3IN-IN INvisible INnerworld-

ゆなお

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三章【記憶】

二十一話 忘れられない忘れた宝物

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 エアイアの街に到着し、ナスティが
「もう日が暮れてしまいました。昔と変わってなければ、入り口付近より奥にも宿屋があります。そちらに向かいましょう」
 と言って案内する。
「入り口付近の宿でもいいじゃない。どうして奥の方の宿屋に行くの?」
 スティアがそう聞くと
「入り口付近は旅の方の多い場所、どうしても宿も満室になることが多いのです。それに……昔悪さしてた場所なので、ちょっと近寄りがたいんです」
 以前、無人島で寝る前に聞いたナスティの話を思い出す。
「あ、そっか。そういえばそういう過去があったって話してたわね。六年経ってるとはいえ、覚えてる人は覚えてるかもしれないし」
「ですです。なのであまり行ってない地域の宿の方が私としても気が楽なので、もう少し歩きますがこちらです」
 そしてようやくたどり着いた宿に一行は入る。部屋は四人部屋があるとのことで男女で分かれて部屋を取ることにした。それぞれ風呂に入り、髪が濡れた状態でミーンたちが廊下を歩いている。すると
「もし髪を乾かすなら手伝うよ」
 廊下で出会ったザントがミーンたちに言う。ザントも髪をタオルで拭いていた。
「あら、でも前は結構大変そうだったじゃない」
 ミーンがそう言うと
「コツはつかめたから、何なら全員一気に出来るようになってるはず。今から僕らの部屋で試してみるところ。ミーンたちの部屋に入るのは気が引けるから、僕らの部屋に来てもらえるかな」
 とザントは女性たちの部屋に入るのをためらい、自分たちの部屋に来てもらうよう頼む。
「そうね。じゃあお願いしようかしら」
 こうしてミーンたちはヴィッツたちがいる部屋の前に来た。ザントが扉をノックする。
「僕だよ。さっき話してたこと試したいから彼女たちも部屋に入れていいかな」
 すると中から
「ああ、構わねーぞ」
 と返事があり扉を開けた。ヴィッツたちも風呂上がりのようで、髪をタオルで拭いていた。ザントは部屋の真ん中に立ち、皆に自分を囲むように立ってほしいことを申し出る。全員がザントを囲む。
「じゃあ魔法を使うよ。ちょっと強力だからしっかり立ってて」
 そう言ってエルフの杖を両手で握り、床に石突を着いた。
「ドライウィンド!」
 唱えた瞬間、突風で一瞬体が倒れそうになる。そして
「もういいよ。乾いてるはずだ」
 と言われ皆が髪を触ると確かに乾いていた。だがあれだけの突風が起こりつつも、部屋の花瓶やカーテンは動いていない。
「あのときより強くなっているな」
 グレイがそう言うと
「うん、特定の範囲にのみ僕を中心に突風を起こして瞬時に髪を乾かす。本来はそんな使い方の魔法じゃないけど、まあ皆と旅するなら使っていいかなって思ってね」
 とザントは答えた。
「それより、今日は色々魔法使ったからお腹が空いたよ。食事はどこか食堂に行くのかい? それとも宿屋の食事で済ませるのかい?」
 とザントは早く食事に行きたい様子だった。
「そこは変わってないのね。なんかちょっと安心した」
 スティアがそう言う。
「寝て自然回復もありなんだけど、やっぱり早めに魔力の補充はしておきたいからね」
 どれくらいザントが食べるか分からないため、近くの食堂に向かった。案の定、ザントの食欲は変わってないようで、ゆっくりであるがモリモリと食べている。魔力の差もあるだろうがグレイもよく食べる。ティアスは魔力が高いがそれほど食べてはいなかった。
「ティアスは魔力高いみたいだけど、そんなに食わないんだな」
 ヴィッツが聞くと
「ええと。私の場合、世界に漂うマナの方が吸収率が高いので食事は少なくて大丈夫です。ミーンも同じですから」
 とティアスが言うので
「そんならグレイも同じじゃねーのか?」
 とヴィッツは再度聞いた。ティアスは小声で
「私とミーンは魚人族そのものですが、彼は生まれ変わりで人間やエルフに近い。だから魔力補充の構造が違うんです」
 と答えた。詳しくは分からないがそういうものなのか、とヴィッツは思いながら食事を続けた。こうして食事を終えて領収書に驚きつつ代金を払い宿に戻る。

