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18.火龍の神殿
39.王様への贈り物。
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エルネス王国の国境にレディの土魔法で巨大な城壁と要塞を築城した。
それを視察した国王が度肝を抜かれてしまった。
何もしないと怖くて夜も眠れないというので、王は、要塞の築城のお礼に何を贈るればよいかを大臣達に決めるように丸投げした。
本来、神殿への贈答品選びに大臣が集まって会議を開くなど、異例中の異例なのだが、相手の心を害すると国が亡ぶと言われて、大臣達は、国政を決める時以上に真剣になっていたのだ。なんとも滑稽な話だ。
「神殿に送ると言ってもな、いったい何を送ればよいのだ。」
「ベティ殿は、女性なのだから装飾品などはどうだ。貴族の女性達もあれは喜ぶぞ。」
「いやいや、ベティ殿は、冒険者をやっているくらいだから装飾品はいかがなものかと。しかもベティ殿は、魔族国の軍勢に立ち向かう程の手練れだ。そんな者が装飾品なそ喜ぶと思うか。」
「ちなみに、お主は、この国が魔族国と戦争になったらどうする。」
「逃げるに決まっておる。この国の兵士の数では、全く相手にならぬからな。」
「ん。話がそれたな、女性が好みそうな装飾品はなしだな。」
大臣達は、考えて込んでしまった。
ある大臣がふと顔を上げ、冒険者という話を思い出して話を切り出した。
「ベティ殿は、冒険者だったな。なら、武具などはどうだろう。」
「まっ、待たれよ。それはだめだ。諜報部で調べたところ、ベティ殿が所有している武具に槍があるらしいのだが、それは"覇者の槍"といって持ち主が念ずると、12本の槍が空を舞って敵に突き刺さる"神器"なのだそうだ。どこに敵がいようが、あらゆる方向から念じた槍が飛んできて敵に突き刺さるらしい。」
「なんと。わが国にあれば、他国の脅威など気にならなくなりますな。」
「しかし、"神器"とは、神から送られた武具の事だと記憶しているが。」
「ああ、ベティ殿は、その"神器"で火龍神殿と水神様の神殿に押し入った"龍殺しの一族"を葬ったそうだ。」
「諜報部の話では、もしその武具が市場に出回ったら金貨1万枚でも買う者はいるとの話だ。」
「金貨1万枚!だめだ!そんな武具に匹敵するような代物は用意できん。」
大臣達は、また考えて込んでしまった。
他の大臣が腕を組んで思案を繰り返している時だった、ある大臣が思い出したように言った。
「セイランド王国の晩餐会で見たあの花瓶はどうだろう。あれはかなりの名品と聞いたが。」
「おお。あれか、あの青白い淡い光りを放つ花瓶か、あれは良い物だ。」
「じゃが、あれは材料がないとかで作っていないとも聞いたぞ。」
「あれは、国王様も欲しがっていたと思ったが。」
「では、少し品は落ちるが同じ釜で焼かれたという花文様が描かれた花瓶を特注で注文してみてはどうだろうか。いささか値は張るが先ほどの話にあった青白い淡い光りを放つ花瓶よりかは安いぞ。」
「あれなら神殿の礼拝堂に飾っても文句の言われぬ品だ。」
「それで決まりだ。」
「我が国もいくらか財政が上向きになったと言ってもまだまだだしな。国の借金が返せるのはいつになるやら。」
「愚痴を言ってもはじまらん。では、神殿にはそれを送るということで決まりだな。」
その時、大臣達が会議を行っている会議場にある品が運ばれてきた。
「これなんですが、火龍神殿から王様への贈り物だと言って送られてきまして。」
城の侍従長が部下と巨大な箱をふたつ運んできた。
その巨大な箱を開けた途端、大臣達は慌てふためいた。
「こっ、これはあの青白い淡い光りを放つ花瓶ではないか。そっ、それも我らの身長よりも大きいとはどういうことだ。」
「まさかこれが2つもあるのか。」
侍従長が部下がもうひとつの木箱を開けると、同じ巨大な花瓶が出てきた。
「とっ、とにかく王を呼んでまいれ。早くじゃ。」
王様は、侍従長から話を聞くと慌てふためいて会議場へと走って来た。
会議室には、自分の身長よりも巨大な、あの青白い淡い光りを放つ花瓶が目の前にある光景を見て信じられずにいた。
「わしは、セイランド王国の晩餐会でこの花瓶を見せられてなんとしても欲しいと思ったのだ。じゃがもう作っておらんと言っておったし、その値を聞かされて、この国の財政では無理だと悟ったのだ。」
