103 / 128
第103話 今後の作戦
しおりを挟む「……うん? 誰か手を振ってる? えーっと……あっ、ムツコさんだ!」
皆の所に戻っていると、500m以上先から手を高々と挙げながら大きく振るムツコの姿が。
その姿を目にした途端、急に安堵感が込み上げる。それはムツコ達が無事だと知れたからだ。
実を言うと、俺がいない間に魔物達が襲ってくるのでは? と内心穏やかではなかった。しかし、どうやらその考えは杞憂に終わったらしい。
「はぁ……やっぱり無茶苦茶ね……こんな遠くから人の顔が見えるとか……」
再びため息を吐くイズナ。
呆れているというよりも、驚きを通り越した故の反応のように思える。
イズナには色々と規格外の魔法や行動を見せてしまっているので今更なのだろう。
「やっぱり凄い人♡ うん、絶対に堕としてみせるわ!」
気合いを入れて不穏な言葉を呟くメイリン。
誰にも聞こえていないと思っているのだろうが、残念ながら本人の耳に入ってしまっているのだ……うん、取り敢えずメイリンには気をつけよう……
「おかえりなさいです!」
あれこれ考える間にムツコ達の元へ到着。その時に見せたムツコの満面の笑みにとても癒された。
それに他の冒険者達も笑顔で迎えてくれて嬉しく思う。ただ、ザルマとその取り巻き2人は少し離れた場所で気不味そうにしている。静かで何よりだ。
「イズナ様も元気そうで嬉しいです!」
「えぇ、私もあなたが無事で嬉しいわ」
2人は面識があるようだ……まぁ、2人とも同じBランカーなので当然と言えば当然か……だがそれよりも気になるのがイズナの口調だ。
俺に向ける「アナタ」とムツコに向ける「あなた」がどうも違う気がする。俺への「アナタ」はどこか余所余所しくぎこちない。なんとなくだが無理をして言っているように感じられる。
もしや「お前」や「貴様」などと呼びたかったりして? もしそうなら余程嫌われているということになるが、どうなのだろうか……?
そんなことを考えながらイズナを見つめていると、怪訝な表情でイズナは口を開いた。
「……何よ」
「なっ、なんでもありません!」
(うっ、当たりが強い……)
やはり嫌われている? しかし、先程までは普通に話せていたハズ……女性の気分は変わり易いということなのか……?
(うーん……幾ら考えても俺には分からなそうだし、今はそれよりも先に考えることがあるんだよな……)
考えること……それは、今後どう動くかだ。
各自どのように動けば街を守れるのかを考えたうえで行動しなければならず、要は無駄な動きを極力避けねば街は守れない。それほどまでに今回の戦いは厳しいということだ。
俺1人で決めることではないので、皆の意見も是非聞こうと思う。
「そっ、それより! 今後の作戦を皆さんで考えませんか!?」
「……そうね」
「うっ……」
(ま、まだ怪訝な表情で見られてる……)
もしかして、話をそらしたと思われたのか? だが全く違うとも言い切れないから言い訳ができない……うぅ、気不味い……
「そそ、そうです! 作戦を考えるです! みんなで街を守るです! ね? イズナ様?」
「……えぇ、そうね、そうしましょう」
(!! ムツコさん……)
俺の心情を察してくれたムツコのお陰でイズナの表情は和らぎ、あの気不味い雰囲気は一気に消えた。
そして、この場に皆を集めて今後の作戦を考えることとなった……
0
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
美人四天王の妹とシテいるけど、僕は学校を卒業するまでモブに徹する、はずだった
ぐうのすけ
恋愛
【カクヨムでラブコメ週間2位】ありがとうございます!
僕【山田集】は高校3年生のモブとして何事もなく高校を卒業するはずだった。でも、義理の妹である【山田芽以】とシテいる現場をお母さんに目撃され、家族会議が開かれた。家族会議の結果隠蔽し、何事も無く高校を卒業する事が決まる。ある時学校の美人四天王の一角である【夏空日葵】に僕と芽以がベッドでシテいる所を目撃されたところからドタバタが始まる。僕の完璧なモブメッキは剥がれ、ヒマリに観察され、他の美人四天王にもメッキを剥され、何かを嗅ぎつけられていく。僕は、平穏無事に学校を卒業できるのだろうか?
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~
ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。
食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。
最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。
それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。
※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。
カクヨムで先行投稿中!
S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります
内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品]
冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた!
物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。
職人ギルドから追放された美少女ソフィア。
逃亡中の魔法使いノエル。
騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。
彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。
カクヨムにて完結済み。
( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
異世界召喚でクラスの勇者達よりも強い俺は無能として追放処刑されたので自由に旅をします
Dakurai
ファンタジー
クラスで授業していた不動無限は突如と教室が光に包み込まれ気がつくと異世界に召喚されてしまった。神による儀式でとある神によってのスキルを得たがスキルが強すぎてスキル無しと勘違いされ更にはクラスメイトと王女による思惑で追放処刑に会ってしまうしかし最強スキルと聖獣のカワウソによって難を逃れと思ったらクラスの女子中野蒼花がついてきた。
相棒のカワウソとクラスの中野蒼花そして異世界の仲間と共にこの世界を自由に旅をします。
現在、第四章フェレスト王国ドワーフ編
最強無敗の少年は影を従え全てを制す
ユースケ
ファンタジー
不慮の事故により死んでしまった大学生のカズトは、異世界に転生した。
産まれ落ちた家は田舎に位置する辺境伯。
カズトもといリュートはその家系の長男として、日々貴族としての教養と常識を身に付けていく。
しかし彼の力は生まれながらにして最強。
そんな彼が巻き起こす騒動は、常識を越えたものばかりで……。
スキル【収納】が実は無限チートだった件 ~追放されたけど、俺だけのダンジョンで伝説のアイテムを作りまくります~
みぃた
ファンタジー
地味なスキル**【収納】**しか持たないと馬鹿にされ、勇者パーティーを追放された主人公。しかし、その【収納】スキルは、ただのアイテム保管庫ではなかった!
無限にアイテムを保管できるだけでなく、内部の時間操作、さらには指定した素材から自動でアイテムを生成する機能まで備わった、規格外の無限チートスキルだったのだ。
追放された主人公は、このチートスキルを駆使し、収納空間の中に自分だけの理想のダンジョンを創造。そこで伝説級のアイテムを量産し、いずれ世界を驚かせる存在となる。そして、かつて自分を蔑み、追放した者たちへの爽快なざまぁが始まる。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる