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とろける琥珀と石油王
黒猫の家出*
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ギュスターヴのパーティーから戻ってから、ユーシーは特に体調を崩すこともなく過ごしていた。たまにギュスターヴと電話で話したりはするが、あのときのように具合が悪くなることもなかった。お姫様と揶揄われはするが、話すだけならユーシーにはなんの問題もなかった。
ルイの邸宅に住むようになって、すっかりルイとの生活にも慣れたユーシーだったが。
「なんでだよ! ルイのバカ! バーカ!」
ユーシーが珍しく声を荒げたのは、すっかり寒くなった冬の始まりのある朝だった。
原因は、ルイだった。
ギュスターヴのパーティーが終わってからというもの、ルイは仕事が忙しくなり、ユーシーに構ってくれることが減った。
ここひと月ほどは、毎日とまではいかないが家を空けることの方が多く、まともにセックスしたのは片手で数えるほどだ。
仕事が忙しいのはわかる。石油王ルーは多忙だ。あちこちに出かけることも多い。だけど今まで毎日のように構ってくれていたルイが触ってもくれないのは悲しかった。
昨夜はせっかくいい雰囲気になったのに、ルイは途中で寝てしまった。渋々寝たユーシーが起きると、もう隣にルイの姿はない。
仕事の邪魔をしたいわけではなかったが、このところのルイはベッドに入ってもすぐに寝てしまうし、出かけて帰ってこない日もあった。
顔を合わせればキスをして愛を囁いてはくれるが、ユーシーにはそれだけでは物足りなかった。
ルイの執務室を飛び出したユーシーはリビングのアダムのもとに向かった。
階段を駆け降りた先で、アダムは掃除をしていた。ユーシーの声を聞いていたのだろう。どこか心配そうな顔でユーシーを見る。
「アダム、ルイが構ってくれないんだけど、どうしたらいい?」
「仕事とはいえ、あなたをほったらかしにするのは感心できませんね。いなくなったらどうなるか、教えてやってもいいのでは?」
こんなとき、アダムの言葉は心強い。ユーシーより長くルイのそばにいるアダムは、きっとユーシーよりもずっとルイのことを知っている。
「どういうこと?」
「香港に、帰るんですよ」
「香港に?」
「たまには、家族に会うのもいいものですよ」
家族と言われて真っ先に浮かぶのはジンの姿だ。それもいいかもしれない。ジンの驚く顔が脳裏に浮かんでユーシーは頬を緩めた。
「そっか、そうだな、そうする」
「飛行機のチケットは買えますか?」
「ん、やったことないけど、空港でできる?」
「ええ。今からなら、上手くいけば昼頃の便に乗れますよ」
「行ってくる」
「ユーシー、念のため電話は忘れずに持っていってください。あとはパスポートとカードと現金があれば、なんとかなります」
アダムはユーシーのパスポートを出してくれた。
「ありがとう、アダム」
ユーシーは部屋に戻って支度をする。支度と言っても、リュックに財布と少しの着替えを入れるくらいだ。とても海外に向かうとは思えない軽装で、ユーシーは玄関に向かった。
「あなたのご家族にもよろしくお伝えください」
「ん、お土産買ってくるよ」
笑みを残して、ユーシーは家を飛び出した。初めての一人旅だ。ユーシーは通りに出ると近くの駅のタクシー乗り場を探した。
ユーシーの初めての一人旅の始まりだった。
空港では、スタッフに尋ねたらすぐだった。席も空きはあって、ユーシーは難なく香港行きの航空券を手にすることができた。
アダムとフランス語の勉強をしておいてよかったと思う。なんとか一人でも話せるようになっていたおかげで、ユーシーはスムーズに搭乗手続きを進められた。
そこから、直行便で約十二時間。ひとりきりの時間は、映画を見て眠っているうちに過ぎていった。
久しぶりに降り立った香港は、朝だった。
いつもなら眠っている時間だ。眠い目を擦って空港を出たユーシーは伸びをひとつして、タクシーに乗り込んだ。
行き先はジンの家だ。タクシーを降りて、通りを歩く。馴染みの通りは変わらない。辿り着いたジンのマンションも香港を出たあの頃から変わっていない。
呼び鈴を押すと、少ししてジンが出てきた。
「は、おまえ、なんで」
