末っ子神様の世界に転生した何の取り柄のない平凡な俺がちょっとだけ神様の手伝いをする

菻莅❝りんり❞

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19 魔法の強化をしよう

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俺が魔法の事を説明し終えると、トーダ達は驚いた顔をしていた。

「俺達にもミクリのような魔法が使える?イメージ?いったいどういう事だ?」

パミルが混乱したように聞いてきたが、静かに瞑想するみたいに目を閉じていたトーダとレジーが同時に目を開けた。

「なるほど、本能に刷り込まれているか」

「確かに、ミクリが使っているような魔法の知識はあるみたいだ」

どうやら冷静に、自分の中にある魔法の知識を確認していたようだ。アレン達もトーダ達の真似をして、自分の中にある魔法の知識を確認しだした。パミルも遅れて確認しだした。

パミル、セルディ、ミーナ、ランカはうまく確認出来なかったみたいだけど、トーダ達にコツを教わったらすぐに分かるようになった。
なんだかんだと、ハイスペ揃いだよなここ。

「知識として分かっても、やっぱりどういうモノなのかがいまいちよく分からないよ」

アレンの言葉に皆が困った顔で頷いた。

「だから皆に残ってもらったんだ。たぶん庭に修練場が出来ていると思うからいってみようか」

そうして、食堂をかだ付け食器を洗い礼拝堂へ向かった。扉の横に案内図があるので確認すると、やっぱり出来てた、修練場。

修練場のある場所は左側の鍛冶場の手前側だった。建物はそこまで大きくなかったのに、中に入れば見た目以上の広さと高さがあった。しかも鑑定くんによれば“防音・防魔法完備。どんな大技を出してもびくともしない”との事だ。

「言いたいことがあるかもしれないが、これに関しては俺に聞かれても分からない。ここでの不思議な事は全部“神様の加護があるから”で納得してくれ」

本当に分からないんだから仕方ない。俺が色々聞きたいくらいだよ。

「で、皆に残ってもらったのはほかでもない、魔法をちゃんと扱えるようになってもらうためだ。まずは、防御魔法から」

そう言って俺は壁を出した。

「これなら簡単だろう?協会の壁も、街を囲ってる壁も見ているし触ってるんだから。それをイメージすればいいだけだ」

そうして次々と皆が壁を作っていった。そこに俺が極微量の魔力を込めたファイヤーボールをぶつけていけば、全員の壁が簡単に壊れた。

「ただイメージすればいいだけじゃない。強度や威力なんかも考えてイメージしないと、今みたいにすぐに壊れる。俺は武器が使えないから、魔法を人一倍頑張った。だけど俺は、俺やトーダ達は早くても来年には、神様の頼みごとで旅立たないといけなくなる。守りの魔法も攻撃の魔法も、レジー達の身を守るためにも必要なモノだ。俺の代わりにここでの人助けをしてもらうしね」

今まで以上に守るべき者が増えていく。そんなとき、強力な魔法が使えれば確実に守れる。

「レジー達が魔法を完璧に覚えれば、下の子達にも教えられる。俺は人に何かを教えるのは苦手だから、察しのいい皆を選んだ」

「まぁ、ミクリらしいっちゃ、ミクリらしいな。じゃ、ミクリ先生?よろしく」

ジニーはいたずらっ子のような顔をして言った。

この日から午前中は魔法の訓練。昼は狩りか、狩りに行かない日は、それぞれの仕事の手伝いや旅立ちに向けての必要な物の製作や準備をして過ごした。

午前中だけと短い時間の中、ハイスペ連中はやってのけた。俺が教えられる全ての魔法を2カ月で覚えた。正確には一月半で覚え、残りの半月は実戦形式の模擬試合をしていた。勿論、俺は不参加だ。魔法だけでの打ち合いなら、参加していたかもだけど、魔法も武器もじゃ俺には無理だ。

早いもので11の刻も半ばまできた。外はすっかり冬。少し前まで、狩りの時に冬毛になった鳥の魔物や、換毛期の魔物に重点を置き冬に備えていたため、皆に冬用の洋服がちゃんと回った。
毛糸でセーターやマフラー、手袋なんかも作ってくれていた。

着々と準備が整っていく中、またまた俺は年長組を集めた。今度は俺の部屋だ。

「忙しい中、集まってもらったのは誰も頓着していない、皆の誕生日についてだ。俺は自分の誕生日なんて知らないけど、覚えている人いる?」

皆は顔を見合せ、首を振った。

「だったら全員の誕生日を同じ日にして、一緒に年を取るようにしよう。形だけでも祝ってた方が自分の年齢って分かりやすくなるしね。で、いつがいい?」

「誕生日なんて今まで考えたこともなかったな」

「そうね。その日その日を生きるのに精一杯だったものね」

あれー?何で皆、暗くなるの?えーと、、

「自分の幸、不幸は自分次第。って誰かが言っていたような気がする。今皆はどう?幸せ?不幸?」

「今の生活で不幸なら、俺達に幸せなんて無いだろうな」

「うん。今は幸せだよ」

皆笑顔で頷いてる。

「だったら過去より未来を見よう。過去はどうしよも出来ない。けどこれからは先は笑顔でいようよ」

コソコソ「まったく。ミクリはいつも突然、突拍子も無いことを言うよな。それでこっちの調子を狂わすから、毒気を抜かれる」

コソコソ「トーダ達もか?俺達の時もだったぞ。これを天然でやるからたちが悪い」

おーい、言いたい事はハッキリ言ってくれー。

俺以外には聞こえているらしく、クスクスと笑っている。しかも頷きあってもいる。

「もー!なんなのさ!言いたいことがあるなら言って」

「大した事じゃないよ。それより誕生日だっけ?皆、いつがいい?」

思いっきりはぐらかされた。俺はブーたれながらも、皆と一緒に考えた。
なかなか意見がでない中、ミーナが

「1の刻の1がいいんじゃないかな?小さい子達にも覚えやすいし、何よりここは神様に一番近い場所だもの」

「なるほど、祈りの日か」

祈りの日とは、一年の初めに神様に供物を捧げ、一年の感謝と祈願をする日の事。

「うん、いいね。じゃ決まり。俺達の誕生日は1の刻の1。祈りの日だし、料理も豪華にやろう」

旅立ちの前に楽しい思い出が出来そうだ。
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