なんで誰も使わないの!? 史上最強のアイテム『神の結石』を使って落ちこぼれ冒険者から脱却します!!

るっち

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第78話 疾風戦駆

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「あ、歩ける……普通に歩けるぞ! これなら冒険者が続けられる! よっしゃ! よっしゃぁぁぁーっ!!」

 初めは恐る恐る地面に足を付けていたが、アウロは何も異常が無いと分かった途端に歩き出し、終いには駆け回りながら何度も喜びの声を上げた。

「あんなに燥いじゃって……いつまでも子どもみたいなんだから……」

 そう呟くと、フラムは瞳に涙を浮かべて嬉しそうに微笑む。
 そんな2人を見ているうちに、セリーヌとの楽しかった思い出が蘇っては胸が苦しくなり、何故セリーヌに捨てられ……フラれたのかを再び考え出す。

「セリーヌ……何故俺のことを…………って、そうだ! 今はそれどころじゃない! 早く支援しに回らないと!」

「きゃっ!?」

「うわっ!? ごめーー」

 支援に回らねばと急に立ち上がろうとしたその時、抱きつかれていることを忘れていたために体勢を崩し、そのままフラムを押し倒してうっかり床ドンしてしまう。

「ごっ、ごめん! 今離れるから!」

「ダメッ!」

 互いの顔が目の前にある状態となってしまい慌てて上体を起こそうとするが、フラムは俺の背中に両手を回してそれを阻止。
 突然の事態に動揺して思考が停止した瞬間、フラムは俺の瞳を見つめながら一言告げる。


「私、年の差なんて全っ然気にしませんからね?」

「!?」

 フラムが告げた一言により、女性の怖さを知り戦々恐々としてしまい何も返答できずにいると、アウロから強い視線を感じ、それと同時に「なっ……!?」という驚愕した声も聞こえてきた。

(まっ、マズい! 勘違いされないように早く起き上がらないと!)

 そう思ってすぐに無理矢理上体を起こすと、残念そうな顔をしながらもフラムは両手をパッと離して拘束を解いてくれた。

「あ~あ、残念……もう少しあのままでも良かったのなぁ……」

「は、ははは……あっ、そ、そうだ、早く次の布陣を支援しに行かないと……」

 思い出したかのように立ち上がり「そ、それじゃあ……」と左手を軽く上げて挨拶し、逃げるかの如く次の布陣へ向けて駆け出すと、周囲の人達は道を開けて見事な一本道を作り出し、それには「他の布陣も頼んだぞ!」という強い期待が込められていた。


「あっ! もぉ、もっとお礼を言いたかったのにぃ……!」

「俺もだ……あの人にはこの先一生足を向けて寝らんねぇよ……あっ! そういや、さっきのあれはーー」

 駆けるなか、2人の会話が聞こえてきたが、礼はなんだか照れくさいので遠慮しておこうと考え、聞こえないフリをして次の目的地まで向かうことに。
 アウロを助けられたことは大変喜ばしいのだが、かなりの時間を要してしまったので他所の戦況が気になるところだ。

「そうだ、魔力探知で確認すれば……おっ、距離は1500mってところか、少し遠いな……魔物の数は……なっ!? 1200!? 初めは500くらいだったのに、あの時より増えてるぞ!? もしかして、左側にいた魔物達が全部集まってるのか……!? そ、そうなると冒険者側は……150……初めより30くらい少なくなってる……マズイな、これは急がないと……! よしっ、また頼むぞ、疾駆!」

 戦力差に焦りつつも早急に駆けつけねばと、疾風の如く戦場を駆けるのであった……
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