なんで誰も使わないの!? 史上最強のアイテム『神の結石』を使って落ちこぼれ冒険者から脱却します!!

るっち

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第88話 キュロス、行きます!

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「……あっ、そうだ! イズナさんに教えてもらうの忘れてた!」

 前を駆けるイズナの背中を眺めるうちに、何故纏雷を使えるのか? と理由を尋ねる予定だったことを思い出した。

「素直に教えてもらえればいいんだけど、あの調子じゃ難しいかもな……」

 一抹の不安を抱えながらも好奇心には勝てず、理由を尋ねるべく再びイズナに追いつこうと速度を上げて互いの差を縮める……が、そう簡単には追いつかれまいと、イズナも更に速度を上げて縮めた差を無くす。
 それはまるで「おにごっこ」をしているようで、童心に返れた気がして思わず笑みが零れる。

「くくっ、懐かしいな……昔はセリーヌ達とこうしてよく遊んでたっけ……って、懐かしんでる場合じゃない! よしっ、こうなったら一気に行くか!」

 そう思い立つとその場に急停止して、左足を後ろに引き、両手と左膝を地面に付け、左爪先で地面を踏み締めてクラウチングの姿勢に入る。


「キュロス、行きます!」

 幼い頃に観た演劇「魔法戦士ザンザス」の劇中で主人公の「アクロ」が発した台詞を真似てみた。
 そしてその台詞を発した直後、踏み締めた地面が陥没するほどの力を推進力へ変えて、イズナの元へと一気に駆け出す。

「ドンッ!」

 その音はスタートの合図を口にしたのではなく、踏み締めた地面から足が離れた瞬間に出た音であり、その音が鳴ると同時に俺の姿はその場から消えた。
 すると突如隣に現れた俺に対し、完全に不意を突かれたイズナは驚きのあまり声を上げる。

「きゃぁぁぁーっ!! びっ、ビックリしたぁ! もう! 急に現れないでよ!」

「!?」

 まさかそこまで驚くとは……
 別に驚かせようとしたわけではないが、ここまで驚かれると罪悪感が湧いてしまうな。
 だが今は纏雷の件を尋ねないと。魔物の群れに追いついてしまうその前に……


「あ、あの、なんかすみません……で、ですが、どうしてもイズナさんにお聞きしたいことがありまして……」

「えっ、私に聞きたいこと? まさか、ヤラシイことじゃないでしょうね!? たとえばスリーサイズとか!」

「えっ!? い、いや、それは全く聞きたいとは思ってませんが……」

「はぁ!? 何よ! 私のカラダには全く興味が無いって言いたいわけ!?」

「えぇっ!?」
(何故こんなに怒ってるんだ? やっぱり女性はよく分からなくて怖いな……)

 イズナの怒る理由が分からず困惑するも、それよりも知りたいことがあるので、取り敢えずは尋ねてみることに。

「と、ところで、イズナさんは何故纏雷を使えるんですか? も、もしや、何か光る石を拾ったりして……?」

「……」

 突如無言となるイズナ。
 何やら重苦しい雰囲気となり、何か聞いてはいけないことを聞いてしまったのだろうか? そう思っていると、イズナはその閉ざした口をゆっくりと開く。

「なんでそんなことを聞くの? アナタも使えるんだから、理由なんて分かってるはずでしょ?」

「……」
(やっぱり、イズナさんもニカナを拾っているのか……?)

「はぁ、まぁいいわ……本当は誰にも言うなって口止めされてるんだけど、アナタも使えるんだし、別にいいわよね? えーっとーー」

 こうして、イズナから話を聞くことになるが、その内容は俺の想像とは全く違うものであった……
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