【完結】ゼジニアの白い揺籠

はち

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重なる想い*

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「アウファト」

 伺うような声とともに、ジェジーニアの張り詰めた先端が押し当てられる。溢れる蜜に濡れそぼる窄まりは、それだけで濡れた音を立てた。
 鼓動は先程から忙しなく騒ぐのに、その音色はどこか甘くアウファトの中に響く。
 ゆっくりと押し込まれる、ジェジーニアの逞しい怒張。隘路を押し拡げる熱に裂けた時のことを思い出したが、それはすぐに甘くかき消される。柔い肉筒となったそこは裂けることなく、甘く締め付けながらジェジーニアの逞しい昂りを飲み込んでいく。

「じじ」
「あう、繋がってる。わかる?」
「ん」

 ゆっくりと進み、ジェジーニアの異形の怒張は半分ほど埋まった。
 熱い、ジェジーニアの逞しい猛りが、腹の深い場所までとどいている。
 中を熱い質量に満たされ、頭の芯まで痺れるようだった。

「あうの中、あったかい」

 ジェジーニアの声は恍惚に染まっている。

「呼んで、俺を、呼んで」
「ジェジーニア」

 ゆったりと、アウファトの様子を伺いながらジェジーニアは腰を揺らす。
 ゆっくりと腰を引かれると、段差に中を引き摺り出されるみたいで勝手に声が零れる。
 行き当たりまで押し込まれると、熱く濡れた吐息が漏れ、唇が震えた。

「っ、ふ、ぅ」

 漏れる声を噛み殺すと、指先が諌めるように唇をなぞった。

「声、聞かせて」
「っ、こんな、声、聞きたくないだろ」

 かわいくもない男の声だ。そんなものをジェジーニアに聞かせるのは憚られて、アウファトは眉を寄せる。それでも、ジェジーニアは首を横に振る。

「そんなことない。あうの声、もっと聞きたい。気持ちいいあうの声、たくさん聞かせて」

 言い含めるような声とともに、ジェジーニアはわざと腰を揺すった。

「っあ」

 生まれる快感は、自然とアウファトの喉を震わせた。

「かわいい、アウファト、俺の花嫁」
「ふあ、じじ」

 甘やかな声と中を擦られる快感に、腹の中が、歓喜にうねる。
 それはアウファトの中にジェジーニアの猛りのかたちをはっきりと浮かび上がらせた。

「ジジ、腹が、きもちいい」
「おれも。あうの中、あったかい」

 柔らかな花の絨毯の上。
 ジェジーニアの甘やかな声を浴び、アウファトは胎の中へと快感を刷り込まれる。
 ゆったりとジェジーニアが腰を揺すり、目覚めた花嫁の胎へとそのかたちを教えていく。
 気持ちがいい。ジェジーニアと自分のかたちが、溶け合うように合わさる。
 アウファトは優しく揺られ、甘やかに、啜り泣くように声を漏らした。

「アウファト」

 繋がった場所から響く、耳を覆いたくなるような水音すら愛おしい。ジェジーニアに与えられるもの全てが、アウファトに悦びをもたらした。

 奥の窄まったところを捏ねられると、アウファトは堪らず声を上げた。

「っあ、じじ」
「大丈夫だよ、あう」

 芽生えた恐怖心も、ジェジーニアはその大きな手と甘やかな声でたちまち摘み取ってしまう。

「ぜんぶ、委ねて」

 魔法のように、その声はアウファトから強張りを取り去っていく。後に残るのは、期待に染まって緩んだ身体だ。

「アウファト」
「あ、んぅ」

 優しく、挨拶をするように奥を叩かれて、アウファトは声を震わせた。
 これからここをこじ開けるとでも言いたげに、ジェジーニアの張り詰めた先端はひくつく襞を優しく叩き、捏ね回す。もう何度も陥落した奥の窄まりは、教えられた快感を思い出し、ねだるようにしゃぶりつく。
 尖った歯に耳朶を甘く噛まれ、身体が緩んだ。
 緩んだそこへと、ジェジーニアの猛りが容赦無く突き入れられた。
 逞しいものが根元まで収まり、拡がった蕾をジェジーニアの下生えがくすぐる。

「っは、あ……!」

 アウファトは喉を逸らした。
 視界がぶれ、ぼやけて、眦を濡らす熱いものに、涙が溢れたのだと知る。
 臍の辺りが熱く濡れた。
 息ができなくて、口を開いても空気を吸うことができない。大きく胸を喘がせ、口を動かして、なんとか少しばかり空気を得ることができた。
 全身を駆け巡るのは、痺れに似た快感だ。頭の芯まで震えるような甘いものが、アウファトの意識を冒していく。
 腹の奥には、はらわたを押し上げられるような圧迫感がある。ジェジーニアの質量が、奥深くまで入り込んで、熱く濡れた臍の下がうっすらと歪に膨らんでいる。

「な、に」
「あう、ここまで入ったよ」
「は、え」

 ジェジーニアの指先が撫でるそこに、確かにジェジーニアのものがある。
 途端に中を意識してしまい、アウファトはきつくジェジーニアを締め上げていた。

「ッ、アウファト」

 ジェジーニアが堪えるように形の良い眉を寄せた。
 ジェジーニアの動きは、優しく、腹の中を捏ねる。

「っは、ア、ジジ……なか、きもちい」

 言葉は、勝手に口をついて出る。
 溢れる悦びのやり場がわからなくて、アウファトは縋るようにジェジーニアを見上げる。
 アウファトの空色の視線を受け止めて、ジェジーニアは笑う。