寝間着姿のジンはこんな時間にユーシーがやってくるなんて思っていなかったのだろう。いつもなら涼しげな目が驚きに見開かれている。
「家出してきた」
ユーシーの言葉にジンの盛大なため息が返ってくる。
「はぁ、おっさんも大変だな。ほら、入れよ」
おっさんというのはルイのことだろうか。
突然訪れたにもかかわらず、ジンは快くユーシーを招き入れてくれた。追い返されるかもと思っていたユーシーは拍子抜けしたが、ジンの顔を見られたのは嬉しかった。
玄関から廊下を抜けてリビングへと向かう。ユーシーはジンの後ろをついて歩いた。
「アダムが、よろしくって」
「アダム?」
「あー、ルイの家の執事」
「執事?」
ルイの家のことを知らないジンは首を傾げた。
「まあ、おっさんも石油王だもんな。執事くらいいるか」
ジンは一人で納得する。ユーシーはジンの頭の回転の速さに感謝した。
ジンに連れられてやってきたリビングは、相変わらずソファセットと観葉植物があるくらいの殺風景なものだったが、懐かしかった。
ジンが座ったソファの向かいにユーシーも座る。
「で、何があったんだ?」
ジンの涼しげな目がユーシーを映す。適当な理由で誤魔化されてはくれないジンの視線に、ユーシーは俯いて唇を尖らせた。
「ルイが、全然構ってくれねーから」
思い出すだけで胸が痛む。寂しさは胸に穴でも開いたみたいに冷たいものでユーシーの胸を埋めた。
「んで、飛び出してきたのか。おっさんも大変だな」
呆れ顔のジンは完全に人ごとだった。同情して欲しかったわけではなかったが、素っ気ないジンに、ユーシーは縋るような目を向ける。
「うちにいてもいいが、俺はそろそろ寝るぞ」
ジンはあくびをひとつして、立ち上がると寝室に向かう。ユーシーは特にやりたいこともなく、なんとなくジンについていく。ジンもそれを咎めない。
神経質なジンらしい整ったベッドに、ジンが横たわる。
ユーシーは背負っていたリュックと脱いだジャケットを放ると、ジンとともにベッドに上がった。
「ジン」
覆い被さるようにしてジンを見下ろすのは新鮮だった。
「人のもんに手は出さねーって言ったろ」
ユーシーの意図を理解しているジンの静かな声に、ユーシーの胸が痛む。そんなことわかってると言いたいのを堪えて言葉を飲み込んだ。
「俺が動けばいいだろ」
「は、人の身体使ってオナニーか?」
「そ、だよ」
「言うようになったじゃねーか」
ジンはそれ以上何も言わなかった。ユーシーはジンに跨り、邪魔な服を脱ぎ捨てる。
ジンがどこか眠そうな瞳でユーシーを見つめている。その目に宿る淡い欲情の色を、ユーシーはつぶさに拾い上げた。
「ジン」
熱くなった身体を擦り付ける。寝間着越しに感じるジンの温度が、ユーシーの熱を上げていく。
ユーシーは夢中でジンの身体から快感を得る。
「おいジン、電話忘れた」
不意打ちで飛んできた声に、ユーシーとジンは揃って声の主を見た。
「ん」
「あ」
「え」
三人それぞれが違う音を口にする。寝室の入り口にいたのはレイだった。
三人揃うのは久しぶりだった。
「久しぶりだな、ユーシー」
「レイさん?」
まさかレイがやってくるとは思わなかった。
レイも意外だったのだろうが、それほど顔には出ていない。ユーシーと目が合うと、レイは悪戯な笑みを浮かべる。
「電話、取りに来たんだよ」
レイの手にはスマートフォンが握られている。元々の用はそれだったのだろう。
「それより、楽しそうなことしてるじゃねぇか」
レイが言うのは、紛れもなくユーシーがジンに覆い被さっているこの状況だ。
レイはゆったりとした足取りでベッドのそばへやってきて、ユーシーの傍らに腰掛けた。
「ユーシー、前だけでいいのか?」
その言葉に含まれた意図に気が付かないほどユーシーも子どもではない。
「レイさん」
「どうした、あいつと喧嘩でもしたか?」
レイの甘い低音は、ユーシーから優しく本音を引き出していく。
「ルイが構ってくれなくて。おれ、誘ったのに、全然してくれないから」
思い出して、少し泣きそうだった。ルイに抱かれるのは好きだ。たくさん甘やかされて愛されて幸せな気持ちが身体に溢れる感覚は、代わりになるものなんてない。ちゃんとわかっている。ルイの仕事の邪魔をしないと決めたのも自分だ。だけど。
「じゃあ、うちに行くか、ユーシー」
レイの手がユーシーの絹のような髪を撫でる。
ユーシーは頷いた。甘やかしてくれるレイは好きだ。すでに熱を持った身体は、抱いてくれる相手を求めて喉を鳴らしている。
