3IN-IN INvisible INnerworld-

ゆなお

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四章【理解】

三十五話 巨大要塞都市セルヴィーテ

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 あの森と違ってセルヴィーテへと向かう道のりで出会う魔物たちは狂気でこちらに襲ってくる。その原因と理由が分かった今、迷いなく魔物たちを浄化させるべく倒していく。セルヴィーテに近づくにつれて魔物の数が増えている。フィルが「特にセルヴィーテの方では魔物が多く出る地域もありましたし。そういう面では給料は良かったですよ」と言っていたことを思い出す。それだけに近づくのも危険な場所のようだ。
「なんとか僕らの魔法で一掃出来てるけど。これだけの数の魔物が頻繁に襲ってくるなら傭兵を雇うだけの価値はあるんだろうね」
 ザントがそう言いながら魔物たちを魔法で倒していく。
「でもおかげさまで魔法の使い方に大分馴染んできました!」
 ナスティは魔物を魔法で一斉に鈍足にさせて、皆が攻撃しやすいようにする。そしてベストの内側にしまい込んだナイフを何本も取り出し、魔物に投げつける。手や足を狙い動きをさらに鈍らせる。
「皆さん! 追撃をお願いします!」
 そう言うと
「分かったわ」
「うん、後は任せて」
「任せてください」
「承知した」
 ミーン、ザント、ティアス、グレイは一斉に魔法を唱える。
「おーおー、皆やる気満々だなぁ。おーい! あんま魔力使い過ぎんなよ。魔力切れ起こすぞー」
 声をかけるカルロをよそに四人はどんどん魔物を攻撃していく。こうして体力を削られた魔物の急所をナスティが刺して倒していった。
「なんつーか。魔物を倒すことが悪いことじゃねーって分かったからかな? 少なくとも俺たちは遠慮なく、悪意なく倒せる。だから加減しねぇって」
「彼らにとっては救いだからね。狂ったままで生きているよりは、極力苦しまずに倒して新しい命として生まれ変わった方が幸せなんじゃないかしら。だから全力で戦ってる」
 ヴィッツとスティアの話に
「あんたらは本当容赦ないな」
 とカルロがあきれた様子で二人を見る。
「だって、じわじわ削るよりは一瞬で片付けた方が苦しまずに済むじゃない」
 スティアの言葉に
「いやぁ、すげぇ思考のやつが嫁いでくるんだな」
 とカルロは思わずこぼした。
「別に人間に対してするわけじゃないし。あくまで魔物にだけよ。でも魔物の発生に関しては理解できたんだし。これからサウザントを護るためにも、私とあなたは色々対策を練らなきゃならないわ。まあ、嫁いでからの話だけども」
 スティアがそう言うと
「まあ国民全員の命を預かる身だ。色々考えてくれるのはありがたい。おっと、兄貴たちの討伐も終わったようだ。先に進もう」
 荷物を背負い直して三人は戦闘に参加した者たちのそばに行き、セルヴィーテに向かった。

 前方に見えてきたのは頑丈な壁に囲まれた巨大な都市だった。都市の左側は白い蒸気があちこちから上がっている。
「なんつーか今までと世界が違うような街だな」
 ヴィッツがそう言うと
「巨大要塞都市。魔法の研究も盛んだが、一方で機械と呼ばれる類の物の開発・生産も盛んな場所だ。機械と魔法ってのは相反する力らしく、対立しているわけではないが都市内部で二つに分かれているそうだ。だから左の方だけ雰囲気が違うだろう?」
 とカルロが説明する。
「時計なんかはここから発展した技術で、他の街でも作られている。でも腕時計みたいなもっと小さくて精密な物はセルヴィーテじゃないと正しく動く物も少ないって話よ」
 付け加えるようにスティアも言った。
「とりあえず宿でゆっくり休みたいのだけど、街の構造が分かってる人はいるかしら」
 ミーンが疲れた様子で皆に聞くが、カルロとスティアも機械と魔法で分かれてるという以外、どこに何があるか誰も分からない。
