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第73話 ヘルプ!
しおりを挟む「全く手加減できなかった……本当に俺はダメだな……はぁ……」
己のダメさ加減にため息を吐いては更に気落ちする。
奇襲とはいえ何もここまでする必要はなく、単に己の未熟さによるものだと猛省しては嘆く。
「なんで上手くできないんだろう……他の人達はもっと上手くやれてるのに……はぁ……これだから落ちこぼれって言われるんだよな、きっと……」
そう嘆いたあと、つい俯きそうになるが「このままじゃあダメだ!」と急に自身の左頬を殴り己を戒める。
それは以前の俺ではあり得ない行動であり、ニカナを手に入れてからの俺は確実に何かが変わっていた。
だがそのことを自覚してはおらず、左頬に触れながら「何故こんなことを……いてて……」と不思議に思いつつ痛がっていると、前方から例の20人ほどの冒険者達が俺の元へやってくるなり一斉に礼を述べ出す。
『ありがとうございます! 本当に助かりました! とても凄かったです! 是非、弟子にしてください!』
感謝の言葉を一斉に述べられて一瞬ポカンとしたが、気落ちしていたことすら忘れるほどに嬉しくも照れ臭くなり、今はこれでいいんだと思えるように。
少しずつでも人の役に立ち認められることで、いつかは落ちこぼれから脱却できるはずだ! そう心の中で己に言い聞かせては密かに奮起する。
するとその時、遅れてやってきた1人の若者冒険者が突如声を上げて懇願してきた。
「おっ、お願いします! 私の幼馴染を助けてください! 隣の布陣に組まされて、絶対にヤバいんです! お願いします! お願いします!!」
その懇願する若者冒険者はギルド内で俺を馬鹿にしたあとに黒髪の話をしていたあの2人のうちの1人であり、Fランカーの駆け出し女魔導士であった。
あまりの逼迫感漂う表情に只事ではないと思い詳細を聞くと、その幼馴染とはあの時に女魔導士と一緒にいた男のことで、どうやら2人はパーティーを組んでいるらしく、未だ交際してはいないが中々に良い雰囲気の様子。
「そ、そうなんだ……というか、今そんな話をされても……しかも顔を赤くしながらとか……」
少々話が脱線してしまったが、何やら今回の布陣は元から組んでいるパーティーを無視して天職重視で単にバランスよく振り分けただけのようで、パーティー無視により2人は別々の布陣に組み込まれてしまったとのこと。
「それで、布陣毎の連携はあったの?」
「い、いえ……指揮できる人がいませんので……多分、布陣の殆どは連携できてないと思います……」
「だろうね……これは確かにヤバいな……急いで行かないと手遅れになるかも……」
「そっ、そんな!? お願いです! アイツを、アウロを助けてください! お願いします!!」
女魔導士は涙を流しながら深く深く頭を下げて懇願し、その姿を目の当たりにして一体誰が見捨てられるであろうかと心打たれ、女魔導士の両肩に触れながら決意を口にした。
「絶対に大丈夫! ……とは言えないけど、できる限り助けられるように努力する! だから君は怪我人を守ってほしい。見たところ半数は怪我してるようだから……」
女魔導士だけではなく、その場にいる全員が無言で頷くと、俺も無言で頷きアウロのいる布陣へと駆け出すのであった……
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