「……戦争になるぞ」
ジンのため息混じりのつぶやきは、レイとユーシーが戯れる衣擦れの音に容易く掻き消された。
久しぶりに訪れたレイの家は、相変わらず綺麗で生活感の薄い部屋だった。まだ数えられるほどしか来たことのない部屋だが、ユーシーの記憶にははっきりと残っている。レイがいつもよりじっくりと愛してくれる場所だ。
部屋に着くなりユーシーはレイと後孔の支度をした。レイはいつもではないが、たまに支度を一緒にしてくれる。シャワーを浴びて身を清めて、ユーシーは裸のまま寝室へと向かった。ふたりと入れ違いでジンがバスルームに向かう。
レイの寝室はカーテンが閉ざされ、もう外は随分明るいというのに薄暗い。ユーシーにはそれが心地好かった。
街の喧騒も届かない静かな部屋。ユーシーがベッドに寝そべると、隣にレイが寄り添う。
「ジンが来るまで、支度をしような」
「うん」
レイの腕がそっとユーシーを抱き寄せる。レイの胸に押し付けるように抱きしめられ、脚を拡げられた。はしたない格好をしているのに、羞恥を上回るのは期待だ。
支度をしたばかりの後孔にレイの指が触れた。
それだけでユーシーの蕾はひくつき、中に仕込まれた蜜で花弁を潤ませる。
レイの節張った指が二本、中に埋まっていく。その二本の指で、レイは優しくユーシーの身体を目覚めさせていく。解れた後孔はローションでねばつき、レイの指を簡単に飲み込んでしまった。
「痛くないか?」
「ん、へーき」
降ってくる甘い声に、ユーシーは頷く。レイの指は、ユーシーの中を探るように蠢いた。それだけで、ユーシーの熟れた粘膜は快感を拾い上げ、悦びひくついた。
「相変わらず、お前のここは欲しがりだな、ユーシー」
レイの楽しげな声に、ユーシーの肌は熱を上げる。
「ふふ、捕まえた」
探るように動くレイの指先がユーシーのしこりを捕まえた。
「ほら、たくさん出そうな」
「んう」
レイの指先は、しこりを押し込むように肉壁を撫でる。緩慢な動きは、ユーシーを緩やかに高みへと押し上げていく。
「ぅ、あ、れぇ、さ」
「ここだけでいけるだろう?」
「ん、ぅ」
絶えず湧き上がる快感は逃す場所がなくて、ユーシーはシーツに爪を立てた。腹がひくついて、腰が揺れる。
「んあ、れ、さ、あぁ」
腰が震え、ユーシーは白濁を吐き出した。一度では止まらず、二度、三度と白濁が腹から胸へと散る。
鼓動が騒ぐ。脱力したユーシーは吐精の余韻に浸り、荒い呼吸を繰り返した。
指では物足りなくて、ユーシーは物欲しげにレイを見上げる。
「まだ足りないだろう。ジンがきたら、奥までいじめてもらうといい」
言いながら、レイは指を引き抜いてしまう。
「レイさんは?」
ユーシーはその声に期待を滲ませる。指だけでは物足りなくて、早くレイの逞しい猛りに貫かれたかった。
「先にしていいのか?」
「ん、いい。いっぱい、して」
「いい子だ」
レイが目を細める。ユーシーが見上げた深い鳶色は、すでに欲情の色に染まっていた。それはユーシーの胸にも火をつけていく。
「レイさん、舐めていい?」
「ふふ。してくれるのか」
ユーシーは頷く。レイが身体を起こし胡座をかくと、ユーシーは重い身体を起こしてレイの下腹に顔を埋めた。
濡れた音を立てて、ユーシーはレイの屹立に口づけを落とした。
先端にできた先走りの雫を舐め取り、喉奥までレイのものを招き入れる。
そうしなければレイのものは収まらないし、レイも喜んでくれる。何より、征服される感じがたまらなく好きだった。
喉奥を引き攣らせながら、ユーシーは夢中でレイに奉仕をする。
沿わせた舌に、レイが跳ねるのを感じる。感じてくれている証に、ユーシーは嬉しくなった。
いやらしく音を立てて、ユーシーはレイのものを舐る。
「ユーシー、ジンが来た」
「ん」
レイの指が髪を梳いていく。レイのものに奉仕するのに夢中で、ユーシーは気が付かなかった。
ユーシーの喉から、猛りが引き抜かれる。ご奉仕の時間は終わりのようだった。
咳き込みながら顔を上げると、いつの間にかジンがシャワーを終えて寝室にやってきていた。その手には、水のボトルが見える。
ジンが仰向けに横たわったところへ、ユーシーは促され向かい合うようにジンに跨る。ユーシーの背後にはレイが陣取った。
ジンの下腹には、緩く芯を持った刀身がある。跨ったユーシーの昂りはぴったりとジンの猛りに寄り添うかたちになり、ユーシーの小ぶりな双丘にはレイの猛りが押し付けられた。
