なんで誰も使わないの!? 史上最強のアイテム『神の結石』を使って落ちこぼれ冒険者から脱却します!!

るっち

文字の大きさ
102 / 128

第102話 戦の間に

しおりを挟む

「一体何が……こ、これは!?」

 黒い霧を抜けて目にしたのは、十字の傷を顔に刻まれて地に横たわるアヌビシオ……と、その側には双剣を手にしたイズナと赤い鞭を持ち身構えているメイリンの姿が。
 初めは状況が分からず茫然としてしまったが、ニカナの影響で脳内処理能力が向上していたのですぐに状況を理解できた。

「……えっ、あっ! イズナさんが止めてくれたんですね!?」

「えっ!? え、えぇ……なんか、いきなり迫ってきたから、つい……」

「ほ、本当にいきなりで驚いたわ……よく反応できたわね……」

 2人の言葉と表情から察すると、互いの存在に気づかぬまま遭遇してしまい、出会い頭にイズナが十字斬りを見舞ったというところだろう。
 見舞ったイズナ本人も驚いているほどなので、咄嗟に身体が動いたのだとみえる。
 だが、そのお陰で逃さずに済んだわけだ……2人には感謝しかない。

「よかった、これで終わらせられる……っとそうだ、早く倒さなきゃな……聖炎!」

 青白色の炎がアヌビシオを覆い燃え盛る。
 弱体化していたからなのか、奴は断末魔を上げることなく燃えて逝った。
 燃え盛る炎は何事も無かったかのようにすぐに消え、それを見届けた後にアヌビシオの亡骸を黒箱へ収納。


「ふぅ、今回は違う意味で苦戦したな……でも、お二人が来てくれたお陰で無事倒せました! ありがとうございました!」

 2人に礼を述べた途端、2人とも視線を外して頬を赤く染めながら照れ出した。
 そんな2人を見て微笑んでいると、前方から複数の足音と男の声が聞こえてくる。

「お嬢ぉぉぉーっ!! 待ってくださぁぁぁーいっ!!」

 イズナとメイリン、2人の間から声のする方を覗くと、メイリンの取り巻きである3人の男達が猛烈な勢いで駆けくる様子が窺え、声に気づいたイズナとメイリンも同時に後ろを振り向く。
 助けた後に置き去りにしてしまったのだが、どうやら追い掛けてきていたらしい。

「「「あっ……」」」

 俺達は一斉に口を開いた。
 他の冒険者達を助けるのに必死で、うっかりすっかり忘れていたのだ。
 俺達が口を閉じる前に男達は合流し、勢いそのままに涙目で訴え出す。

「お嬢ぉぉぉーっ!! なんで置いてったんですかぁぁぁーっ!! 俺達は家族ファミリーでしょぉぉぉーっ!!」

 大の男3人が仔犬のように瞳を潤ませながらメイリンにしがみつく。
 てっきり魅了の魔眼で操り下僕にしていたのかと思っていたが、実際はそうでは無かったようだ。
 メイリンの苦笑いしつつも柔らかな表情を見るに、男達を心から信頼しているのが分かる。
 メイリン達の仲睦まじい姿を見て、俺とイズナは顔を合わせて笑った。

(生死を賭ける戦いの最中だけど、こういうのがあっても許されるよな……)

 戦いで精神が摩耗して心にゆとりが無くなってしまう現状では、笑顔になるようなことは先ず無い。きっとこの出来事は先の戦いへの活力となるだろう。


「さて、そろそろ行きましょう!」

 俺の言葉に皆真顔で頷き、共に来た道を駆けて戻ることに。
 その途中に事の顛末を皆に説明し、情報の共有を図る。すると……


「はぁ……アナタって、本当に無茶苦茶ね……」

「……え?」

 事の顛末を話した後、ため息を吐くイズナと顔を引きつらせるメイリン達、そしてそんな5人を見て不思議そうに首を傾げる俺であった……
しおりを挟む
感想 5

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった

ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます! 僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか? 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします

Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。 相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。 現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編

最強無敗の少年は影を従え全てを制す

ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。 産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。 カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。 しかし彼の力は生まれながらにして最強。 そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。

クラス転移して授かった外れスキルの『無能』が理由で召喚国から奈落ダンジョンへ追放されたが、実は無能は最強のチートスキルでした

コレゼン
ファンタジー
小日向 悠(コヒナタ ユウ)は、クラスメイトと一緒に異世界召喚に巻き込まれる。 クラスメイトの幾人かは勇者に剣聖、賢者に聖女というレアスキルを授かるが一方、ユウが授かったのはなんと外れスキルの無能だった。 召喚国の責任者の女性は、役立たずで戦力外のユウを奈落というダンジョンへゴミとして廃棄処分すると告げる。 理不尽に奈落へと追放したクラスメイトと召喚者たちに対して、ユウは復讐を誓う。 ユウは奈落で無能というスキルが実は『すべてを無にする』、最強のチートスキルだということを知り、奈落の規格外の魔物たちを無能によって倒し、規格外の強さを身につけていく。 これは、理不尽に追放された青年が最強のチートスキルを手に入れて、復讐を果たし、世界と己を救う物語である。

【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。

三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎ 長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!? しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。 ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。 といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。 とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない! フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!

処理中です...