なんで誰も使わないの!? 史上最強のアイテム『神の結石』を使って落ちこぼれ冒険者から脱却します!!

るっち

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第83話 神のみぞ知る魔法

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「アソコから行けそうね……いい? アナタもすぐ行けるようにしておくのよ?」

 身体を密着させて小声で話すイズナ。
 幾ら密談のためとはいえ、そんな簡単に女性が密着してきてはいけない。
 以前の俺なら特に意識などしなかったはずだが、何かが変化した今は妙に意識してしまう。

(歳は同じか、少し下くらいだよな? 性格もセリーヌと似てるし……まぁ、俺のこと疎んでるようだから別に進展とかはないだろうけど……)

 現状に焦ることなく、平然とそんなことを考えている俺に対して、イズナは再び睨みながら大声で叱る。

「ねぇ、ちょっと! 私の話をちゃんと聞いてる!? そもそもこの状況を理解してるの!? ……はぁ、だからアナタのことが嫌いなのよ……もういいわ、私は勝手にやるからアナタも勝手にしなさい!」

 25歳にもなって叱られる俺。
 しかも嫌われている事実まで判明したうえに、密着していたのも嫌がるように距離を取られた。


「あっ……」

 思わず声が漏れてしまう。
 自身が思う以上にショックを受けていたのだ。
 だが「それでもイズナを危険に晒すわけにはいかない!」と強く心の中で声を上げ、左足を一歩踏み出し、右手でイズナを制止して一言。

「この場は俺に任せてください……絶対になんとかしてみせます……だから、絶対に俺から離れないで……」

「えっ!? ちょっ、ちょっと、まっ、てっ、手ぇっ!?」

 突然イズナの手を取るなり二歩三歩と歩を進め、五歩目のところで両足を揃えてピタリと止まると、右手でイズナの左手を握ったまま左手を天に掲げて魔法を唱える。

「ココが中心だな……渦巻け! 廻飆かいひょう!」

 俺の上空で時計回りに風が渦巻き出し、外側へ拡大するごとに渦巻く速度と威力が段々と高まっていき、魔物達のところへ到達する頃には完全なる竜巻となっていた。

「なっ、何よこれ!? こんな凄い魔法、今まで見たことないわ!?」

 手を握られていることも忘れ、辺りをキョロキョロと見渡すイズナは、見たことのない魔法だと声を上げながら驚愕の表情を見せる。
 一流冒険者と称されるBランカーでさえも見たことが無いのは当然であり、それは俺がニカナから得ている魔法の全てが既存魔法ではなく「神理魔法」であるのだから。
 因みにその神理魔法とは、神のみぞ知る魔法であり、通常では知り得ない魔法なうえに、たとえ知れたとしても下界の者では使えるはずのない魔法なのだ。しかし……


(何故か俺は使えるんだよな……まぁ、ニカナのおかげなんだけど……あっ、そうだ! 確か、イズナさんも1つだけ使えたんだった! ははっ、あとで聞こうとしてすっかり忘れてたよ……)

 長々と考え事をしている間に、廻飆に巻き込まれた魔物達は1匹残らず天高く舞い上がり、次々と頭部から落下しては鈍い音を立てて潰れていく。
 そして、落下した魔物は頭部が無い状態で倒れていき、地面は魔物の血で赤く染められていった。
 それらの光景はまさに凄惨を極めていたが、魔物達が全滅するまでの間、その光景をただただ眺めることしかできず……


「……!? イズナさん……」

 凄惨な光景を眺める最中、震えながらも俺の右手をギュッと力強く握るイズナに対して、エリザに抱いたものと同様の感情を抱くのであった……
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