「入れるぞ、ユーシー」
「ん、う」
ユーシーは小さく頷く。
丸く張り詰めた先端が、ひくつく蕾をゆっくりとこじ開ける。レイが入ってくるときの圧迫感が好きだった。一番張り出した場所を飲み込んで、ゆっくりと隘路を押し拡げていくレイの猛りを、ユーシーの中は健気に締め上げる。
「ふふ、かわいそうに。ほったらかされて」
レイはユーシーの中をじっくり味わうようにゆったりと腰を引き、また押し込んでいく。段差が中を抉っていく感覚に、ユーシーは薄く開いた唇を震わせた。
中を満たされ擦られる感覚は、ユーシーを甘い充足感で満たしていった。ユーシーがずっと求めていたものだ。
前はジンと擦り合わせ、後ろからはレイが責め立てる。
「きもちい、レイ、さ、じん」
震える唇から漏れる声は自然ととろけた。前からも後ろからも絶えず与えられる快感は、ユーシーの考えまで溶かしていく。
レイとジンとするのは、こんなふうに考える余裕がなくなるから好きだった。頭の芯まで気持ちいいで埋められて、思考は白く弾け飛ぶ。後に残るのは、多幸感ばかりだ。
これからここを穿つのだと言わんばかりに、レイはユーシーの奥をいじめる。強かに窄まりを打たれて、ユーシーの奥は懐くようにレイに吸い付いた。
ユーシーにも奥が開きかけているのがわかる。
ユーシーは身体を起こしていられなくて、ジンの胸板に縋りつくように身体を預ける。そんなユーシーの頭を、ジンが撫でてくれた。
「ほら、奥、入らせてくれ」
レイは動きを緩めることはない。逞しい猛りは浅瀬から奥まで、余さず擦っていく。
前立腺を押し込まれ、奥を叩かれて。レイに揺さぶられ、腹に挟まれた昂りが擦れて快感が生まれる。
奥が緩んだ拍子に、レイの張り詰めた先端が最奥へと潜り込んだ。
ユーシーは声も上げることができず、喉を高く鳴らした。
腹が熱く濡れた。粘度の少ないものが勢いよく吐き出された。何か確かめる余裕はユーシーにはなかった。
レイは間髪入れずユーシーの奥の襞をいじめた。何度もレイの楔にこじ開けられ、襞を捲られて、その度にユーシーは潮を吹いた。
密着したユーシーとジンの腹はびしゃびしゃだった。
「また吹いた」
もはやジンの上で身体を震わせるばかりのユーシーは、返事などろくに返せなかった。
「ほらユーシー、水飲め」
ペットボトルの水を口に当てられる。ユーシーが喉を鳴らして飲むとジンがが頭を撫でてくれて、またレイが律動をはじめた。
「きもちい、レイさ、ぁ」
ユーシーの中は、快感に震えていた。身体をいっぱいに埋める快感はユーシーから自由を奪っていく。
「ふ、そんなに締められたら、すぐいきそうだ」
奥をゆったりと捏ねながら、レイがユーシーの肩にキスを落とす。
「ん、だして、れいさ、ぁ」
最奥まで捩じ込まれ、レイの猛りが脈打ちながら白濁を吐き出す。
熱いものが、何度も柔い最奥を打つ。
「ふふ、お前の中は欲しがりだな、ユーシー」
レイに言われたことに自覚はある。
気持ちいいのは好きだ。
でも、ルイとできたらよかったのに。
そんなことを思いながら、ユーシーは胸の痛みにまた蓋をして意識を手放した。
「ユーシー、お客さんだ」
優しいレイの声がユーシーを揺り起こした。
ユーシーがぼやけた頭のまま目を擦りながら身体を起こす。どれくらい時間が経ったのかわからないが、もう部屋は明かりが必要な暗さで、ベッドサイドには照明が輝いていた。
ユーシーの隣にはガウン姿のレイと、スーツ姿のジンがいて、ベッドのそばにはルイの姿があった。
ユーシーは散々楽しんでひと眠りした後だった。まだ寝起きでぼんやりしたまま目の前のルイを見る。ルイが着ているのはユーシーが家を飛び出した朝に見たのと同じ服だ。
「ユーシー!」
潤んだアイスブルーがユーシーを見つめる。居心地の悪さに、ユーシーは唇を尖らせた
「……なんだよ」
「ごめんね、ユーシー。帰ってきて」
ルイはユーシーの前になりふり構わず跪き、ユーシーの手を取った。
ユーシーの目には、垂れた耳と丸まった尻尾が見える気がした。
「どうした、ユーシー。謝ってるぞ」
ガウン姿のレイがユーシーの顔を覗き込む。
「もう、寂しい思いさせないから」
「次やったら、絶対帰らねー」
「うん」
どうやらルイも反省しているようだ。ユーシーもいつまでも臍を曲げているつもりはなかった。
「わかった。帰るよ」
