Blood Spare of Secret : The story of Creeds

千導 翼『ZERO2005』

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第五章 アンヴィルヘム邸編

ルーウィッド領

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 2日前 元ルーウィッド領 アンヴィルヘム邸

 アンヴィルヘムの邸宅を探索していると、扉の隙間が凍っている場所を見つけた。

 「libraryって書いてある。」

 「ここが...図書室...。」

 光琳が無言でドアノブを掴んで扉をこじ開けようとする。

 「ぐぅ...!!」

 メキメキと音をたてるが一切開きそうにない。薫も体重をかけて扉を押すが音を立てるだけで開く気がしない。

 「はぁ...駄目だぁ...。」

 「全然開く気がしないね...。」

 そうやって2人でため息をついていると、間から手が出てきて、扉を押し始める。

 「「!?」」

 「ここ開けたいんだろ?」

 手の方を見ていくと、黒い革のコートとサングラス、スーツ姿で黒い手袋をしている強面で、見るからに豪胆そうで極道のような容姿の男がいた。

 「は、はい...。」

 男の迫力に圧倒されて、反射的に頷くと、男は扉を力尽くで開ける。

 「ほら開いたぞ。入りな。」

 「あ、ありがとうございます...。あ、あなたは...?」

 「あ? 俺か? ここの用心棒をやってんだ。名はガラド。安心しな。妙なことをしなけりゃことを構える気はねえぜ。」

 ガラドはそう言って、その場から立ち去った。ガラドの気配が消えるまで薫と光琳は見届けた後、図書室に入った。

 「ひ、広いね...。」

 「うん。予想より...数倍くらい広くて...本...多い...。」

 薫と光琳は苦笑いで図書室にある本をひたすら読み漁る。

 「何で図書室なんて行けって言ったんだろうね? 何かあるとは到底思えないよ...。」

 「でも...行動するなら早くした方がいいってことだから...何かがあるとは思うんだよね~。」

 「...? 薫。」

 「ん?」

 光琳に呼ばれて行くと、汚れた日記帳のようなものを持っていた。

 「何それ...。日記?」

 「多分。でもそれより名前が...。」

 薫に日記帳に書かれている名前を見せる。

 「フロス...アンヴィルヘム。ブリザ...アンヴィルヘム...。リズレット・アンヴィルヘム...。」

 薫が光琳を見ると、光琳は深く頷く。

 「兄弟3人の日記...。」

 2人は図書室の椅子に座って日記帳を開く。始まりは字体と口調からしてフロスのものだ。

 「何か...ここに重要なものが書かれてる気がする。夜まで時間はまだまだある。読もう。」

 「うん。」

 2人は日記を読み始める。

 〝フロスの日記〟 

 今日は私達の家族が増えた日だ。名は母がつけた。ブリザ・アンヴィルヘム。私達家族中でも綺麗な青い髪と透き通った水色の目をした赤ん坊だ。いつもは厳格な父も今日は嬉しそうだった。母は私に言った。

 「あなたは今日からお姉ちゃんになるの。立派な背中を見せるのよ。」

 「はい!」

 私は今日から弟のブリザの世話を母と一緒にすることになった。

 「子供の世話って難しいでしょう? あなたもこれくらいよく泣いたんだから。」

 「そうなんだ。」

 今日言われた言葉だ。でも、子供の頃の記憶は曖昧で、厳しく育てられた私には正直泣き虫だった自分というのが想像つかなかった。今はよく泣くブリザもいつかは私のようにあまり泣かなくなるんだろうか? もしそうなったら、その時の私はどんな人になってるんだろ? わからないな。

 「1歳の誕生日! ブリザが生まれてもう1年経ったのね...早いものねぇ...。」

 「フロス。これからはブリザの世話と学業で大変だろうが...頼むぞ。」

 「はい。お父様。」

 ブリザが1歳になった。自分の時の誕生日はただ嬉しかったけど、家族の誕生日、それも弟の誕生日を祝うときは、なんか複雑な気持ちになった。決して気分が良くなかったとかそういうのじゃない。ただ、弟も私と同じように大きくなってる? 成長してる? って考えると、なんか胸が熱くなった。自分の事のように嬉しいって気持ちかな? これ。

