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23 旅立ちの時
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泣き止んだら案の定、目蓋が腫れていた。俺は席を立ち、侯爵夫妻と騎士達に回復魔法を使い、腫れを取った。
「そう言えば、ミクリって回復魔法使えたんだったね。なんでミカエルって子にはかけなかったの?」
アレンが不思議そうに聞いてきた。
「前にアレク達が怪我したときに言ったけど、幼い時に小さなケガ位でポーションや回復魔法を使ってたら、体に備わってる自然治癒能力が機能しなくなってしまって、どんな小さなケガでも致命傷になりかねなくなる」
俺の話しに顔を青くした侯爵夫妻。だいぶ甘やかしているようだ。
「ミカエルくんはまだ小さいんでこれから気を付ければ大丈夫だと思いますよ。それより、レジーの母親に手を合わせなくて良いんですか」
「良いだろうか」
侯爵はレジーを見て言った。
「あの人の言葉からも、あんた達に逢いたそうだったから良いんじゃない」
「レジー、侯爵様達を案内してやって。行けば分かると思うから。俺達は部外者だからここに残っとくよ」
レジーは少しためらったが、侯爵様達を案内して行った。それを見送った後、
「侯爵様に、ここを託してもいいかな?勿論、普段は今まで通りでいい。でも、この教会の中だけでやり繰りするのは、限界が来ると思う。外に信用の出来る大人がいれば、色々と幅が広がるし、お金も手に出来る。お金がないと出来ないことが多いし、子供だけでは、足元をすくわれる。どうかな」
「どうかなと聞く前に、ミクリの中ではもう決まってるんだろう?それに神様が選んだ大人だ。俺はいいよ」
トーダの許しが出れば、皆も納得する。食堂に残ってた子供達は皆を見渡し頷いた。レジーと侯爵達が戻って来たら話をし、侯爵は二つ返事でOKし、レジーも納得した。
その日から時々侯爵が訪れ、皆が作ったものを売り、お金に変えてくれた。そのお金で、侯爵が来てくれた時に、街に出て買い物をして楽しんだ。
そして4の刻、今神様は俺の前で正座をしている。なぜかと言うと、教壇の上にあるもののせいだ。教壇の上には、スマホみたいな通信機、侯爵達の為の転移陣と、小型の炊飯器に神様仕様のテントが置かれてた。
小型の炊飯器とテントは旅の必需品なのでありがたくもらっとくとして、転移陣もまぁ、良いだろう。侯爵がちゃんと管理してくるだろうし。
問題はスマホもどき。いくらなんでもこれはやりすぎだ。
「確かにね、遠くにいてもすぐに連絡できるのは便利だと思うよ?でもさ、この世界でこういうのって、今まで存在してないよね?トラブルの元を作らないで欲しいなぁ」
それはもう、良い笑顔で言ってやった。
「に、に、認識阻害をしとくので、持ってる人以外には見えないようにします。ごめんなさい」
神様はそのまま土下座した。俺は、ため息を吐き、
「もう立って。神様が俺達の事を考えくれてるのは分かるけど、たまにやりすぎるよね。神様の思いに免じて、ありがたく使わせてもらうよ。使い方はスマホと一緒でいいの」
「はい。ただメール機能と電話機能しか無いので、地球のように便利ではないですよ」
「それだけあれば十分でしょう。地球みたいなのはここでは宝の持ち腐れってやつだよ」
もう一度神様にお礼を言って、皆が集まる夕食時に、使い方を説明しながら電話一人一人に手渡した。
地方に帰る前によってくれた侯爵にも、電話と転移陣を渡し、説明した。すると感謝をのべたいと、礼拝堂へ入り、侯爵家と騎士達は祈りを捧げた。
4の刻も終わり頃、俺とトーダ達の準備もできて、いよいよ旅立ちの時。
俺の時間停止と無限収納のマジックバックにこれでもか米の実を入れた。皆から呆れたような眼差しを受けた。まぁ、米の実だけじゃないけどね。ちゃんと旅に必要なものもいれてるよ!