「よし、めでたしめでたしだな」
ほっとした声はジンのものだ。
「なんだ、もう終わりか。いつでも帰ってきていいからな」
「ありがとう、レイさん、ジン」
こうして、ユーシーの短い逃避行が終わった。
ルイの邸宅に住むようになって、すっかりルイとの生活にも慣れたユーシーだったが。
「なんでだよ! ルイのバカ! バーカ!」
ユーシーが珍しく声を荒げたのは、すっかり寒くなった冬の始まりのある朝だった。
原因は、ルイだった。
ギュスターヴのパーティーが終わってからというもの、ルイは仕事が忙しくなり、ユーシーに構ってくれることが減った。
ここひと月ほどは、毎日とまではいかないが家を空けることの方が多く、まともにセックスしたのは片手で数えるほどだ。
仕事が忙しいのはわかる。石油王ルーは多忙だ。あちこちに出かけることも多い。だけど今まで毎日のように構ってくれていたルイが触ってもくれないのは悲しかった。
昨夜はせっかくいい雰囲気になったのに、ルイは途中で寝てしまった。渋々寝たユーシーが起きると、もう隣にルイの姿はない。
仕事の邪魔をしたいわけではなかったが、このところのルイはベッドに入ってもすぐに寝てしまうし、出かけて帰ってこない日もあった。
顔を合わせればキスをして愛を囁いてはくれるが、ユーシーにはそれだけでは物足りなかった。
ルイの執務室を飛び出したユーシーはリビングのアダムのもとに向かった。
階段を駆け降りた先で、アダムは掃除をしていた。ユーシーの声を聞いていたのだろう。どこか心配そうな顔でユーシーを見る。
「アダム、ルイが構ってくれないんだけど、どうしたらいい?」
「仕事とはいえ、あなたをほったらかしにするのは感心できませんね。いなくなったらどうなるか、教えてやってもいいのでは?」
こんなとき、アダムの言葉は心強い。ユーシーより長くルイのそばにいるアダムは、きっとユーシーよりもずっとルイのことを知っている。
「どういうこと?」
「香港に、帰るんですよ」
「香港に?」
「たまには、家族に会うのもいいものですよ」
家族と言われて真っ先に浮かぶのはジンの姿だ。それもいいかもしれない。ジンの驚く顔が脳裏に浮かんでユーシーは頬を緩めた。
「そっか、そうだな、そうする」
「飛行機のチケットは買えますか?」
「ん、やったことないけど、空港でできる?」
「ええ。今からなら、上手くいけば昼頃の便に乗れますよ」
「行ってくる」
「ユーシー、念のため電話は忘れずに持っていってください。あとはパスポートとカードと現金があれば、なんとかなります」
アダムはユーシーのパスポートを出してくれた。
「ありがとう、アダム」
ユーシーは部屋に戻って支度をする。支度と言っても、リュックに財布と少しの着替えを入れるくらいだ。とても海外に向かうとは思えない軽装で、ユーシーは玄関に向かった。
「あなたのご家族にもよろしくお伝えください」
「ん、お土産買ってくるよ」
笑みを残して、ユーシーは家を飛び出した。初めての一人旅だ。ユーシーは通りに出ると近くの駅のタクシー乗り場を探した。
ユーシーの初めての一人旅の始まりだった。
空港では、スタッフに尋ねたらすぐだった。席も空きはあって、ユーシーは難なく香港行きの航空券を手にすることができた。
アダムとフランス語の勉強をしておいてよかったと思う。なんとか一人でも話せるようになっていたおかげで、ユーシーはスムーズに搭乗手続きを進められた。
そこから、直行便で約十二時間。ひとりきりの時間は、映画を見て眠っているうちに過ぎていった。
久しぶりに降り立った香港は、朝だった。
いつもなら眠っている時間だ。眠い目を擦って空港を出たユーシーは伸びをひとつして、タクシーに乗り込んだ。
行き先はジンの家だ。タクシーを降りて、通りを歩く。馴染みの通りは変わらない。辿り着いたジンのマンションも香港を出たあの頃から変わっていない。
呼び鈴を押すと、少ししてジンが出てきた。
「は、おまえ、なんで」
寝間着姿のジンはこんな時間にユーシーがやってくるなんて思っていなかったのだろう。いつもなら涼しげな目が驚きに見開かれている。
「家出してきた」
ユーシーの言葉にジンの盛大なため息が返ってくる。
「はぁ、おっさんも大変だな。ほら、入れよ」
おっさんというのはルイのことだろうか。
突然訪れたにもかかわらず、ジンは快くユーシーを招き入れてくれた。追い返されるかもと思っていたユーシーは拍子抜けしたが、ジンの顔を見られたのは嬉しかった。