 それぞれ部屋に分かれる。ザントは入り口に入って右のベッドに座り、杖の手入れをする。カルロはザントと反対のベッドで用意された部屋着にさっさと着替え寝そべっている。ヴィッツがカルロの隣のベッドに座ろうとすると、グレイがベッドの間にある椅子に座りテーブルに何かを置いて、柔らかそうな布で小さな物を磨いていた。
「何してるんだ?」
 ヴィッツが顔を覗かせてきた。グレイは
「大事な物の手入れだ」
 と一言だけ言った。そして布からちらりと見えたのは淡いピンク色の水晶が付いた金具が歪んだフックピアスだった。それを見たヴィッツが
「あれ? なんでお前がそれ持ってんだよ」
 と言い、腰に下げていた袋の中の小さな木のケースから一セットのピアスを取り出した。グレイが持っているものよりも綺麗で金具の歪みもない。だがそれは明らかにグレイのものと酷似したピアスだった。

「ヴィッツ、それをどこで手に入れた!」
 いつになく険しい表情でグレイが聞くと
「いや、どこで手に入れたもなにも、これ俺の手作りだ。母さんが教えてくれてパーツ貰って何とか作った物だよ。だから世界に一つしかねーはずだ。けど、パーツ持ってきたのは母さんだから、もしかしたら似たようなもんがあるかもしれねー。でもさ、お前のそのピアスの傷とか模様が同じなんだよな」
 そう言ってヴィッツは自分の持っているピアスとグレイが持っているピアスを並べた。金具の歪みを除いて、水晶に入った縞模様や白い点の位置、そして金具に付いているひっかいたような跡の場所が一致する。
「ここまで一緒のもんがあるとは思えねーけど、偶然にも一致しちまったのかもしれねーな。お前はそのピアス、どこで手に入れたんだ?」
 ヴィッツに聞かれ、グレイは自分のピアスを見ながら
「覚えていない。だがあの事故の時、俺は左手でこのピアスが入った布袋を握りしめていた、と国王陛下が言っていた。体を再生させてもらった時、国王陛下が渡してきたのを俺は急いでむしり取ったほどに俺にとっては大事な何かが詰まってるものだ。記憶がなくなる前に手に入れた、でも大事な物なのは確かだ」
 そう言って、グレイは手入れが終わったピアスを小さな木のケースに仕舞い布袋に入れて大事に懐に収めた。
「なんだろうな。お前の記憶が戻りゃあ分かることなんだろうけどさ。まあミーンがこの先進めば分かるっつってるから、そのうち分かるんじゃねーかな。とにかく今日は歩きっぱなしで疲れたから俺は寝る」
 ヴィッツはそう言ってピアスを仕舞い、部屋着に着替えてベッドに入ってしまった。グレイにとっては何とも言えない時間になった。自分がずっと大事に持っていたものをヴィッツが持っていて、かつそれはヴィッツ自身が母に教えられ作られたもの。自分が持っている物と偶然の一致なのかそれとも何かあるのか。モヤモヤと考えつつ、グレイも着替えてベッドに入った。

 翌日、ここから南のキレリアに行くには砂漠を超える必要があるため、カルロを中心に飲み水の準備をする。その間にヴィッツは父のことについて街の人に話を聞いていた。「リンドリウン」と言う名を聞いたことがないか聞いていくが、誰しもが首を横に振る。何人か似たような名前なら聞いたことがあるというが、そのほとんどがもっと東の方で聞いたと言っていた。魔法の事故の件も聞いてみたが、そう言う事故は結構多いらしくなかなか二十年前の事故につながる情報にはたどり着けなかった。
「なかなか見つかりませんね」
 力仕事には向かないティアスはヴィッツと共に父親探しの手伝いをしていた。
「うーん。『リンドリン』とか『リドルリオン』とか似てる名前は聞いたけど。やっぱ珍しい名前なのかなぁ」
 父親の肖像画でもあればいいのだが、そう言った類の物も残っていない。
「ロケットペンダントとか残っていればよかったのですが。ヴィッツのお母さんはそう言った類のものは持っていなかったのですか?」
 ティアスが聞くと
「母さんが残してくれたのはこの形見のイヤリングだけだよ」
 と自身が付けている薄浅葱色のイヤリングを指さした。
「母さんが身に着けていたかは覚えてない。ただ、母さんの葬式の後に親友の家族からお前のお母さんの形見だって渡された事だけは覚えてる」