 ジェジーニアが、アウファトに覆い被さる。繋がる場所はより密着して、ジェジーニアがまた深くまで入り込んだ。
  ジェジーニアの下へ閉じ込められたアウファトのすぐ目の前には、自分を愛おしげに見下ろすつがいがいる。

「アウファト、俺のたまご、産んで」
「ひゃ」

 ゆったりと腰を揺らしながら、ジェジーニアはアウファトへと甘やかな言葉を贈る。
 耳元に直に吹き込まれる甘く低い声に、アウファトの身体が跳ねる。
 たまご。
 それがなんなのか、アウファトにはわからない。自分がそんなものを産めるかどうかも知らない。
 応える間も無く灼けるような熱さの猛りに最奥を捏ねられて、アウファトは背をしならせた。

 ジェジーニアの動きは今までのアウファトの様子を伺うものから、より自分本位なものへと変わった。
 ジェジーニアは、アウファトその身体の下へと収め、何度も最奥を突き上げる。
 されるがままに揺すられるアウファトは、胎から生まれる快感に溶かされ、甘く啼くしかできなかった。
 アウファトの唇から漏れる声に、ジェジーニアは笑みを深める。
 余裕のない表情が柔く綻び、尖った歯が熱に染まった耳朶を優しく噛む。

「あ……!」

 それだけでアウファトの身体は跳ねた、
 身体中、ジェジーニアに触れられてどこもかしこも快感を生む。

「あう、出すよ」
「ん」

 アウファトはもうその意味を知っている。
 ジェジーニアに、腹の奥まで征服される。
 黒き竜王の精が、胎に注がれる。
 アウファトは訪れる頂を思ってジェジーニアへと腕を伸ばし、しがみつく。
 一際強く腰が打ち付けられ、中で、熱が爆ぜた。
 最奥に叩きつける奔流に、目覚めたつがいの身体は深い悦びに包まれる。
 柔い肉壁に打ち付ける熱い迸りを受け止める胎は、喜びにうねり、きつくジェジーニアを抱きしめ、ねだるように絡みつく。
 ジェジーニアの脈動がはっきりとわかる。
 吐精してもその硬さを失わないジェジーニアは、再び腰を揺する。ゆったりと回し、柔くしゃぶりつくような最奥を捏ね回す。

「あ、う」

 アウファトの身体が跳ねる。脚が勝手に跳ねて、いうことを聞かない。

「っあ、また」

 腹が熱く濡れる。透明な、粘度の少ないものが腹に散った。

「あう、もっと、もっとよくなって。おれとあうのたまご、ほしい」
「たま、ご?」

 ぼやけた頭で考えても、ジェジーニアの言うたまごが何のことなのかわからなかった。アウファトは人間で、男だ。卵を産むような身体ではない。
 そのはずなのに、ジェジーニアは疑う様子もない。

「おれとあうの気持ちが重なると、あうのおなかにたまごができる。そこにおれがたくさん精を注いだら、竜王が宿るんだ」
「あ……」

 ジェジーニアの手のひらが濡れた腹を撫でる。
 戸惑いを押し除けるのは、つがいの本能とでもいうべき悦びだった。

「あう、いい?」

 首を傾げられ、アウファトは頷く以外の答えを知らない。ジェジーニアが求めるなら、応えてやりたかった。

「ん、いいよ」

 アウファトが頷くと、ジェジーニアはとろけるような笑みを浮かべた。

「ふふ、うれしい。アウファト」

 アウファトの唇へ、啄むような口づけが落とされる。
 触れるだけの甘やかなそれに、アウファトは瞳を蕩かした。
 ジェジーニアの与える快感は、もうすっかりアウファトから躊躇いも戸惑いも取り払ってしまった。

「っ、あ」

 腹の奥で、あぶくなようなものがひとつ、生まれた。

「っあ、ジジ、何、か」

 アウファトは濡れた目で自分の腹を見た。そこに、何かある。おそるおそる震える指を這わせると、はらわたが収まっているはずの腹の中に、確かに柔らかくて丸いものを感じた。
 そこに、ジェジーニアが手のひらを重ねる。

「ふふ、あうの、たまごだ」

 ジェジーニアは笑う。甘く、慈愛に満ちた笑みだった。

「アウファト、俺とあうのたまごだよ」

 濡れた空の色の瞳から、涙が溢れた。
 つがいの身体を満たす悦びが溢れさせた涙だった。

 それから、アウファトは何度も揺られ、中に熱いものを放たれた。気が遠くなるくらいに何度も、ジェジーニアはアウファトの奥へと精を放った。
 水音、肌を打つ音、荒い呼吸。ジェジーニアの声。何もかもが愛おしい。
 荒々しく揺さぶられているのに、包み込むように触れる手のひらは優しく温かくて。アウファトは溢れる悦びに飲まれた。

 甘く清廉な香りに包まれ、ジェジーニアの熱を感じながら、アウファトは意識を手放した。
 それは、ひどく幸せだった。
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