玄関から廊下を抜けてリビングへと向かう。ユーシーはジンの後ろをついて歩いた。
「アダムが、よろしくって」
「アダム?」
「あー、ルイの家の執事」
「執事?」
ルイの家のことを知らないジンは首を傾げた。
「まあ、おっさんも石油王だもんな。執事くらいいるか」
ジンは一人で納得する。ユーシーはジンの頭の回転の速さに感謝した。
ジンに連れられてやってきたリビングは、相変わらずソファセットと観葉植物があるくらいの殺風景なものだったが、懐かしかった。
ジンが座ったソファの向かいにユーシーも座る。
「で、何があったんだ?」
ジンの涼しげな目がユーシーを映す。適当な理由で誤魔化されてはくれないジンの視線に、ユーシーは俯いて唇を尖らせた。
「ルイが、全然構ってくれねーから」
思い出すだけで胸が痛む。寂しさは胸に穴でも開いたみたいに冷たいものでユーシーの胸を埋めた。
「んで、飛び出してきたのか。おっさんも大変だな」
呆れ顔のジンは完全に人ごとだった。同情して欲しかったわけではなかったが、素っ気ないジンに、ユーシーは縋るような目を向ける。
「うちにいてもいいが、俺はそろそろ寝るぞ」
ジンはあくびをひとつして、立ち上がると寝室に向かう。ユーシーは特にやりたいこともなく、なんとなくジンについていく。ジンもそれを咎めない。
神経質なジンらしい整ったベッドに、ジンが横たわる。
ユーシーは背負っていたリュックと脱いだジャケットを放ると、ジンとともにベッドに上がった。
「ジン」
覆い被さるようにしてジンを見下ろすのは新鮮だった。
「人のもんに手は出さねーって言ったろ」
ユーシーの意図を理解しているジンの静かな声に、ユーシーの胸が痛む。そんなことわかってると言いたいのを堪えて言葉を飲み込んだ。
「俺が動けばいいだろ」
「は、人の身体使ってオナニーか?」
「そ、だよ」
「言うようになったじゃねーか」
ジンはそれ以上何も言わなかった。ユーシーはジンに跨り、邪魔な服を脱ぎ捨てる。
ジンがどこか眠そうな瞳でユーシーを見つめている。その目に宿る淡い欲情の色を、ユーシーはつぶさに拾い上げた。
「ジン」
熱くなった身体を擦り付ける。寝間着越しに感じるジンの温度が、ユーシーの熱を上げていく。
ユーシーは夢中でジンの身体から快感を得る。
「おいジン、電話忘れた」
不意打ちで飛んできた声に、ユーシーとジンは揃って声の主を見た。
「ん」
「あ」
「え」
三人それぞれが違う音を口にする。寝室の入り口にいたのはレイだった。
三人揃うのは久しぶりだった。
「久しぶりだな、ユーシー」
「レイさん?」
まさかレイがやってくるとは思わなかった。
レイも意外だったのだろうが、それほど顔には出ていない。ユーシーと目が合うと、レイは悪戯な笑みを浮かべる。
「電話、取りに来たんだよ」
レイの手にはスマートフォンが握られている。元々の用はそれだったのだろう。
「それより、楽しそうなことしてるじゃねぇか」
レイが言うのは、紛れもなくユーシーがジンに覆い被さっているこの状況だ。
レイはゆったりとした足取りでベッドのそばへやってきて、ユーシーの傍らに腰掛けた。
「ユーシー、前だけでいいのか?」
その言葉に含まれた意図に気が付かないほどユーシーも子どもではない。
「レイさん」
「どうした、あいつと喧嘩でもしたか?」
レイの甘い低音は、ユーシーから優しく本音を引き出していく。
「ルイが構ってくれなくて。おれ、誘ったのに、全然してくれないから」
思い出して、少し泣きそうだった。ルイに抱かれるのは好きだ。たくさん甘やかされて愛されて幸せな気持ちが身体に溢れる感覚は、代わりになるものなんてない。ちゃんとわかっている。ルイの仕事の邪魔をしないと決めたのも自分だ。だけど。
「じゃあ、うちに行くか、ユーシー」
レイの手がユーシーの絹のような髪を撫でる。
ユーシーは頷いた。甘やかしてくれるレイは好きだ。すでに熱を持った身体は、抱いてくれる相手を求めて喉を鳴らしている。
「……戦争になるぞ」
ジンのため息混じりのつぶやきは、レイとユーシーが戯れる衣擦れの音に容易く掻き消された。
久しぶりに訪れたレイの家は、相変わらず綺麗で生活感の薄い部屋だった。まだ数えられるほどしか来たことのない部屋だが、ユーシーの記憶にははっきりと残っている。レイがいつもよりじっくりと愛してくれる場所だ。