 ティアスはそれを見て
「一般的なイヤリングですね。特徴がある物でしたらヒントにもなったのですが、この形や付いてる水晶はよく見かける物です。しいて言えば水晶が大きめ、くらいですね」
 と言う。
「まあそうだよなぁ。もうちっと話聞いてダメなら、カルロの所に戻って手伝うか」
「はい」
 こうしてヴィッツの父親探しのヒントは結局得られないまま、二人はカルロたちの手伝いに向かった。鎧を外したカルロが飲み水を大きな皮水筒に入れている。
「おー、お二人さん。どうだった?」
 気付いたカルロがヴィッツたちに尋ねるも
「ダメだ。近い名前は聞いたがこれだ! ってのには会わなかった」
 と首を横に振る。
「まあ仕方ねぇな。とりあえず飲み水は確保しておいた。ミーンの精霊のおかげで水の鮮度も保てるらしいから、これで砂漠越えるまでは何とかなりそうだ」
 そう言って沢山の皮水筒を前に言う。
「なんせ八人分に加えて乾燥に弱い兄貴と姉貴とミーンがいるからな。多いに越したことはない」
 カルロは魚人と生まれ変わりの三人を心配する。すると
「あ、ティアスが年下になったのにいまだに姉貴呼びなんだな」
 ヴィッツがそう聞くと
「十年以上の付き合いだ。俺にとっちゃ年下になっても姉貴は姉貴だ」
 とカルロは答えた。
「でも実際小さくなってしまったので名前で呼んでいただいても大丈夫ですよ」
 ティアスがそう言うと
「肉体は若返ったとはいえ、兄貴と二十七年過ごしてきてる。俺とも十七年くらいの付き合いだ。精神的にはやっぱり大人だから姉貴の方がしっくりくる」
 とカルロは笑いながら答えた。一方、スティアとナスティが皮水筒を馬車に運ぶ。
「そういえば、ナスティ。せっかく故郷に帰ってきたんだから、家族に会いに行ったりしないの?」
 スティアがそう聞くと
「家族は私の本当の仕事も知らないですし、それにこの旅の内容も話せない。今、会えば辛くなるだけですから、この旅が終わってから会おうと思ってます」
 とナスティが答える。
「そっか。この旅終わったら、やっぱりサウザントのお城に戻るの?」
「そうですね。色々考えがまとまってないですが、エアイアの街に戻って普通の仕事を探して家族で暮らすのもありかなって考えてます。ディア様の元に戻るか、家族と一緒に暮らすか。そこはこの旅が終わってから考えようと思います。スティアさんはカルロ王子と結婚なさるのですよね」
「うん。カルロの都合も考えたらそれがいいかなって」
「王子のどういったところが好きになったんですか?」
「え? 特に好きとかそういうの考えたことないわ。元々国同士で決まった許婚同士だし。そこに恋愛感情とか特にないもの。まあしいて言うなら安心して傍にいられる、かしらね」
 ナスティの問いにスティアはあっさりとした答えを言う。
「お互いの国のために、平安な日々を過ごすための結婚だもの。恋愛結婚ならともかく政略結婚だから、お互い納得したらそれでいいって思ってる」
「スティアさんってそう言う面でとってもサバサバしてますよね」
「お城でもよく言われてたわ。淡泊すぎて姫らしくないって。こんな感じで本当にサウザントに嫁げるかって。まあ結果、お互い納得したから結婚するって決めたのよ」
 そうこうしているうちに馬車に皮水筒を積み終えた。そして積まれた皮水筒を見ながらミーンが
「リリア。水の鮮度を保つようお願いね」
 と自身の精霊に頼む。そして
「はい、分かりました。鮮度を保ち、かつ運びやすいように重さを軽減します」
 精霊のリリアが皮水筒の傍で姿を消した。
「これで五日くらいは飲み水として持つわ。今日の馬車で砂漠の手前の村に行って、翌朝に砂漠を進む。ここから何とか三日以内に砂漠を抜けたいところね。砂漠を抜ければ休憩地点の村にたどり着けるから。さあ皆、準備して馬車に乗りましょう」
 すでに準備が整ったミーンは馬車のそばに残り、各自準備をして馬車に乗り込む。平坦な道が続くこの地方。砂漠までは馬車があるので楽だった。迂回して時間をかけてキレリアに向かうルートと、砂漠前の村で休憩して砂漠を越えるルートとある。迂回ルートは非常に時間がかかるため、今回は砂漠を越えるルートを選んだ。馬車の中で会話する。
「兄貴と姉貴とミーンが心配なんだよな。乾燥してるところは苦手だし、砂漠じゃ水魔法もかなり威力が下がる。なんとかオアシスの町までたどり着ければ休めるが、どれくらいかかるか」
 カルロにとっても初の砂漠越え。ディア王からある程度話は聞いているが実際にどのくらいのペースで進めばよいかまでは把握しきれていない。
「皆、砂漠用のローブは用意してあるな。この格好のまま砂漠入ったんじゃ焼け死ぬだけだ」
 全員が頷く。
「砂漠は夜以外は魔物も出ない。戦闘になることもねぇが、夜はたまにうろうろしてるって聞いた。日が昇りゃあ自然に焼け死んじまうから結構腐食した場所もあるって話だ」
 カルロの話に
「そういや具体的に聞いてなかったけど、地面が腐るとどうなるんだ? そうやって自然に死んじまった魔物の跡とかあるなら、なおさら気になる」
 ヴィッツの質問に
「魔物が死んで腐っちまった跡は草一本生えなくなる。広範囲に広がるってのは今のところ聞いたことがないけど。俺があの島で倒した魔物の浄化しなきゃ、あちこち木も枯れて数年以上何も出来ない場所になってた。親父から聞いた話だと十年以上はかかるらしいな、腐った跡が自然に元に戻るまで。その腐った跡を、時間をかけずに元に戻す研究もやってる。こっちはまだまだ研究段階だ」
 とカルロは答える。
「本当研究熱心なんだな。そりゃあ国の仕事をお前に預けてやりたがってるのもわかるわ」
 ヴィッツは笑いながらそう言うと
「そのためにもさっさとこの旅終わらせようぜ」
 と話を終わらせた。そして日が沈む前に砂漠の手前にある村に到着した。カルロとヴィッツたちが荷を下ろしている間にミーンが宿を取りに行く。大部屋はないようで2人部屋を4部屋用意してもらった。それぞれミーンとティアス、スティアとナスティ、カルロとグレイ、ザントとヴィッツに分かれる。ヴィッツが部屋に入ると
「ああ、よかった。一緒の部屋がヴィッツで」
 とザントが言う。
「ん? グレイかカルロのどっちかと一緒が嫌だったのか?」
 ヴィッツが聞くと
「もうされることはないのは分かってるけど、カルロと挨拶した時のぐにゃぐにゃ攻撃は今でも忘れられないよ」
 どうやらカルロのこねくり回し攻撃に対して今でも根に持っていたようだ。
「あはは。あんときゃマジでお前がつぶれるんじゃないかって心配した。あの筋肉でこねくり回されて大丈夫なのかって」
 ヴィッツが笑いながら言うと
「本当だよ。僕が子供の姿なのをいいことに、あんなにおもちゃみたいに遊ばれて。流石の僕もあれは困ったよ」
 とザントは苦笑した。
「今日の食事は控えめに。宿の食堂だからね。それに今日は魔法殆ど使ってないから普通の量で大丈夫」
 そう言ってザントは食堂に向かった。ヴィッツはやっぱりザントは食うことばかり考えているなと思いつつ、ついて行った。

