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第1章 始まりの街
第18話 銀鎖と覚悟
しおりを挟む「……何も無い……だと……!?」
一本道を暫く進んでいるのだが特に何も無い。
道中、魔物との遭遇も一切しておらず、だがそれは嵐の前の静けさ的なものだと思っており、警戒しながら先へ進む。
途中、かなり道幅の狭い道があったが、魔物の襲撃は無さそうなので気にせず通過することに。
「……ん? これは……」
奥の方から魔物らしき生命反応があり、どうやらこちらに向かっている様子が窺えたので、進むペースを落として魔物に備える。
すると互いの距離が段々と縮まっていき、もう少しで目視ができそうだ。
「なっ、なんだ!? 何が飛んで……!?」」
突然、魔物のいる方から何かが飛んできており、しかもそれは目では追えないほどに速い何か。
しかし、その何かは俺にまで届くことは先ずない。
何故ならオートガードが全て防いでくれるからであり、現に何発もの何かを全て防いでいる。
俺もお返しとばかりに暗闇へ向けてビームを連発。すると……
「おっ、魔物の生命反応が消えた! ラッキー!」
どうやら運良く魔物を倒せたようだ。
数打ちゃ当たるとはよく言ったもんだな。
そう思いながらふと足元を見ると、テニスボールサイズの種らしき物が多数落ちていることに気づく。
「……ん? これは……種か?」
そう、落ちていた物とは植物の種だったのだ。
だが殆どの種は障壁に当たった際に割れてしまっているようで、取り敢えずは割れていない種だけを拾いストレージへ収納する。
そのあとに倒した魔物へ近づくと、花の中央にテニスボールサイズの穴が空いているのを目にし、恐らくはこの穴からあの種を発射していたのだろうと推察。
不意に何故か名前が気になったのでスキャンをしてみた。
(セブンシーズ HP 0/300・MP 430/500)
(某漫画のタイトルと同じ名前だな……)
そんなことを思いながらもセブンシーズをストレージへ収納。
そういえば、漸く魔物が出たということはこの先は今までとは違うのでは? ふとそう考えたので、警戒を強めて先へ進むことにした。
「おっ、魔物の反応だ! しかも数が多い!」
先程の場所から少し進むと、およそ1000m先から多数の生命反応を探知。
それでも残り100mほどになるまでは普通に先へ進もうかと。
「やっぱりな……そうだと思ったよ……」
やはりセブンシーズが出現した辺りから、魔物が度々出現するようになった。
ただ、出現した魔物は一種類のみで、クローボアという猪型の魔獣のみ。
この魔獣は、小柄なことと身体中に沢山のクローバーが生えているのが特徴の魔獣で、今までに倒した数は確か15匹だったハズ。
「……ん!? 来た! でも残念!」
言った傍からクローボアが迫ってきたようだが、残念ながら遠距離攻撃を持たない魔物はビームの餌食となってしまうのだ。
「ビーム!」
1ターンキルで戦闘終了なので張り合いは無いが、モブタの件もあって料理の食材としては良さそうだ。
倒した魔物は漏れなくストレージへ収納しているので、街へ帰ったら買取の他に美味しい料理をベルに作ってもらうことにしよう。
「あぁ、ベルさんの料理、楽しみだなぁ……」
出てきたヨダレを拭いているうちに、魔物が多数いる地点まで残り100mほどとなったので、ここから先は慎重に進むことにした。
そして慎重に歩を進めて行くとそこには広い空間があり、魔物の群れが待ち構えている模様。
「夜叉椿の人達と出会った場所に似ているな……」
そう呟いた瞬間、俺に気づいた魔物の群れが一斉に襲い掛かってきた。
「うぉぉぉっ! 凄い迫力だ!」
50匹はいるであろう魔物達が一斉に襲い掛かってくるその姿は、とても映画では味わえないほどの迫力であり、だがそれでも臆することなく魔物達と対峙してはビームを発動した。
「行けっ! ビーム!」
ビームを連発し、ヒットした魔物は次々とその場に倒れていく。
しかし、魔物の数が多過ぎて対応し切れておらず、徐々に狼狽えるように。
「これは、流石にヤバいかも……」
流石にこの数から攻撃をされでもしたら、いかにオートガードでも防ぎ切れないと考えて、全速力で道を引き返すことに。
「くそっ、せめて魔導具が作れれば!」
この状況を打開可能な魔導具を作ろうとしているが、その機会が全く見当たらず、焦りながらもその機会を模索した。
その機会を模索しながらも来た道を戻っていると、以前は気にせず通過したあの狭い道が見えてくる。
「……!! コレだ! コレしかない!」
ある策を思いつき、そのまま狭い道の半ばまで戻ってすぐに魔法を発動させた。
「ばっ、バリア!」
狭い道の中を塞ぐようにバリアが張られ、少数の魔物しかバリアの所まで来ることができず、この数の魔物ならバリアを破壊することは不可能だろう。
時間を稼ぐことに成功し、その間に魔導具の製作を開始。
先ずはミスリルと玉鋼をストレージから取り出し、そのミスリルと玉鋼を融合させて「ミスチール合金」へと加工。
次にミスチール合金をウォレットチェーンに形状加工し、僅かに余ったミスチール合金は勿体無いのでストレージの中へ収納。
最後にこのウォレットチェーンへ「マルチ」と「ホーミング」の創造魔法の付与を施し、そして完成したこの魔導具は「黒子の銀鎖」と命名。
命名理由は直接的な攻撃や回復ではなく、間接的……謂わゆる、裏方的な効果を発揮するからである。
この種類のチェーンは本来なら財布とベルト穴を繋げるものなのだが、今回のコレは短杖のケツの部分とベルト穴を繋げる仕様となっており、短杖とチェーンを連結させることで特殊なビームへと姿を変えるハズ。
早速このチェーンを装着して短杖を握る……が、その短杖を持つ手は震えており、もしこれからの行動に失敗をすれば、それ即ち死を意味するからだ。
「くそっ、手の震えが止まらない……」
死への恐怖が手を震えさせる。
だが慌てず騒がず瞳を閉じ、そして深呼吸を始めた。
「スゥーッ……ハァーッ……スゥ」
ゆっくりと3回深呼吸をしたあと、ほんの少しだけ息を吸った。俺流のリラックス法である。
このリラックス法は前世でもよく行なっており、不安や緊張をした際にはとてもお世話になったものだ。
「ふぅ……よしっ、やるか!」
瞳を開き、覚悟を決めた。
手の震えは完全に止まっているようで、魔物達の方へ向けて短杖を構え、そして一言。
「絶対に、絶対に生き残ってみせる!」
覚悟を現実にするため言葉に変える。
そして、覚悟を言葉にした俺の身体は、嘗てないほどの熱気を帯びていた……
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