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第74話 念と視線

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「ここから800mってところか……魔物は約200で冒険者側は50くらいだな……ん? 反応が1、2、3……って次々に小さくなってる!? 急がないと本当にヤバい!」

 駆けつけながら魔力探知をしていると冒険者側の魔力反応が次々と小さくなり、このままでは全滅もあり得ると危機感を抱いたので、更に急ぐよう魔法を唱えた。

「少しでも速く着きたいんだ! 頼むぞ、疾駆!」

 疾駆を唱えて疾風の如く駆け抜けると、すぐに目的地である次の布陣が見えてくる。
 通常なら初めから目視できる距離なのだが、土煙が立っているために全く見えずにいた。
 つまりはそれほどまでに激しい攻防が行なわれており、皆必死で戦っているというわけだ。

「魔物の種類は前の布陣みたくグラスウルフだけじゃないようだ……ここから先は高ランクの魔物も多いはずだから積極的に倒していかないとな……もうへこんでる暇なんかないぞ、俺!」

 己にそう言い聞かせつつ駆け抜けていき、アウロの生存確認よりも先に魔物の討伐を優先することに。
 そのためには仲間へ誤射することなく数多くの魔物を倒せる地点まで移動する必要があり、実際にその地点を直感で理解したうえで既に向かっていた。


「よしっ、着いた! 真横からなら誤射はないハズ……数多に穿て、風牙ふうが!」

 魔物の群れの真横に着くなり即座に魔法を唱えると、俺の周囲に無数の風が渦巻き収束され、とても小さな風圧弾となって放たれるのを待つ。
 仲間に誤射しないよう狙いを定め「行けっ!」と全弾放つと、魔物達の身体は蜂の巣のように風穴が空いては一斉に倒れ出す。
 倒れる魔物を確認するとその種類は多く、グラスウルフ・フラワーウルフ・ステルスリカオン・ダイアウルフ・ジープドッグ、あとはシャムスリーパーの計6種類となり、脅威ランクEからCまでの魔物が揃っている模様。
 因みに「シャムスリーパー」は脅威ランクDの狸系魔獣で、やはり犬科に属する魔物である。
 特技は「狸寝入り」と「死んだフリ」であり、後者は「仮死化」というスキルを使用することで完全な仮死状態になれるらしく、亡骸だと思い込んで通り過ぎた獲物や冒険者を背後から襲う卑怯な戦法を得意とするようだ。

「まぁ、要は今も死んだフリをしてる奴がいるかもってことなんだけど……うーん、魔力反応は無しか……これは一体どう判断するべきなんだ……?」

 そう考え込んでいると、200匹はいた魔物の群れを1つの魔法で全滅させた俺に対して、その場にいる冒険者達は様々な念と視線を送る。
 それは大きく分けて感謝・驚愕・尊敬・畏怖の4種であり、次第に心の声も漏れ出す。

『誰かは知らないけど助かった、ありがとう! 一体、あの魔法はなんなんだ!? 颯爽と来て、あっと言う間に倒すなんて素敵! いや、アイツはヤバすぎだろ……』

 色々と聞こえてくるが今はアウロを探すのが先決なので、周囲の声を掻き消すように声を上げた。

「すみません! ココにアウロ君はいますか?! いるなら姿を見せてください! 君の幼馴染のコから頼まれているんです! だから、どうか姿を見せてほしい!」

 俺が声を上げると皆無言となり、隣の人と顔を見合わせては困惑の表情を見せ始めるのであった……
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