 「ふ・ろ・す。」

 「ふほす?」

 「違う違う。ふ! ろ! す!」

 「あの子ったら一生懸命ブリザに自分の名前を教えていますよ?」

 「自分が姉となったことを、改めて実感したんじゃないか?」

 ブリザが言葉を喋れるようになった。早速私の名前を覚えさせた。私が喜ぶとブリザも手を叩いて喜んでくれた。凄く可愛くて、幸せな気持ちになった。

 「ついにブリザも入学だな。これから学業も共に頑張ろう。」

 「うん。フロス姉さん。」

 私が小学5年になった頃にブリザが入学してきた。学校でブリザとの交流も多くなった。そして家に帰ると、母が新しく家族が増えると言った。

 「可愛い女の子ねぇ...。」

 「ブリザ、フロス。お前たちの新しい兄弟だ。名はリズレット・アンヴィルヘム。」

 今日からリズレットの世話を私とブリザでするようになった。

 「そんなことしたら更に泣くんじゃ...。」

 「いいのいいのこれくらい。ほら、笑ってる。」

 「ええ...。」

 妹は可愛らしくて、すごく甘えん坊だ。初めての妹の扱いに困るブリザを見て笑いながら教えていった。

 「リズレット! お誕生日おめでとう!!」

 1歳の誕生日。盛大に祝った。ブリザの方を見ると、あの頃の私と同じような気持ちを抱いてるのかなと思って、肩に手を置いて微笑んだ。そしたら、ブリザも困ったように微笑み返してくれた。

 「ふろす。ぶりざ。こーるど。りふりーじゃ。」

 「すごい...。もう僕らの名前覚えちゃった。」

 「こりゃ天才児ね。」

 妹は物覚えが早くて、すぐに私達家族の名前も覚えてくれた。よく子供には難しいって言われる母の名前も覚えてくれて、母はいつになく嬉しそうだった。

 「フロスの高校入学祝いだ。フロス。明日からはこの家を離れて首都の高校に行く。寂しくなるが、必ず立派になって帰ってくる。」

 「辛くなったらいつでも帰っておいでね。」

 「もちろんです。お父様。お母様。リズレット。次会うときは小学校の入学式だよ。」

 「うん!」

 「ブリザ。それまでリズレットとこの家頼むぞ。」

 「もちろん。約束するよ。何があっても守って見せるさ。」

 高校に行くために首都に向かうことになった。この日記は引き続き使う事にする。私の大事な日記だ。所々書かなかった日もあったが、それ含めて大事な私の歩みの一つだ。

 ここでフロスの日記は終わっている。次のページはブリザ・アンヴィルヘム。読もうとした瞬間に時計の音が鳴った。周りを見渡すといつの間にか夕方だ。

 「急いで日記を持って部屋に戻ろう。」

 「それってまずいんじゃ...。」

 「どの道脱出するんだから今更だよ。」

 薫の言葉に頷いて光琳が服の下に日記を隠して図書室を出ると、見知らぬ男が扉の前に立っていた。黒いハットを被った手品師のような容姿で張り付いたような笑顔が特徴的な男だ。

 「おやおや。まだこんなところにいらっしゃったとは...急いで自室に戻ることを勧めますよ。」

 「は、はい。」

 「あ~これは申し遅れました。わたくしこういう者です。」

 男は張り付いた笑顔から表情を変えることなく名刺を渡す。薫が一礼しながら名刺を受け取って名前を見る。

 「(ベーゼファミリー...ヒット。) ヒットさん...?」

 「はい。そこで手品師をしているものです。心が覗ける手品師という名目でねぇ。」

 「そうなんですか。では次会う時に手品を見せてください。私達はそろそろ部屋に戻らなくては...。」

 薫がそう言って光琳と一緒にその場を立ち去ろうとすると、ヒットが引き留める。

 「お待ちなさい。」

 「!」

 「そこの茶髪のお嬢さん...。持っている日記を戻してはくれませんか?」

 「「(バレた...!?)」」

 光琳が日記を取り出そうとすると、薫が止めて笑顔でヒットを見る。

 「何のことです? 日記何て持ってませんよ。」

 「私に嘘を吐く気ですかお嬢さん?」

 「まさか。嘘何てとんでもない。」

 「ふん...。その日記は大事なものなのです。返してもらわないと...。」

 ヒットが手を挙げようとした瞬間にその手を掴んで止める影があった。

 「?」

 「客人に手出しは止めてもらおう。」

 「おぉっと先代当主様。これは失敬...しかし...。」

 「口答えをするな。客人を部屋に帰してやれ。」

 「お言葉ですがあの日記は現当主様が持ち出しを禁じておるのですよ。」

 「では私から話を通しておこう。」

 「...いいでしょう。私もこれ以上揉めたくはありません。」

 ヒットは張り付いた笑顔のまま2人を一瞥してその場を立ち去った。

 「行け。」

 「先代?」

 ついこぼれてしまった薫は自分の口を塞ぐ。それを見た先代当主は微笑む。

 「現当主は私ではない。ブリザだ。」

 「ではあなたは...。」

 「君が想像している者だ。さぁ、早く部屋に戻りなさい。見つかれば今度は助けられないかもしれんぞ。」

 そうして先代当主もといコールド・アンヴィルヘムはその場から立ち去った。薫と光琳は急いで自室に戻って日記をテーブルに隠したところに朝のように大量の執事とメイドが入ってくる。

 「橘薫様、入町光琳様。夕食のお時間になりましたので、お迎えに上がりました。」

 部屋に大量に来られた時は流石に圧を感じる薫と光琳は手を繋いで、あの部屋に案内される。すると、部屋にいたのは今日あった誰でもない。水色の髪と目をした豪華であるが落ち着いた色合いの服を身に纏った女性だ。

