので、ここからはペース上げて投稿します。 追記2:ひとまず完結しました!

私が王子との結婚式の日に、妹に毒を盛られ、公衆の面前で辱められた。でも今、私は時を戻し、運命を変えに来た。

MayonakaTsuki
恋愛
王子との結婚式の日、私は最も信頼していた人物――自分の妹――に裏切られた。毒を盛られ、公開の場で辱められ、未来の王に拒絶され、私の人生は血と侮辱の中でそこで終わったかのように思えた。しかし、死が私を迎えたとき、不可能なことが起きた――私は同じ回廊で、祭壇の前で目を覚まし、あらゆる涙、嘘、そして一撃の記憶をそのまま覚えていた。今、二度目のチャンスを得た私は、ただ一つの使命を持つ――真実を突き止め、奪われたものを取り戻し、私を破滅させた者たちにその代償を払わせる。もはや、何も以前のままではない。何も許されない。

うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました

akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」 帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。 謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。 しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。 勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!? 転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。 ※9月16日  タイトル変更致しました。 前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。 仲間を強くして無双していく話です。 『小説家になろう』様でも公開しています。

【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました

いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。 子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。 「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」 冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。 しかし、マリエールには秘密があった。 ――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。 未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。 「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。 物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立! 数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。 さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。 一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて―― 「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」 これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、 ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー! ※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。

王女の中身は元自衛官だったので、継母に追放されたけど思い通りになりません

きぬがやあきら
恋愛
「妻はお妃様一人とお約束されたそうですが、今でもまだ同じことが言えますか?」 「正直なところ、不安を感じている」 久方ぶりに招かれた故郷、セレンティア城の月光満ちる庭園で、アシュレイは信じ難い光景を目撃するーー 激闘の末、王座に就いたアルダシールと結ばれた、元セレンティア王国の王女アシュレイ。 アラウァリア国では、新政権を勝ち取ったアシュレイを国母と崇めてくれる国民も多い。だが、結婚から2年、未だ後継ぎに恵まれないアルダシールに側室を推す声も上がり始める。そんな頃、弟シュナイゼルから結婚式の招待が舞い込んだ。 第2幕、連載開始しました! お気に入り登録してくださった皆様、ありがとうございます! 心より御礼申し上げます。 以下、1章のあらすじです。 アシュレイは前世の記憶を持つ、セレンティア王国の皇女だった。後ろ盾もなく、継母である王妃に体よく追い出されてしまう。 表向きは外交の駒として、アラウァリア王国へ嫁ぐ形だが、国王は御年50歳で既に18人もの妃を持っている。 常に不遇の扱いを受けて、我慢の限界だったアシュレイは、大胆な計画を企てた。 それは輿入れの道中を、自ら雇った盗賊に襲撃させるもの。 サバイバルの知識もあるし、宝飾品を処分して生き抜けば、残りの人生を自由に謳歌できると踏んでいた。 しかし、輿入れ当日アシュレイを攫い出したのは、アラウァリアの第一王子・アルダシール。 盗賊団と共謀し、晴れて自由の身を望んでいたのに、アルダシールはアシュレイを手放してはくれず……。 アシュレイは自由と幸福を手に入れられるのか?

神々の愛し子って何したらいいの?とりあえずのんびり過ごします

夜明シスカ
ファンタジー
アリュールという世界の中にある一国。 アール国で国の端っこの海に面した田舎領地に神々の寵愛を受けし者として生を受けた子。 いわゆる"神々の愛し子"というもの。 神々の寵愛を受けているというからには、大事にしましょうね。 そういうことだ。 そう、大事にしていれば国も繁栄するだけ。 簡単でしょう? えぇ、なんなら周りも巻き込んでみーんな幸せになりませんか?? −−−−−− 新連載始まりました。 私としては初の挑戦になる内容のため、至らぬところもあると思いますが、温めで見守って下さいませ。 会話の「」前に人物の名称入れてみることにしました。 余計読みにくいかなぁ?と思いつつ。 会話がわからない!となるよりは・・ 試みですね。 誤字・脱字・文章修正 随時行います。 短編タグが長編に変更になることがございます。 *タイトルの「神々の寵愛者」→「神々の愛し子」に変更しました。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

処理中です...