 一方、カルロとグレイは隣同士のベッドにそれぞれ向かい合って座る。
「兄貴」
「なんだ」
「ずいぶん変わったなぁって」
「そうか?」
「ああ。昔は飯も人前で食わねぇし、風呂も一人でしか入らねぇし。それに笑うことなんてなかった。でもあいつが、ヴィッツが来てから変わったんだよ」
 カルロがそう聞くと、グレイは難しい顔をする。
「正直、何が引っかかっているのかは分からん。だが、あいつは俺の平穏をかき乱す。でもそれは嫌な記憶を呼び覚ますのとは違う。漠然とした何かが思い浮かぶ。あいつとは過去に会ったわけでもない。前にも言ったがザルド大陸には行ったことがない。でも、俺の何かを思い出させようとする」
 グレイの言葉に
「んー。本当分かんねぇな。前ならこうやって話しかけても、無視されるか頷くだけだった兄貴が、話し相手になってくれんだもんなぁ。あいつは兄貴の何に引っかかってるのか、やっぱり想像がつかねぇなぁ」
 そう言ってカルロは腕を組み考える。
「ヴィッツもヴィッツでそこんところ分かってねぇからなぁ。あと兄貴の宝物、俺、実は初めて知ったんだけどさ。そのピアス少なくとも十七年以上経ってるし、汚れてんのは経年劣化かな」
「いや、子供の頃は手入れの仕方が分からずに放置していた時期があった。時々何か思い出せないか、取り出して握りしめていた。だから金具が歪んだりしている。今は手入れしているが、だいぶ痛んでしまった」
「そっか。ヴィッツの持ってんのと似てるんだよな。ヴィッツは手作りだって言ってたが。兄貴、もし差し支えなければ俺にも見せてくれないか」
 大事な宝物故に誰にも触らせたくはなかったが、何かヒントが見つかるかとグレイはカルロに箱を渡した。カルロは極力ピアス自体には触らないように箱を開けて見つめる。
「ああ、なるほど。水晶に通したピンの細工はかなり綺麗にできてる。それをフックにかけて固定するところだけちと歪んでる。手慣れたやつがやったもんじゃねぇな、初心者かもしれねぇ」
 そう言ってカルロはふたを閉めてグレイに返した。
「ヴィッツの持ってるやつを見てないから分からねぇけど。水晶とピンの細工は既製品。どのピアスに付けるかでフック型に付けたのが、多分素人の作業ってところだな。それだとどこにでもありそうだが、水晶が一色じゃなくて縞模様になってんのが兄貴のとヴィッツのでほぼ一致してるんだよな? 似たような模様はよくあるが、兄貴とヴィッツが話してるの聞いてた限り酷似したものなんだよなぁ。本当に同じもんお互い持ってるのか分かんねぇ」
 やはり答えは見つからなかった。
「腹が減った」
「はいはい、兄貴。飯食いに行こうぜ。宿の食堂行くぞー」
 そう言ってカルロとグレイは部屋を出た。