「あれだけの壁に囲まれた大都市。だけど門前払いはないと祈りたいね」
 ザントがそう言うと
「ここまで来たんだ。まずは入り口の門番にでも聞きゃいいさ」
 ヴィッツはそう言って門の方に歩いていく。
「おいおい、あんたは本当に気楽だな。皆、行くぞ」
 カルロに言われて全員は入り口である門を目指した。頑丈そうな木と鉄で作られた門を見上げる。すると門番が声をかけてきた。
「君たち! この周辺は今、魔物の発生が多く危険だ! よくここまでたどり着いたな。早く中へ、と言いたいところだが検査だけさせてくれ」
そう言って手鏡の鏡部分がないような、反対側が見える道具を持ってきた。その道具から門番はヴィッツたちを上から下へと眺めていく。全員を見て
「よし、危険物はないようだな。門を開けよう」
 そう言って合図をして門が開く。扉の中に入ると今までにない賑やかさを見せる街並みが続く。
「さっきのあれ、なんだったのかしら」
 スティアが門でのやり取りを不思議そうに思い返していると
「恐らく魔法で出来た何か、じゃないかしら。見たことないけども、危険を察知すると何かしらの反応を見せるとか……」
 とミーンが言うが
「でも魔法の類の力は一切感じなかったよ。カルロやスティアが言ってた機械ってものなのかもしれない」
 ザントはそう言って魔法の力を感じなかったと言う。一行は街に入ってすぐ目の前にある案内所でにこの都市の地図をもらい宿の場所を聞き、条件が合う宿へと向かった。四人部屋で男女に別れ、それぞれ部屋に入る。カルロは荷物を置くと鎧を脱いでベッドに寝そべる。
「あぁ、キルトからここまで五日くらいかかっちまったな。途中で遠回りしたり、引き返したり。寄り道が多かった。野宿するにも結界を越えて鳴き声もする。安心して寝られないったらありゃしない」
 そう言って大きなあくびをした。それを見てザントは
「見張りに回るのがカルロとヴィッツとスティアとナスティが多かったからね。僕たち魔法が使える面子は極力戦闘のために魔力補充させてくれた。本当にありがとう」
 そう言ってカルロとヴィッツに礼を言う。
「気にするこたぁねぇよ。それ言ったら、寝ずの番して、魔物の止めを刺してって。ずっと動き回ってたナスティの方がよっぽど苦労してるよ。あいつは仕事で慣れてるっつっけど、俺たちよりナスティのことを労ってやってくれ。俺とは直接の関係はねぇが親父の直属傭兵。サウザント国の王子として、俺からの願いだ。本来、一般人の身なのにあんなに頑張ってくれてんだぞ?」
 カルロはザントの方を向いてそう言った。
「そうだね。カルロや僕らの身分と違ってナスティは直属兵であることを辞めてしまうと一般人だし、ヴィッツはそもそも農村生まれの一般人だものね」
 ザントの言葉に
「ああそうだ。俺はただの一般人だよ。でも俺にも役割はあった。グレイの記憶を辿る鍵って大事なことがな。ナスティだって子供の頃から精霊に見守られてきたんだ。たとえ一般人であっても、やっぱ俺たち八人じゃないとダメなんだろう。この旅に大事なものってのがさ」
 とヴィッツは話す。
「ナスティとも話したよ。俺たち二人は他と比べりゃ平凡だなって。あいつはこの旅が終わったら傭兵辞めて実家に帰るってよ。そばで親孝行がしたいっつってた。だからあいつは本当に一般人になろうとしてんだよ。俺はまだ目的が達成されてないからな。父さんが見つかるまでは旅を続ける」
 ヴィッツの言葉にカルロは
「そうか。ナスティ、親父の直属兵辞めちまうのか。ちと寂しくなるが、あいつがそう決めたんなら尊重してやらねぇとな。ザントはこの旅が終わったらどうするんだ?」
 と言い、話題をザントに振る。
「そうだね。僕は旅が終わったらエルフの杖を封印して。そして家族と一緒にエルフの森で過ごす、かな?」
「エルフの杖を封印したらまたちっさくなっちまうのか?」
 カルロの疑問に
「それはないよ。ただ本来なら僕の年齢だと十歳の姿のはずなのに、それ以上早く取り過ぎた。この姿が他のエルフより長くなるだけだよ」