旅立ちの日を侯爵に伝えたら、転移陣で見送りに来てくれた。
「侯爵様、わざわざありがとうございます」
「いや、これぐらいしかできないからね。十分に気を付けるだよ」
「はい」
それから一人一人から言葉をもらい、いざ旅立ちの時。皆に手を振り、前を向いた。必ずここに、全員で帰れると信じて。打倒、前世の俺のかたき!
「そう言えば、ミクリって回復魔法使えたんだったね。なんでミカエルって子にはかけなかったの?」
アレンが不思議そうに聞いてきた。
「前にアレク達が怪我したときに言ったけど、幼い時に小さなケガ位でポーションや回復魔法を使ってたら、体に備わってる自然治癒能力が機能しなくなってしまって、どんな小さなケガでも致命傷になりかねなくなる」
俺の話しに顔を青くした侯爵夫妻。だいぶ甘やかしているようだ。
「ミカエルくんはまだ小さいんでこれから気を付ければ大丈夫だと思いますよ。それより、レジーの母親に手を合わせなくて良いんですか」
「良いだろうか」
侯爵はレジーを見て言った。
「あの人の言葉からも、あんた達に逢いたそうだったから良いんじゃない」
「レジー、侯爵様達を案内してやって。行けば分かると思うから。俺達は部外者だからここに残っとくよ」
レジーは少しためらったが、侯爵様達を案内して行った。それを見送った後、
「侯爵様に、ここを託してもいいかな?勿論、普段は今まで通りでいい。でも、この教会の中だけでやり繰りするのは、限界が来ると思う。外に信用の出来る大人がいれば、色々と幅が広がるし、お金も手に出来る。お金がないと出来ないことが多いし、子供だけでは、足元をすくわれる。どうかな」
「どうかなと聞く前に、ミクリの中ではもう決まってるんだろう?それに神様が選んだ大人だ。俺はいいよ」
トーダの許しが出れば、皆も納得する。食堂に残ってた子供達は皆を見渡し頷いた。レジーと侯爵達が戻って来たら話をし、侯爵は二つ返事でOKし、レジーも納得した。
その日から時々侯爵が訪れ、皆が作ったものを売り、お金に変えてくれた。そのお金で、侯爵が来てくれた時に、街に出て買い物をして楽しんだ。
そして4の刻、今神様は俺の前で正座をしている。なぜかと言うと、教壇の上にあるもののせいだ。教壇の上には、スマホみたいな通信機、侯爵達の為の転移陣と、小型の炊飯器に神様仕様のテントが置かれてた。
小型の炊飯器とテントは旅の必需品なのでありがたくもらっとくとして、転移陣もまぁ、良いだろう。侯爵がちゃんと管理してくるだろうし。
問題はスマホもどき。いくらなんでもこれはやりすぎだ。
「確かにね、遠くにいてもすぐに連絡できるのは便利だと思うよ?でもさ、この世界でこういうのって、今まで存在してないよね?トラブルの元を作らないで欲しいなぁ」
それはもう、良い笑顔で言ってやった。
「に、に、認識阻害をしとくので、持ってる人以外には見えないようにします。ごめんなさい」
神様はそのまま土下座した。俺は、ため息を吐き、
「もう立って。神様が俺達の事を考えくれてるのは分かるけど、たまにやりすぎるよね。神様の思いに免じて、ありがたく使わせてもらうよ。使い方はスマホと一緒でいいの」
「はい。ただメール機能と電話機能しか無いので、地球のように便利ではないですよ」
「それだけあれば十分でしょう。地球みたいなのはここでは宝の持ち腐れってやつだよ」
もう一度神様にお礼を言って、皆が集まる夕食時に、使い方を説明しながら電話一人一人に手渡した。
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「侯爵様、わざわざありがとうございます」
「いや、これぐらいしかできないからね。十分に気を付けるだよ」
「はい」
それから一人一人から言葉をもらい、いざ旅立ちの時。皆に手を振り、前を向いた。必ずここに、全員で帰れると信じて。打倒、前世の俺のかたき!
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