 「初めまして、リフリージャ・アンヴィルヘム。先代当主コールド・アンヴィルヘムの妻よ。」

 「(つまり、ブリザさんや、フロスさん、リズレットさんの母親。)」

 「今晩ブリザの帰りが遅くなるようでね...。私があなた達と喋りたいって言ったの。」

 「そうなんですか...。」

 「ブリザはね...。本当は優しくていい子なの...。でも...人一倍責任感が強い子なの...。」

 リフリージャの悔しそうな声に薫と光琳は困惑して互いの目を見合わせる。

 「だから...止めてほしいの...。」

 「止める?」

 「あなた達にこんな事を頼むのはおかしいことだと思ってる。それでも...道を踏み外そうとする我が子を...私達はもう止めることができない...。」

 「それって...?」

 光琳が話を深掘って訊こうとすると、執事たちが入ってくる。

 「夕食をお持ちいたしました。」

 「ではいただこうかしら。」

 さっきの話はまるでなかったようにリフリージャは夕食を食べ始める。その様子に2人は困惑しつつ夕食を食べ始める。

 「ごちそうさま...。」

 リフリージャは先に立ち上がって扉の前に立った後、切実な表情で微笑みかけて部屋を出て行った。

 「どういう事なんだろ?」

 光琳の問いに薫は出て行った方向を見つめながら答える。

 「きっと...あの日記に答えが書かれてるんだよ。若しくは...原因がさ...。部屋に戻って読もう。」

 「うん。」

 薫と光琳は駆け足で部屋に戻って隠しておいた日記を取り出す。

 「ここからは...ブリザさんの日記...だよね。」

 「...うん。」

 日記を開いてフロスの日記をサラッと読み返した後にブリザの日記を開く。

 「「!?」」

 そこに書かれた一文に2人は驚愕のあまり声が出なかった。

 ―――今日...家族が皆死んだ。

 2人は互いの顔を見合わせて深く頷き合った後に日記の続きを読み始める。

 現在。魔工車レグス内

 僅かに視認できる氷の破片を伝ってアンヴィルヘム邸がある元ルーウィッド領に到着したクリード、清雅、フレアはレグスを少し離れた場所に停めて荒廃した領地に降り立った。

 「ここが...ルーウィッド領。」

 「騎士の国バルジェリア皇国のルーウィッド領。領主のアンヴィルヘム公爵が治めてた土地だ。」

 「それが17年前くらいに滅び去った。」

 「進軍されたんですか?」

 「それもあるが...。そもそも治める者がいなくなり、領地として死んでしまった。」

 清雅の質問にクリードはルーウィッド領を歩きながら答える。

 「治める者...領主...アンヴィルヘム公爵に何かあったんですか?」

 「...亡くなった。」

 「...亡くなった?」

 清雅が驚いていると、フレアが追い越しながら話す。

 「しかも、1人を除いて家族全員な。」

 「家族全員...1人を...除いて...?」

 「そうだ。名前までは俺は詳しく知らねえが...生きてたら俺と同い年だ。」

 「(あの人が...生き残り...。)」

 清雅は時折俯きながらも前に進む。

 「死因は...何だったんです?」

 「生き残った奴以外は...体のどこかに穴が開いてたらしい。」

 「穴?」

 「まるで巨大な何かに串刺しにされた様に綺麗に風穴が開いていたと記録にある。調べてみればすぐに見つかるだろう...。」

 何とも言えない生々しさを感じる話に清雅は気分が悪くなりつつも、平気そうな2人についていく。

 「凶器とか...。」

 「凶器はない。」

 「凶器は...ない?」

 「ああ。なんせ...。」

 フレアが話そうとしたところで、3人の目の前にボロボロの外装の大きな屋敷が目の前に現れる。

 「これ...。」

 「ああ。アンヴィルヘムの屋敷だ。」

 「ここに...2人がいる...。」

 「そうだ。」

 クリードと清雅がそう会話をしていると、フレアが首と指の関節を鳴らしながら前に出る。

 「何をする気だ?」

 「囮になるのさ。俺が出てきたら、その攫ったやつここに出ざる終えないだろ?」

 「そんなうまくいくか?」

 「さあな。でも時間がねえんだろ? さっさと助けてさっさと退散しようぜ。不測の事態が起きた時はそん時に何とかする方向で。」

 フレアはそう答えながら片手に炎を纏う。

 「話を最後までしないタイプかお前?」

 「お? わかってきたなぁ~。」

 その瞬間、片手に纏わせた炎を一気に放つ。アンヴィルヘムの屋敷はフレアの業火に包まれる。

 「さぁ姿を見せろよ。氷使い。」

 その瞬間、屋敷に纏った炎が冷気で吹き飛ばされ、煙の中からブリザが姿を現す。
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