 とザントは答える。
「そっか。まぁ、たまには城にも遊びに来いよ。あんたならいつでも歓迎だ。魔法科学研究所のやつらも喜ぶよ。あんたの魔力の高さには注目してるらしい。身近にそういう精霊使いがいなかったからって話をちらっと聞いた」
「じゃあお言葉に甘えて時々遊びに行くよ」
 カルロとザントは旅が終わった後の再会を約束する。
「で、まあ兄貴はどうするんだ? 城に戻るのは決まってんだよな」
 カルロがグレイに聞くと
「ああ、城には戻る。だが、直属兵としての役目は終わり。俺で出来るかどうかは分からないが、国王陛下の補佐として魔法科学研究所に務めようかと思っている」
 と答え
「ああ! やっぱり兄貴ならそう答えると思ったー! どうせ俺の直属兵にはなってくれないし! やっぱ兄貴は親父のそばがいいんだな!」
 そう言ってカルロは枕を掴んで顔を覆い、いじけてしまった。それを見てカルロの隣のベッドに座っていたヴィッツがグレイに対して
「お前、本当そういうところ空気読めねーな。カルロがどんだけお前のこと慕ってるのか知ってんのか?」
 そう言うが、グレイはキョトンとした顔をする。すると横から
「あんただってそうじゃねぇか! この自覚なしめ!」
 そう言ってカルロは涙目でヴィッツの顔面に枕を投げつける。
「いってーな! 何すんだよ!」
 ヴィッツはカルロに枕を投げ返す。そして二人の抗争が始まった。そんな二人をポカンとした様子でグレイが眺めていると
「君って本当、自覚ないよね……。二人が言い争いしてる原因、理解してないでしょ」
 と呆れた表情でザントがポンと肩を叩く。
「なんだ、ザント。お前は何か知ってるのか」
 グレイの返答にザントはやはりか、と言った顔をする。
「じゃあ説明するとね……」
 と言いかけたときカルロとヴィッツが
「「ザントは言わなくていい!」」
 と今度はザントの顔面にカルロが投げた枕が飛んできた。枕を掴むと
「いやぁ、ここで説明すると邪魔が入るから。もし機会があれば、ね」
 そう言ってグレイに笑顔で言いながら、すごい勢いでカルロの顔面に枕を投げた。枕を手にしたカルロは
「やべぇ。スティアから聞いてたけど、ザントって本当腕力あるんだな……」
 と感心した様子で枕を見つめた。
「まぁ、言い争いはそれくらいにして。スティアたちと合流して今後どうするか話し合おうよ」
 ザントが場の空気を変えるように話題を変える。
「あ、ああ。そうだな。でも今日は疲れたから飯食って風呂入ったら寝たいわ」
 とカルロは再びあくびをする。それを見て
「そうだね。今日はもうご飯食べて、各自自由にしてゆっくり休もうか」
 とザントが言い、四人は部屋を出てスティアたちと合流して食事を済ませることにした。宿を出て食堂を探そうと思った時だった。何やら曲がり角から聞きなれない音が聞こえてくる。ガシャンガシャンと言った音。曲がり角からやってきたのは骨格的には鳥のような姿の鉄で出来た、大人の三倍ほどの大きさの何かだった。本体部分であろう所に人が一人乗っている。大きな鳥が歩いていくように、その鉄の塊は一行の前を通り過ぎて行った。唖然とする一行に対して、歩く街人たちは特に変わった様子がなかった。

「あれ……何……?」
 スティアがそう言うと通りすがりの女性が
「あら、旅の方たちね。さっきのが何か、気になってるみたいね」
 そう言って女性は説明を始めた。
「あれは巡回用の『ヴィゲル』と呼ばれる機械の乗り物よ。意味は古代語の『鳥』と言われているわ。見た目も巨大な鳥みたいだからね。この都市の魔法研究区域以外を見回りしているわ。ちゃんと人が操縦してるから襲ってくることはないから安心してね」
 女性はそう言うとどこかへ行ってしまった。
「本当にこの街って、僕らの知らないものがあるんだね。変な感じがするよ」
 感心しつつも異質な感じを覚えるザントに
「あんたは魔力が強い。ここは機械という魔法と相反する物がある街だ。もしなんか具合が悪いとかあったら遠慮なく言えよ」
