なんで誰も使わないの!? 史上最強のアイテム『神の結石』を使って落ちこぼれ冒険者から脱却します!!

るっち

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第87話 アンタ

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「!? おぉ……」

 振り返り目にした光景は、やはり呆れた表情で、俺と同様に腕組みしたイズナの姿であり、その姿は勝ち気な性格と相まってとても絵になっていた。

「な、何よ……人の身体をジロジロ見て……なんか気持ち悪い……」

「なっ!? き、気持ち悪いって、そんな……」

「あっ、それより! 早く残りを倒してみんなを助けないと! アナタがやらないなら私がやるわ!」

「あっ!? イズナさん、ちょっーー」

 止める間もなく魔物達に向けて駆け出すイズナは、駆けながら双剣を構え、纏雷を再び掛け直して加速すると、視覚が戻り始めた魔物達に紛れて次々と辻斬りして回る。


「あはっ! あははっ! すっごく楽しい! あはははははははっ!!」

「い、イズナさん……人格が変わってる……」

 嬉々として辻斬りして回るイズナを目の当たりにし、恐怖を覚え、可愛らしいと思ったことを撤回する。
 しかし、確実に魔物の数は減ってきており、流石は一流冒険者だと感心したのもまた事実だ。
 そして、雷光による雷撃を受けずに生き残った25匹の魔物達は、視覚が完全に戻る前にイズナの手によって見る見る倒されていき、反撃すらできずに全滅となった。

「あ~楽しかった! やっぱり魔物討伐は最高ね!」

 爽やかな汗を流し、スッキリとした表情を見せるイズナの周りには、斬り刻まれて討伐された魔物達が屍となり横たわっている。
 その屍の中にはヘルハウンドも含まれているのだが、背中に斬痕があることから、恐らくはイズナの素早い動きに反応できなかったのだろう。
 因みに他の屍も確認したが、殆どの屍の背中に斬痕が見られ、逆に抵抗の痕跡は見られなかった。
 
「ねぇ、いつまで魔物の死体を見てるつもり? ほらっ、早く助けに行くわよ!」

 まるで俺を待っていたかのような言い草をするイズナは、俺からの返答を待たず、すぐさま魔物の群れが向かった方角へと駆け出すが、結局は俺が付いてきているのかを気にして、駆けるなか、何度もチラ見してくる姿が見て取れた。
 そんなイズナがまた可愛らしく思えるも、先程の人格が変わる姿が脳裏に浮かび、首を横に振りながら「違う違う」と可愛らしく思ったことを改めると、気持ちを切り替えるためにイズナの元へ向かうことに。


「あ、あら、そんなに急いでどうしたの? もしかして、置いてかれたのが寂しかったのかしら? ま、まぁ、私は別にどっちでもいいんだけどね!」

 何やら嬉しそうに話すイズナ。
 追いつかれたことがそんなに嬉しいのだろうか? 首を傾げてそう思ったが、それより今は、あの5人の冒険者達を一刻も早く助けなければ。

「あの……これから急ぎますけど、俺に付いてこれそうですか?」

 なんの気無しに尋ねてみたのだが、何故か急にイズナは怒声を上げた。

「なっ、舐めないで! 誰がアンタみたいなFランクに後れを取るものですか! もう! こんなことなら待たずに置いていけば良かったわ!」

「あ、アンタ……」

 嬉しそうな表情から一転、凄い剣幕で怒るイズナは、再び俺を置いていこうと速度を上げる。
 怒る理由は全く分からないが、あの速度なら助けに行くのも早まるだろう。
 そう感心したあと、何故怒っていたのかを不思議に思いながら、イズナの背中を眺めていた……
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