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同期以上恋人未満
第2話
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「おい、ちな!そろそろ起きろ!」
「もう少しだけ……」
頭上から聞こえる声に、私はシーツをかぶって目を閉じる。
ん?
あれ?
だんだんクリアになる頭で、今の状況を思い出した。
やばい!
どうしよう!
もちろん聞こえている声は、涼真の声で私はおバカにも涼真の顔を見ながら、もう一度寝落ちして、あろうことか涼真に起こされているという現実に私は真っ青になる。
「ちな、朝食買ってきたから、食うぞ!ほら」
バサリとシーツがはぎとられ、私は呆然と涼真を見上げた。
「おっ、いい眺め」
クスリと笑った涼真に、私は「ギャー」と可愛げのない声を上げた。
「何をいまさら……」
呟くように言われた言葉に、私は背筋が冷たくなるのが自分でもわかった。
今なんて言った?
いまさら?
「あの……涼真さん?」
おそるおそる声をかけた私に、バサリと私のスーツのパンツを投げると、涼真はニコリと笑って寝室から出て行ってしまった。
「え……?」
一人残された部屋で、私の問いに答えてくれる人はもちろんいる訳もなく、私はさらにパニックに陥った。
どれぐらい呆然としていたかはわからないが、私は涼真はからかっただけだろうと思い込むことにして、服を着ると鏡を見た。
メイクは少し落ちているけど、まだ許容範囲で、ホッと息を吐いた。
意を決してそっと寝室に出ると、眼鏡をかけてダイニングテーブルで新聞を読む涼真が目に入る。
そして初めてここが涼真の家だと気づき、私はまた心臓が暴れそうになるのを何とか押し込んだ。
「ちな、ほら。顔洗ってこいよ。あそこのドア」
チラリと私を見た後、また涼真はまた新聞に目を落とす。
リビングに置かれていたカバンから、メイクポーチを出してお言葉に甘えて洗面所で顔を洗って、簡単にあったメイク道具で化粧をする。
そしてリビングに戻ると、涼真はキッチンに立っていた。
「ちな、クロワッサンと、ベーグルのサンドどっちがいい?」
両手で私に見せながら、涼真は私を見る。
「ベーグル」
あまりにもいつも通りの涼真に、私も言葉は零れ落ちる。
「了解」
慣れた手つきでコーヒーを入れると、涼真はテーブルに置いて私に座るように促す。
「あのさ、涼真。なんがご迷惑をかけて……」
コーヒーを一口飲んでそう切り出した私に、涼真は顔を歪めた。
「本当だよ。お前、酒飲むときは、本当に気をつけろよ。何やっても起きなかった」
あー、やっぱり寝落ちして、そのままどうしようもなく、自分の家に連れてきてくれたことが分かり、私は落ち込んで俯いた。
「本当にごめんね」
しょんぼりした私に、涼真は小さく笑うと、私の頭をポンと触れた。
「いいから、早く食えよ。時間なくなる」
「え?ごめん。何か予定あった?食べたらすぐ帰るからね」
そういって私は慌てて涼真の用意してくれたベーグルを口に運ぶ。
「はあ?ちなお前何言ってるの?今日は一緒に出掛ける約束しただろ?」
「え?」
そんな約束をしたのだろうか?
お酒って怖い!
なにか気持ちが駄々洩れるような事言ってないよね?
でも、せっかく涼真と出かけられるチャンスを逃したくなかった。
「あっ、そうだったね」
曖昧に頷いて、笑顔を見せると、涼真はジッと私の瞳を見据えた。
「早く恋人らしくなって、結婚式で見せつけなきゃいけないもんな」
その涼真の言葉に私はコーヒーを吹き出しそうになり、なんとかそれを押さえると咳込んだ。
ぼんやりと、昨日結婚式にニセ彼として行ってくれる約束をしたことを思い出す。
その練習でも頼んだのだろうか?
「ちな、ほら大丈夫かよ?まったく」
涼真はティッシュを私に渡しながら笑っている。
「うん。大丈夫ありがと」
何とか咳が止まると私は、同期以上のような気がするこの関係に、頭が付いていっていなかった。
「もう少しだけ……」
頭上から聞こえる声に、私はシーツをかぶって目を閉じる。
ん?