 とカルロが声をかける。
「え、う、うん。気にかけてくれてありがとう。まずは食堂行こうか」
 ザントはそう答えて地図を見ながら食堂へと皆を案内した。食堂の店員に聞いた話では、この街は大きく三つに分かれていて北側に機械地区、南に魔法地区があり、その二つを隔てるように商業地と居住地が合わさった地区となっているらしい。そしてその扇状に構成された三区間の要にあるのがセルヴィーテ城である。こうして大体の都市の構図を把握した一行は食事を終えた後は自由時間とし、各自休憩したり街を散策したりする。カルロは部屋に戻り寝ることにし、ミーンはナスティとスティアと三人で服の修復へと向かう。ザントとグレイは魔法区域付近へと向かった。ティアスはヴィッツに声をかける。
「皆さん、お休みしたりお買い物に行ったりしてしまいましたね。こうやって二人だけになるのは無人島、そしてあの森以来でしょうか」
 そう言うティアスに
「そうだなー。その姿になっちまってからは二人だけってのはあんまなかったな。なんか不思議な感じだな。前は母さんを思い出す年上の人だったのに、今じゃあ、じゃじゃ馬な姫様だ」
 とヴィッツが笑う。
「そうですね。以前より気持ちも若返ってしまったのか、色々とご迷惑をおかけしました。本当に申し訳ないことをしました」
 ティアスは反省した様子で少し頭を傾けた。
「ああ、それに関しては結果としては良かった。たしかにやっちゃいけねーことはしちまったが、あの件がなかったらグレイのやつは変われなかった。だから、今度からは気を付けりゃいいさ」
 とヴィッツは励ます。すると
「ヴィッツは本当に優しいですね。以前と立場が逆になってしまいましたね」
 と笑う。何気ないやりとり。今まで女性に対して出来なかった会話が出来る。そう実感する。街中を散策しながら、案内人にも言われたとおり機械区域と魔法区域の中には入らないようにする。緩やかな狭い坂道を上っていると、前方に先ほど聞いたヴィゲルが止まっている。特に気にもせず坂を歩いていると、乗員が降りていたヴィゲルが突然歩き始めた。
「あっ、ちょっ、待て!」
 慌てる乗員を見た周囲の人々もそばの家に逃げるように入っていく。ヴィゲルは徐々に加速し始めこちらに向かってくる。
「そこの人ーっ! 逃げろーっ!」
 そう言われるも突然走ってくる鉄の塊にヴィッツは慌ててティアスを抱きかかえる。
「ティアス! 俺にしっかり捉まってろ!」
「はいっ」
 抱きかかえられたティアスはヴィッツにぎゅっと抱きつく。ヴィッツは大急ぎで坂を下る。無人で走るヴィゲルと追いかけっこをする形となったヴィッツは、突き当たりまで行くと左の通路に飛び込んだ。次の瞬間、突き当たりの家の塀にヴィゲルはめり込んで止まった。振り向いて唖然とした様子でヴィゲルを眺めていると、乗員だった兵士が慌てて走ってくる。
「あちゃー、こりゃあ修理行きかぁ……」
 頭を抱えて愕然とする。そして、慌ててヴィッツたちの方に向き
「いや、すまない! 迷惑をかけてしまった。本来なら鍵をかけてブレーキをかけておかねばならないところ、まだ訓練中故に操作を誤った。怪我人が出なくて本当に良かった。はぁ……だが給料からヴィゲルの修理代に、この家の修復代に飛んでいくなぁ……」
 そう言いながら自身のヴィゲルの元へと兵士は向かう。騒ぎを聞きつけた他のヴィゲルに乗った兵士たちが集まり、修復が必要なウィゲルを運んでいく。近所の子供たちが
「ヴィゲルってさ! たまにぼーそーしたり、勝手に動いちゃったりして、俺たちも追いかけっこやってるよ!」
「前にも操作間違っちゃって噴水に突っ込んで、一台ダメにしちゃったんだよねー」
「機械は水に弱いからなぁ。雨くらいなら大丈夫だけど、水に沈んだら、はい終わり! だよ」
 と説明する。そして
「ところでにーちゃん。そのねーちゃん、お姫様抱っこいつまでしてんだ?」
「なになに、二人とも付き合ってるの? ケッコンするの?」
「ヒューヒュー!」