部屋に着くなりユーシーはレイと後孔の支度をした。レイはいつもではないが、たまに支度を一緒にしてくれる。シャワーを浴びて身を清めて、ユーシーは裸のまま寝室へと向かった。ふたりと入れ違いでジンがバスルームに向かう。
レイの寝室はカーテンが閉ざされ、もう外は随分明るいというのに薄暗い。ユーシーにはそれが心地好かった。
街の喧騒も届かない静かな部屋。ユーシーがベッドに寝そべると、隣にレイが寄り添う。
「ジンが来るまで、支度をしような」
「うん」
レイの腕がそっとユーシーを抱き寄せる。レイの胸に押し付けるように抱きしめられ、脚を拡げられた。はしたない格好をしているのに、羞恥を上回るのは期待だ。
支度をしたばかりの後孔にレイの指が触れた。
それだけでユーシーの蕾はひくつき、中に仕込まれた蜜で花弁を潤ませる。
レイの節張った指が二本、中に埋まっていく。その二本の指で、レイは優しくユーシーの身体を目覚めさせていく。解れた後孔はローションでねばつき、レイの指を簡単に飲み込んでしまった。
「痛くないか?」
「ん、へーき」
降ってくる甘い声に、ユーシーは頷く。レイの指は、ユーシーの中を探るように蠢いた。それだけで、ユーシーの熟れた粘膜は快感を拾い上げ、悦びひくついた。
「相変わらず、お前のここは欲しがりだな、ユーシー」
レイの楽しげな声に、ユーシーの肌は熱を上げる。
「ふふ、捕まえた」
探るように動くレイの指先がユーシーのしこりを捕まえた。
「ほら、たくさん出そうな」
「んう」
レイの指先は、しこりを押し込むように肉壁を撫でる。緩慢な動きは、ユーシーを緩やかに高みへと押し上げていく。
「ぅ、あ、れぇ、さ」
「ここだけでいけるだろう?」
「ん、ぅ」
絶えず湧き上がる快感は逃す場所がなくて、ユーシーはシーツに爪を立てた。腹がひくついて、腰が揺れる。
「んあ、れ、さ、あぁ」
腰が震え、ユーシーは白濁を吐き出した。一度では止まらず、二度、三度と白濁が腹から胸へと散る。
鼓動が騒ぐ。脱力したユーシーは吐精の余韻に浸り、荒い呼吸を繰り返した。
指では物足りなくて、ユーシーは物欲しげにレイを見上げる。
「まだ足りないだろう。ジンがきたら、奥までいじめてもらうといい」
言いながら、レイは指を引き抜いてしまう。
「レイさんは?」
ユーシーはその声に期待を滲ませる。指だけでは物足りなくて、早くレイの逞しい猛りに貫かれたかった。
「先にしていいのか?」
「ん、いい。いっぱい、して」
「いい子だ」
レイが目を細める。ユーシーが見上げた深い鳶色は、すでに欲情の色に染まっていた。それはユーシーの胸にも火をつけていく。
「レイさん、舐めていい?」
「ふふ。してくれるのか」
ユーシーは頷く。レイが身体を起こし胡座をかくと、ユーシーは重い身体を起こしてレイの下腹に顔を埋めた。
濡れた音を立てて、ユーシーはレイの屹立に口づけを落とした。
先端にできた先走りの雫を舐め取り、喉奥までレイのものを招き入れる。
そうしなければレイのものは収まらないし、レイも喜んでくれる。何より、征服される感じがたまらなく好きだった。
喉奥を引き攣らせながら、ユーシーは夢中でレイに奉仕をする。
沿わせた舌に、レイが跳ねるのを感じる。感じてくれている証に、ユーシーは嬉しくなった。
いやらしく音を立てて、ユーシーはレイのものを舐る。
「ユーシー、ジンが来た」
「ん」
レイの指が髪を梳いていく。レイのものに奉仕するのに夢中で、ユーシーは気が付かなかった。
ユーシーの喉から、猛りが引き抜かれる。ご奉仕の時間は終わりのようだった。
咳き込みながら顔を上げると、いつの間にかジンがシャワーを終えて寝室にやってきていた。その手には、水のボトルが見える。
ジンが仰向けに横たわったところへ、ユーシーは促され向かい合うようにジンに跨る。ユーシーの背後にはレイが陣取った。
ジンの下腹には、緩く芯を持った刀身がある。跨ったユーシーの昂りはぴったりとジンの猛りに寄り添うかたちになり、ユーシーの小ぶりな双丘にはレイの猛りが押し付けられた。
「入れるぞ、ユーシー」
「ん、う」
ユーシーは小さく頷く。
丸く張り詰めた先端が、ひくつく蕾をゆっくりとこじ開ける。レイが入ってくるときの圧迫感が好きだった。一番張り出した場所を飲み込んで、ゆっくりと隘路を押し拡げていくレイの猛りを、ユーシーの中は健気に締め上げる。