「それがなぜここにあるのだ。しかもセイランド王国の晩餐会にあった物よりも遥かに巨大ではないか。」
王は、巨大な花瓶に頬ずりをしながらこの花瓶の送り先を大臣達に問いただした。
「その花瓶の送り主は、火龍神殿となっております。」
「まてまて、セイランド王国が所有しておる物より巨大な花瓶がなぜ火龍神殿から贈られて来るのだ。」
王が花瓶の送り主を聞いてありえぬと言いだしたのだ。
そこにあの人が現れた。走ってきたらしく息を切らせながらの登場だった。
「申訳ありません。王様、大臣方。今しがた諜報部から最新情報が届きました。」
そう、神殿の広場で榊に情報を伝えていたあの人だ。
「会議で火龍神殿に何を贈るかをお決めになっていたと伺っていましたが、まさか花瓶とか壺を送ろうなんて決まってないですよね。」
「良く分かったな。まさにセイランド王国で焼かれた花文様をあしらった花瓶を特注することに決まったのだ。」
「いけません。それだけはいけません。」
「なぜだ。なぜあの花瓶がいけないのだ。あれは良い品物だぞ。」
息を切らせながら諜報部の人は、諜報部が調べ上げた情報を話始めた。
「あの花瓶の作者は、榊殿の冒険者チームのレディという女性です。しかもその女性があの国境の要塞を土魔法で築城された方なのです。」
「…」
大臣も王様もお互いの顔を見合うだけで何も言葉が出なかった。
「もし、我々が火龍神殿にあの花瓶を送ったら、花瓶の作者に花瓶を送ったことと同じになります。それだけはおやめ下さい。」
「まて、ということはだ。この目の前にある花瓶と同じ作者が、あの要塞を築城したのか。」
「そうです。」
「…」
大臣達は、もう放心状態となっていたが、ひとりの大臣がひとこえ発した。
「神の御業だ。」
「この巨大な花瓶も、あの城塞も神の御業だ。」
「皆、すまぬが会議は最初からやり直しだ。」
大臣達は皆、ぐったりしながら会議場の席へと戻っていった。
しかし、王様だけはご満悦だった。他国の晩餐会に自慢するかのように置いてあった品だ。ひと目でほれ込んだ品だ。見るだけで手に入らないと思って夢にまで見た花瓶が目の前にあるのだ。
王様は、会議場の入り口に置かれた巨大な花瓶にいつまでも頬ずりをして楽しんでいた。
それを視察した国王が度肝を抜かれてしまった。
何もしないと怖くて夜も眠れないというので、王は、要塞の築城のお礼に何を贈るればよいかを大臣達に決めるように丸投げした。
本来、神殿への贈答品選びに大臣が集まって会議を開くなど、異例中の異例なのだが、相手の心を害すると国が亡ぶと言われて、大臣達は、国政を決める時以上に真剣になっていたのだ。なんとも滑稽な話だ。
「神殿に送ると言ってもな、いったい何を送ればよいのだ。」
「ベティ殿は、女性なのだから装飾品などはどうだ。貴族の女性達もあれは喜ぶぞ。」
「いやいや、ベティ殿は、冒険者をやっているくらいだから装飾品はいかがなものかと。しかもベティ殿は、魔族国の軍勢に立ち向かう程の手練れだ。そんな者が装飾品なそ喜ぶと思うか。」
「ちなみに、お主は、この国が魔族国と戦争になったらどうする。」
「逃げるに決まっておる。この国の兵士の数では、全く相手にならぬからな。」
「ん。話がそれたな、女性が好みそうな装飾品はなしだな。」
大臣達は、考えて込んでしまった。
ある大臣がふと顔を上げ、冒険者という話を思い出して話を切り出した。
「ベティ殿は、冒険者だったな。なら、武具などはどうだろう。」
「まっ、待たれよ。それはだめだ。諜報部で調べたところ、ベティ殿が所有している武具に槍があるらしいのだが、それは"覇者の槍"といって持ち主が念ずると、12本の槍が空を舞って敵に突き刺さる"神器"なのだそうだ。どこに敵がいようが、あらゆる方向から念じた槍が飛んできて敵に突き刺さるらしい。」
「なんと。わが国にあれば、他国の脅威など気にならなくなりますな。」
「しかし、"神器"とは、神から送られた武具の事だと記憶しているが。」
「ああ、ベティ殿は、その"神器"で火龍神殿と水神様の神殿に押し入った"龍殺しの一族"を葬ったそうだ。」
「諜報部の話では、もしその武具が市場に出回ったら金貨1万枚でも買う者はいるとの話だ。」
「金貨1万枚!だめだ!そんな武具に匹敵するような代物は用意できん。」
