神様を育てることになりました

菻莅❝りんり❞

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40 待っていたもの

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驚きの新事実に少なからずショックを受けつつ、暗く深い森の中心に向かって歩いている。

中心に近づくにつれ、魔獣も魔物も強くなっていった。
けれども、それに比例して知能も高くなるのか、むやみに襲われる事はなくなった。

しかし、警戒はしているのか、あちらこちらから鋭い視線は感じる。

無言のままラグの案内に従い進むと、開けた場所に出た。

その開けた場所は、他と比べると仄かに明るいが、今まで通って来た森に生息している植物よりも異質なものがなっていた。

「なるほど、ここは軽く結界が張られているね。そして、その結界が邪心を吸収して、地に還元している」

「そして、還元された邪心によって汚染された地より育生された植物が変質したのね」

ラグとレティの言葉に、俺から離れて周りを飛び、確認していたジェムが戻ってきて

「しかし、限界だったみたいだ。結界より漏れでた邪心の思念が、今の異常気象の原因だ」

そして、こっちだ。と言うようにまた飛び、俺を見てから中心に向かって飛んでいった。

俺はその後を追って歩き出した。歩くたびに、黒い霧のような胞子を植物が出していた。

「これ、大丈夫なのか?」

邪心を栄養に育った植物の出す胞子に触れて大丈夫なのか心配すると

「心に隙さえなければ、人体に無害だから心配無いよ」

と、とても安心できない言葉をラグが言った。

「逆に心に隙があれば、有害って事じゃないのか?」

俺の問に誰も答えてはくれなかった。

俺が再度問うとしたとき、目的地に着いたのか

「ラグ。念のためにヨミに浄化作用のある結界をかけててくれ」

ジェムの言葉に、ラグが俺に結界を張ったと同時に、ジェムが中心の一部を風魔法で刈り取った。

「!!」

覆い茂っていた植物が無くなり、そこに出てきたのは、、、石化した卵と、それを守るように抱きしめている人だったものだ。

ラグ達はその周りに集まり

「かなり前の卵だね」

「ええ。結界の事を考えると、この人は神使かしら」

「かもしれない。候補者同士での潰し合いがあったのか、、」

「でもでも、この人はいい人なの!卵を守ってるなの!ずっと守ってたなの!」

「下手すると俺も、、こうなってたかもな。この卵みたい守られはしなかっただろうけど」

ネオの言葉に、ラグ達はそっとネオに寄り添った。
俺もネオの近くに座り、その頭を撫でた。

「もしそうなってても俺が、、俺達が必ず見つけ出していたさ。この卵みたいに」

俺はネオの側を離れ、卵の前に膝を折ると

「今度は俺達がこの子を守ります。だからどうかこの子を俺達に託してくれませんか」

両手で卵を包むようにして、卵に触れるか触れないかで止めた。

相手は死者だけど、ラグ達によればこの人は神使だったかもしれない人。

しかも、今の今まで結界を張ってまでも、この子を守っていた。

だから俺は、無理やりこの人からこの子を奪わず、許可を求めた。

すると、了承するように人だったものはゆっくりと崩壊していった。
俺は慌てて

「レティ!この人の魂の保護を!」

だけど、レティは首を振って

「保護出来るだけの魂が残ってないわ。自分の魂を削ってまでこの子を守ってたのね」

レティの言葉に、ラグ達は悲しそうに崩れていく人を見ていた。

「そんな、、、どうにかして助けてあげれないのか?ここまでこの子守ったのに、、、この子が生まれた姿を見せれないなんて」

俺の気持ちをよそに、崩壊している人の表情はどこか満足そうに、俺には見えた。

何も出来ないまま、崩れていく様を見ていると、突然手の中の卵が輝き出した。


「な、何だ!?」

卵の輝きがまるで何かを捕まえるように広がった。

そして、完全に神使だったかもしれない人の崩壊が終わったと同時に、輝きが集約し、卵の中に納まった。

「なんだったんだ、、、今のは」

俺は周りを見渡して、誰に言う訳でもなく呟いた。すると、それに答えるように

「なるほど、結界様様だったわけだ」

「ふふ、この子凄いわね。まだ産まれてもいないのに、ワタシには出来なかった事をしてのけたわ」

「まさかの展開だな」

「だけど、とっても良い事なの」

「嬉しい誤算ってやつだな」

ニコニコと嬉しいそうに笑いながら、ラグ達だけで分かったような会話に

「俺にも分かるように説明してくれよ」

と拗ねると、レティが代表して

「この結界は邪心を外に出さないように、だけど溜め込まないよう大地に還元しいたの」

俺はそれに頷いた。レティはそれを確認すると

「つまり、この結界が張ってある場所は他と隔離されていて、しかも密閉状態だったいう事」

また俺は頷いた。

「あの神使の人は、己の魂をも削りながら卵を守っていた。だけど、結界内だけで還元がされていて、しかも密閉されていたとなれば、、」

「なれば?」

俺は首を傾げて、レティの言葉を待った。

「この空間にあの神使の人の魂の欠片が残っていたと言うことよ!」

俺は、首を傾げながらレティの言葉を噛み締めた。

ポクポクポクポクと音がしそうなほど噛み締めて、考えてた。

「!あっ、そっか!この子はこの場にある神使の人の魂の欠片を集めていたのか!」

俺が答えにたどり着くと

「そして、集めた欠片を卵の中に入れて守った。今まで守ってもらったから、今度は自分が守るって事かもね」

ラグが優しい目で卵を見て、優しく撫でた。

「いい感じの所悪いけど、結界を張っていた主が消えた今、この結界も消えるぞ。そうなれば、ここにある濃い邪心が開放されるぞ」

「「「「!!」」」」

「皆、僕に力を貸して!ヨミも!」

ラグを中心にレティ達が囲む。俺も慌てて卵を仕舞うとレティ達の側に行った。

「俺は何をすればいいんだ?」

俺の問に

「ヨミはラグの側でラグに魔力を注いでいて!」

と、レティに言われその通りにラグの側へ行き、ラグに魔力を注いだ。

「この地を清めよ!浄化!!」

「ぐっ!」

ラグが魔法を発動させたと同時に、物凄い圧が体にかかった。

「ヨミごめんね?でもちょっと我慢して」

ラグが心配そうに俺を見てそう言った。
そんなラグに、俺は無理やり笑顔を作って

「だ、大丈夫、、」

と言った。

ラグの浄化の魔法が全体に行き渡り、結界内を浄化し終わったと同時に、結界は完全に消滅した。

「まっ、間に合ったぁ~」

俺も含め、全員が地べたに沈んだ時、あの音が響き渡った。
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