あれ?
だんだんクリアになる頭で、今の状況を思い出した。
やばい!
どうしよう!
もちろん聞こえている声は、涼真の声で私はおバカにも涼真の顔を見ながら、もう一度寝落ちして、あろうことか涼真に起こされているという現実に私は真っ青になる。
「ちな、朝食買ってきたから、食うぞ!ほら」
バサリとシーツがはぎとられ、私は呆然と涼真を見上げた。
「おっ、いい眺め」
クスリと笑った涼真に、私は「ギャー」と可愛げのない声を上げた。
「何をいまさら……」
呟くように言われた言葉に、私は背筋が冷たくなるのが自分でもわかった。
今なんて言った?
いまさら?
「あの……涼真さん?」
おそるおそる声をかけた私に、バサリと私のスーツのパンツを投げると、涼真はニコリと笑って寝室から出て行ってしまった。
「え……?」
一人残された部屋で、私の問いに答えてくれる人はもちろんいる訳もなく、私はさらにパニックに陥った。
どれぐらい呆然としていたかはわからないが、私は涼真はからかっただけだろうと思い込むことにして、服を着ると鏡を見た。
メイクは少し落ちているけど、まだ許容範囲で、ホッと息を吐いた。
意を決してそっと寝室に出ると、眼鏡をかけてダイニングテーブルで新聞を読む涼真が目に入る。
そして初めてここが涼真の家だと気づき、私はまた心臓が暴れそうになるのを何とか押し込んだ。
「ちな、ほら。顔洗ってこいよ。あそこのドア」
チラリと私を見た後、また涼真はまた新聞に目を落とす。
リビングに置かれていたカバンから、メイクポーチを出してお言葉に甘えて洗面所で顔を洗って、簡単にあったメイク道具で化粧をする。
そしてリビングに戻ると、涼真はキッチンに立っていた。
「ちな、クロワッサンと、ベーグルのサンドどっちがいい?」
両手で私に見せながら、涼真は私を見る。
「ベーグル」
あまりにもいつも通りの涼真に、私も言葉は零れ落ちる。
「了解」
慣れた手つきでコーヒーを入れると、涼真はテーブルに置いて私に座るように促す。
「あのさ、涼真。なんがご迷惑をかけて……」
コーヒーを一口飲んでそう切り出した私に、涼真は顔を歪めた。
「本当だよ。お前、酒飲むときは、本当に気をつけろよ。何やっても起きなかった」
あー、やっぱり寝落ちして、そのままどうしようもなく、自分の家に連れてきてくれたことが分かり、私は落ち込んで俯いた。
「本当にごめんね」
しょんぼりした私に、涼真は小さく笑うと、私の頭をポンと触れた。
「いいから、早く食えよ。時間なくなる」
「え?ごめん。何か予定あった?食べたらすぐ帰るからね」
そういって私は慌てて涼真の用意してくれたベーグルを口に運ぶ。
「はあ?ちなお前何言ってるの?今日は一緒に出掛ける約束しただろ?」
「え?」
そんな約束をしたのだろうか?
お酒って怖い!
なにか気持ちが駄々洩れるような事言ってないよね?
でも、せっかく涼真と出かけられるチャンスを逃したくなかった。
「あっ、そうだったね」
曖昧に頷いて、笑顔を見せると、涼真はジッと私の瞳を見据えた。
「早く恋人らしくなって、結婚式で見せつけなきゃいけないもんな」
その涼真の言葉に私はコーヒーを吹き出しそうになり、なんとかそれを押さえると咳込んだ。
ぼんやりと、昨日結婚式にニセ彼として行ってくれる約束をしたことを思い出す。
その練習でも頼んだのだろうか?
「ちな、ほら大丈夫かよ?まったく」
涼真はティッシュを私に渡しながら笑っている。
「うん。大丈夫ありがと」
何とか咳が止まると私は、同期以上のような気がするこの関係に、頭が付いていっていなかった。
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