 ティアスとミーンは二人ならんでベッドに座る。
「姫、明日からは私たちの体にかなり影響が出る移動になります。無理は禁物ですので、何かあったら言ってください」
 ミーンがそう言うと
「はい。ミーンも体に気を付けてください。私は肉体を得ましたが、これは人間の体ではない陸でも生きれる魚人族の肉体。ミーンも同じでしょう」
 ティアスの言葉に
「そうです。姫も私も陸で辛うじて生きられる体にしてもらっているだけ。皆のおかげで水は用意できましたが、オアシスの町まで持つかどうか……」
 とミーンは不安を漏らした。
「ここは皆に私たちとグレイのことを託しましょう。砂漠で私たちはあまりにも無力です。その代わり、砂漠を過ぎたら私たちで皆を助けましょう」
 そう言ってティアスは立ち上がり
「皆、食事の時間でしょうし、夕食を頂きましょう」
 とミーンを誘う。
「そうですね」
 ミーンもそう言って立ち上がり、ティアスの後をついて行った。

「ああー。ここから砂漠かぁ」
「砂漠ってあまり身近じゃないので、どんなところか気になります」
「乾燥してて砂だらけで、草一本生えない場所。まるで腐った大地みたいなところね」
「そうですね。たまに夜に魔物が出て自然に消滅してしまうんでしたっけ」
「遭わないことに越したことはないから、本当夜の砂漠は移動したくないわね」
 スティアはベッドに寝そべりながら、ナスティはベッドに座って話をする。
「グレイとティアスさんとミーンさんが心配ですね」
 ナスティが三人を心配する。
「グレイは魚人族の生まれ変わりで、ティアスとミーンは魚人族そのものだからね。八人分の皮水筒と余分に持ってきてるけど、恐らく三人は水を飲む量が多いだろうし。とにかく明日の夕暮れまでにオアシスまで行ければ何とかなると思う。うん、思うだけで自信はないけど、私たちでなんとか三人を助けましょう」
「はい! 荷物の移動用にラクダも一頭借りられるとのことですし。いざとなれば私たちが荷物を持ってティアスさんとミーンさんは乗せられるかと。問題はグレイですね」
「そうね、カルロかヴィッツが背負えたらいいんだけど、二人とも荷物持つことになるかもしれないし。うーん困ったわね」
 スティアが考えていると
「まだ三人が倒れるって決まったわけではないですし。無事オアシスの町まで行けることを祈りましょう」
 とナスティが励ます。
「そうね。とりあえず腹ごしらえ!」
「宿の食堂行きましょう!」

 こうして一行は食事も終え、明日は砂漠越えになる。しっかりと睡眠を取り砂漠越えに備えた。
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