大臣達は、また考えて込んでしまった。
他の大臣が腕を組んで思案を繰り返している時だった、ある大臣が思い出したように言った。
「セイランド王国の晩餐会で見たあの花瓶はどうだろう。あれはかなりの名品と聞いたが。」
「おお。あれか、あの青白い淡い光りを放つ花瓶か、あれは良い物だ。」
「じゃが、あれは材料がないとかで作っていないとも聞いたぞ。」
「あれは、国王様も欲しがっていたと思ったが。」
「では、少し品は落ちるが同じ釜で焼かれたという花文様が描かれた花瓶を特注で注文してみてはどうだろうか。いささか値は張るが先ほどの話にあった青白い淡い光りを放つ花瓶よりかは安いぞ。」
「あれなら神殿の礼拝堂に飾っても文句の言われぬ品だ。」
「それで決まりだ。」
「我が国もいくらか財政が上向きになったと言ってもまだまだだしな。国の借金が返せるのはいつになるやら。」
「愚痴を言ってもはじまらん。では、神殿にはそれを送るということで決まりだな。」
その時、大臣達が会議を行っている会議場にある品が運ばれてきた。
「これなんですが、火龍神殿から王様への贈り物だと言って送られてきまして。」
城の侍従長が部下と巨大な箱をふたつ運んできた。
その巨大な箱を開けた途端、大臣達は慌てふためいた。
「こっ、これはあの青白い淡い光りを放つ花瓶ではないか。そっ、それも我らの身長よりも大きいとはどういうことだ。」
「まさかこれが2つもあるのか。」
侍従長が部下がもうひとつの木箱を開けると、同じ巨大な花瓶が出てきた。
「とっ、とにかく王を呼んでまいれ。早くじゃ。」
王様は、侍従長から話を聞くと慌てふためいて会議場へと走って来た。
会議室には、自分の身長よりも巨大な、あの青白い淡い光りを放つ花瓶が目の前にある光景を見て信じられずにいた。
「わしは、セイランド王国の晩餐会でこの花瓶を見せられてなんとしても欲しいと思ったのだ。じゃがもう作っておらんと言っておったし、その値を聞かされて、この国の財政では無理だと悟ったのだ。」
「それがなぜここにあるのだ。しかもセイランド王国の晩餐会にあった物よりも遥かに巨大ではないか。」
王は、巨大な花瓶に頬ずりをしながらこの花瓶の送り先を大臣達に問いただした。
「その花瓶の送り主は、火龍神殿となっております。」
「まてまて、セイランド王国が所有しておる物より巨大な花瓶がなぜ火龍神殿から贈られて来るのだ。」
王が花瓶の送り主を聞いてありえぬと言いだしたのだ。
そこにあの人が現れた。走ってきたらしく息を切らせながらの登場だった。
「申訳ありません。王様、大臣方。今しがた諜報部から最新情報が届きました。」
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「会議で火龍神殿に何を贈るかをお決めになっていたと伺っていましたが、まさか花瓶とか壺を送ろうなんて決まってないですよね。」
「良く分かったな。まさにセイランド王国で焼かれた花文様をあしらった花瓶を特注することに決まったのだ。」
「いけません。それだけはいけません。」
「なぜだ。なぜあの花瓶がいけないのだ。あれは良い品物だぞ。」
息を切らせながら諜報部の人は、諜報部が調べ上げた情報を話始めた。
「あの花瓶の作者は、榊殿の冒険者チームのレディという女性です。しかもその女性があの国境の要塞を土魔法で築城された方なのです。」
「…」
大臣も王様もお互いの顔を見合うだけで何も言葉が出なかった。
「もし、我々が火龍神殿にあの花瓶を送ったら、花瓶の作者に花瓶を送ったことと同じになります。それだけはおやめ下さい。」
「まて、ということはだ。この目の前にある花瓶と同じ作者が、あの要塞を築城したのか。」
「そうです。」
「…」
大臣達は、もう放心状態となっていたが、ひとりの大臣がひとこえ発した。
「神の御業だ。」
「この巨大な花瓶も、あの城塞も神の御業だ。」
「皆、すまぬが会議は最初からやり直しだ。」
大臣達は皆、ぐったりしながら会議場の席へと戻っていった。
しかし、王様だけはご満悦だった。他国の晩餐会に自慢するかのように置いてあった品だ。ひと目でほれ込んだ品だ。見るだけで手に入らないと思って夢にまで見た花瓶が目の前にあるのだ。
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