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過去
第4話
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誕生日パーティーも楽しい雰囲気で過ぎていった。
日葵はさっきつないだ手のぬくもりがまだ残っている気がして、テーブルの下でギュッと手を握りしめた。
「日葵ちゃん?日葵?聞いてる?」
香織ママの言葉に、我に返ると日葵はみんなをみた。
「え?なに?」
「たまには壮一のピアノ聞きたいわよね?」
そうちゃんのピアノ?
昔はよく引いてくれていたそうちゃんのピアノを、もうしばらく聞いていない気がして、日葵はチラリと壮一を見た。
「いいじゃないか?壮一。今日は母さんの誕生日だぞ?」
父弘樹の言葉に、壮一は顔を歪めた。
「日葵ちゃんからも言ってやって?聞きたいって」
「え……でも……」
渋った日葵に、壮一はイジワルそうに言葉を発した。
「日葵が躍るなら」
「はあ?」
(いつの話よ?)
昔はこの広いリビングの真ん中で、壮一のピアノをバックに楽しくお遊戯のような踊りをして、みんなが笑顔だった。
「私が踊れるわけないでしょ」
イラっとして言った日葵に、壮一は試すようにクスリと笑った。
「昔みたいにお遊戯会の「くまのおうち」でも弾こうか?」
「壮一!日葵ちゃんに絡まないの!」
香織の言葉に、壮一は少しため息をつくと、無言でピアノへと歩いて行った。
軽やかな音がリビングに響く。
アレンジされているが、「happy Birthday」だ。
「嬉しい。壮一めっきり最近弾いてくれないから」
香織の言葉に、莉乃も頷いた。
「壮一君、本当に上手よね」
そんな声を聴きながら、日葵はきれいで美しい壮一をぼんやりと見ていた。
『お坊ちゃんはやっぱりピアノが弾けるんだな』
中等部の時にひがみで上級生に言われた言葉を気にしているのではと、日葵は思っていた。
(やっぱり弾いているそうちゃんは……)
なんだというのだろう?そんな事を思いながら壮一を見ていると、弾いている壮一と視線が交わる。
ジッと見つめられて、日葵も視線を外せずにいた。
いつの間にか曲が変わっていた。
(なんて曲だろ……)
甘くて、切ないそんなメロディだった。
その曲が日葵の心をギュッと締め付けた。
この夏の日が、忘れられない夏になるとは、日葵はまだ知らなかった。
日葵はさっきつないだ手のぬくもりがまだ残っている気がして、テーブルの下でギュッと手を握りしめた。
「日葵ちゃん?日葵?聞いてる?」
香織ママの言葉に、我に返ると日葵はみんなをみた。
「え?なに?」
「たまには壮一のピアノ聞きたいわよね?」
そうちゃんのピアノ?
昔はよく引いてくれていたそうちゃんのピアノを、もうしばらく聞いていない気がして、日葵はチラリと壮一を見た。
「いいじゃないか?壮一。今日は母さんの誕生日だぞ?」
父弘樹の言葉に、壮一は顔を歪めた。
「日葵ちゃんからも言ってやって?聞きたいって」
「え……でも……」
渋った日葵に、壮一はイジワルそうに言葉を発した。
「日葵が躍るなら」
「はあ?」
(いつの話よ?)
昔はこの広いリビングの真ん中で、壮一のピアノをバックに楽しくお遊戯のような踊りをして、みんなが笑顔だった。
「私が踊れるわけないでしょ」
イラっとして言った日葵に、壮一は試すようにクスリと笑った。
「昔みたいにお遊戯会の「くまのおうち」でも弾こうか?」
「壮一!日葵ちゃんに絡まないの!」
香織の言葉に、壮一は少しため息をつくと、無言でピアノへと歩いて行った。
軽やかな音がリビングに響く。
アレンジされているが、「happy Birthday」だ。
「嬉しい。壮一めっきり最近弾いてくれないから」
香織の言葉に、莉乃も頷いた。
「壮一君、本当に上手よね」
そんな声を聴きながら、日葵はきれいで美しい壮一をぼんやりと見ていた。
『お坊ちゃんはやっぱりピアノが弾けるんだな』
中等部の時にひがみで上級生に言われた言葉を気にしているのではと、日葵は思っていた。
(やっぱり弾いているそうちゃんは……)
なんだというのだろう?そんな事を思いながら壮一を見ていると、弾いている壮一と視線が交わる。
ジッと見つめられて、日葵も視線を外せずにいた。
いつの間にか曲が変わっていた。
(なんて曲だろ……)
甘くて、切ないそんなメロディだった。
その曲が日葵の心をギュッと締め付けた。
この夏の日が、忘れられない夏になるとは、日葵はまだ知らなかった。
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