「ふふ、かわいそうに。ほったらかされて」
レイはユーシーの中をじっくり味わうようにゆったりと腰を引き、また押し込んでいく。段差が中を抉っていく感覚に、ユーシーは薄く開いた唇を震わせた。
中を満たされ擦られる感覚は、ユーシーを甘い充足感で満たしていった。ユーシーがずっと求めていたものだ。
前はジンと擦り合わせ、後ろからはレイが責め立てる。
「きもちい、レイ、さ、じん」
震える唇から漏れる声は自然ととろけた。前からも後ろからも絶えず与えられる快感は、ユーシーの考えまで溶かしていく。
レイとジンとするのは、こんなふうに考える余裕がなくなるから好きだった。頭の芯まで気持ちいいで埋められて、思考は白く弾け飛ぶ。後に残るのは、多幸感ばかりだ。
これからここを穿つのだと言わんばかりに、レイはユーシーの奥をいじめる。強かに窄まりを打たれて、ユーシーの奥は懐くようにレイに吸い付いた。
ユーシーにも奥が開きかけているのがわかる。
ユーシーは身体を起こしていられなくて、ジンの胸板に縋りつくように身体を預ける。そんなユーシーの頭を、ジンが撫でてくれた。
「ほら、奥、入らせてくれ」
レイは動きを緩めることはない。逞しい猛りは浅瀬から奥まで、余さず擦っていく。
前立腺を押し込まれ、奥を叩かれて。レイに揺さぶられ、腹に挟まれた昂りが擦れて快感が生まれる。
奥が緩んだ拍子に、レイの張り詰めた先端が最奥へと潜り込んだ。
ユーシーは声も上げることができず、喉を高く鳴らした。
腹が熱く濡れた。粘度の少ないものが勢いよく吐き出された。何か確かめる余裕はユーシーにはなかった。
レイは間髪入れずユーシーの奥の襞をいじめた。何度もレイの楔にこじ開けられ、襞を捲られて、その度にユーシーは潮を吹いた。
密着したユーシーとジンの腹はびしゃびしゃだった。
「また吹いた」
もはやジンの上で身体を震わせるばかりのユーシーは、返事などろくに返せなかった。
「ほらユーシー、水飲め」
ペットボトルの水を口に当てられる。ユーシーが喉を鳴らして飲むとジンがが頭を撫でてくれて、またレイが律動をはじめた。
「きもちい、レイさ、ぁ」
ユーシーの中は、快感に震えていた。身体をいっぱいに埋める快感はユーシーから自由を奪っていく。
「ふ、そんなに締められたら、すぐいきそうだ」
奥をゆったりと捏ねながら、レイがユーシーの肩にキスを落とす。
「ん、だして、れいさ、ぁ」
最奥まで捩じ込まれ、レイの猛りが脈打ちながら白濁を吐き出す。
熱いものが、何度も柔い最奥を打つ。
「ふふ、お前の中は欲しがりだな、ユーシー」
レイに言われたことに自覚はある。
気持ちいいのは好きだ。
でも、ルイとできたらよかったのに。
そんなことを思いながら、ユーシーは胸の痛みにまた蓋をして意識を手放した。
「ユーシー、お客さんだ」
優しいレイの声がユーシーを揺り起こした。
ユーシーがぼやけた頭のまま目を擦りながら身体を起こす。どれくらい時間が経ったのかわからないが、もう部屋は明かりが必要な暗さで、ベッドサイドには照明が輝いていた。
ユーシーの隣にはガウン姿のレイと、スーツ姿のジンがいて、ベッドのそばにはルイの姿があった。
ユーシーは散々楽しんでひと眠りした後だった。まだ寝起きでぼんやりしたまま目の前のルイを見る。ルイが着ているのはユーシーが家を飛び出した朝に見たのと同じ服だ。
「ユーシー!」
潤んだアイスブルーがユーシーを見つめる。居心地の悪さに、ユーシーは唇を尖らせた
「……なんだよ」
「ごめんね、ユーシー。帰ってきて」
ルイはユーシーの前になりふり構わず跪き、ユーシーの手を取った。
ユーシーの目には、垂れた耳と丸まった尻尾が見える気がした。
「どうした、ユーシー。謝ってるぞ」
ガウン姿のレイがユーシーの顔を覗き込む。
「もう、寂しい思いさせないから」
「次やったら、絶対帰らねー」
「うん」
どうやらルイも反省しているようだ。ユーシーもいつまでも臍を曲げているつもりはなかった。
「わかった。帰るよ」
「よし、めでたしめでたしだな」
ほっとした声はジンのものだ。
「なんだ、もう終わりか。いつでも帰ってきていいからな」
「ありがとう、レイさん、ジン」
こうして、ユーシーの短い逃避行が終わった。
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