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番外編 Side 由幸 2
しおりを挟む瑞穂を抱きしめると、後頭部に手を回してキスを落とす。
初めて触れた瑞穂の唇は柔らかくて、気持ちよくてどんどん俺は瑞穂とのキスにはまっていく。
やばい!止めないと本当に止まらない。
瑞穂の気持ちがわからないまま、抱く事なんでできない。
そっと、離れようとした俺を、瑞穂の手がそれを阻止する
「いや……離れないで」
そう言って手を回して、瑞穂からキスをされた。
「でも……」
躊躇する俺に、
「お願い。最後のお願いだから……」
「最後?」
涙を流しながら、俺を潤んだ瞳でみる瑞穂。
「好きなの……」
紡ぎ出されたその言葉に俺の理性は完全に飛んだ。
激しくキスをしながら、瑞穂を組み敷いてバスローブに手をかけた。
首筋にキスを落とすと、瑞穂はビクッと緊張したように体が強張るのがわかった。
そんな瑞穂に、オレはハッと我に返って瑞穂を見た。
もしかして、俺を誘うためにこんな格好をして、あのBARにいた?
そうだとすると、瑞穂は初めてか?
改めて、ゆっくりとキスを落として、緊張を解くように優しく髪を撫でた。
さっきとは違い、優しく瑞穂を誘うように甘くキスをする。
そうすると、ようやく安心したように体を俺に預けた。
時間をかけてキスをしながら、俺は瑞穂に問いかける。
「ねえ、俺の名前を呼んで?俺の事好き?」
瑞穂は俺が気づいているとは思っていない。
俺は名前を名乗っていない。
「由幸さん……好き……んっ……」
その言葉に、俺は唇ごと瑞穂の言葉を奪った。
その後は、ゆっくりと、壊さないように、気持ちが伝わるように。
優しく、瑞穂を抱いた。
ゆっくりと満たされた気持ちで朝目覚めて、隣の瑞穂を抱きしめようと横をみると、冷たくなったシーツ。
え?
昨日、意識を失うように眠ってしまった瑞穂に、俺の気持ちをつたえるとはできず、起きてからでいいかと思った自分を呪った。
こういう女じゃないか。
わかっていたのに。
「クソっ!」
ついでた言葉も、むなしく部屋に響いただけだった。
なんで、昨日きちんと瑞穂だとわかって抱いたことをつたえなかったんだ。
そうしたらこんな気持ちになることもなかったのに。
瑞穂は今、どんな思いでいるのかを推し測った。
素直になれない自分に嫌気がさした。
どうやって瑞穂に思いをつたえるか悩んでいると、またいつも通りの月曜がきてしまった。
自分の部屋なのに、ドアを開けることを緊張している自分に気づいた。
大きく息を吐いて扉を開けると、いつも通りにこやかに微笑む瑞穂がいた。
「今日はご機嫌がよろしくないんですね?」
当たり前だろ?
お前が逃げたから……。
そんな事を言えるはずもなく、また思ってもいない事が口から出てしまった。
「ああ、金曜日がハズレだったから」
「そうですか」
そっけなく言われて、瑞穂の気持ちがわからなくなる。
でも、少し唇をかんで何か耐えるような表情の瑞穂を見て、今行った自分の言葉を思いっきり後悔した。
なんで俺は……。
こんなにこじらせてしまったのは、俺のせいだという事は解っていた。
どうやって瑞穂にきちんと思いをつたえるかを悩んでいるうちに、瑞穂が合コンに行くと言い出した。
なんだよ?お前。
やったらもう俺はいらないのか?
接待を引き延ばして、合コンに行かせないようにした自分も情けないが、終わってから合コンに行くという瑞穂を止められない俺はもっと情けない。
行くな。
その一言が言えない。
瑞穂の為に開かれた合コンという事は、きっと俺との事を終わらせたと誰かに話したからだと、容易に想像ができた。
早くなんとかしなくては。
瑞穂は絶対に誰にもやれない。
次の日、そっと瑞穂に近づいて香水を確認した。
朝帰りでもしていたら、香水をつけてないだろう。
そんな事を思った。
それと同時にキスマークの確認もした。
いつも通りの香と、キスマークも見当たらずとりあえず安堵した。
そして今度こそと思って、
「笠井、今週の金曜日、ここを予約しといてくれ。」
そう伝えると、小さく返事が返ってきた。
Tokyo International Hotel 38F
フレンチレストラン 20時
部屋番号1001
今度こそ、本当にきちんと向き合いたい。
そんな思いだった。
しかし、当日までとうとう言えず、帰りに伝えようとして社外から戻ると、先に帰る事のない瑞穂の姿が無い。
慌てて俺はスマホを手にした。
「すぐに来い!」
そう言って電話を切って、いらいらしながらホテルのロビーで待つと、向こうから綺麗に着飾った瑞穂を呆然と俺は見た。
どうしてまたそんなに綺麗にしてる?
不安な気持ちを抑えながら瑞穂の手を取ると、予約してあったレストランへと向かった。
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