 と子供たちが茶化してくる。すると親であろう大人たちがやってきて謝りながら子供たちをそれぞれ連れて行った。
「何だったんでしょう……」
「さぁ……」
 ヴィッツとティアスは顔を見合わせる。少し頬を染めつつも、フッとお互い笑う。ヴィッツはティアスを下ろすと
「まぁ、宿に戻るか。流石に俺も疲れたよ」
 とヴィッツが言う。
「そうですね。ゆっくり休みましょう。ヴィッツ、ありがとうございました」
 ティアスはヴィッツの手を引いて宿へと向かった。内心、女性とのやりとりがまともに成立していることに驚きつつも、このままずっとティアスと一緒にいられたらいいのにと思うヴィッツだった。こうしてそれぞれ用事を済ませた一行は宿で一晩過ごす。

 一夜明け、宿の朝食サービスを受ける。八人揃い話をする。ミーンは
「セルヴィーテまで来たはいいけれど、これからどうするか、ね」
 と全員に今後の行動について話す。ザントは
「とりあえず食事が終わったら僕らの部屋に来てもらっていいかな。そこで詳細を話したいんだ」
 と周りで食事をしている宿泊客を見ながら言う。カルロは
「まあそのための旅だしなぁ。まずは飯食って腹を満たそう」
 とテーブルに並ぶ料理を食べる。スティアが
「みんなの服のほつれとか直してもらったりしたけど、このあたり来るとちょっと寒い感じがするのよね。それでいっそのこと服替えようかなって。この中で薄着なの、私とナスティとヴィッツだから、話し合い終わったらちょっと服見に行きましょうよ」
 とナスティとヴィッツに声をかける。
「あー! ちょっと肌寒い感じがするのは」
「このあたり、寒冷地域か」
 とナスティとヴィッツが言う。それを聞いてザントが
「ああ、そうだ。このあたりは雪の精霊が住んでいるとされてる。今の時期は雪は降らないけど、それでも一年を通して他の地域より寒いんだ」
 と説明をする。それを聞いてグレイは
「雪の精霊。冬の精霊とも言われているがどちらが正しいか分からん。だが、水の精霊に類する亜種のような存在だ」
 と話す。
「今後のことも考えて三人は話が終わったら出かけると良いわ。姫はフードを着れば大丈夫だからそのままでも大丈夫でしょう」
「はい。私はこれが正装ですからこのままで大丈夫です。ヴィッツにスティアにナスティはどうぞ着心地の良い服を見つけてきてください」
 ミーンとティアスの言葉にうなずき、全員食事を終えるとヴィッツたちの部屋へと向かった。全員で部屋の中心に輪になって並ぶ。ザントはエルフの杖を呼び出し魔法を唱える。最初の頃と比べるとかなり大きくなった赤い矢印が東を示す。
「セルヴィーテに向かうまでは明らかに北東の方向を向いていた。でも、セルヴィーテに到着した途端、東を示して矢印がさらに大きくなった。色も黄色から赤色に少しずつ変わっていたものが、ここで完全な赤色になった。これは……」
「セルヴィーテ城か。それよりももっと東のリュナ大陸かねぇ……」
 ザントとカルロがそう言う。するとミーンが
「ああ、そうそう。極力この街ではリュナ大陸と言う単語は言わない方がいいわ。街の人がリュナ大陸の話を街中でした途端、見回りの兵士に色々話を聞かれていたわ。聞いてみたら外だけで建物の中で聞こえないなら大丈夫みたい。前にも師匠が言ってた『セルヴィーテで働いていた時もリュナ大陸方面を警戒していた』話があるくらいだし、その名前をうかつに話すのも危ないようなの」
 と話してきた。スティアは
「何とかして城に入って確認したいところね。ここ、警備が厳しいみたいだし。セルヴィーテ城にコネでもあればいいけれど。残念ながらアルデナスもサウザントもこことは交流がほとんどないわ」
 と考え込む。それを聞いてヴィッツが
「城の誰かと親しいやつがいればいいってことなら、一人当てがある」
 と言う。
「珍しいな。お前に城に関わる知り合いがいるとは」
 グレイがそう言うとヴィッツは
「まあ、俺が直接知ってる相手じゃねーけどよ。スティーブさんの奥さんがここの城で王宮魔術師として務めてるって話だ」
 と話すが
「でもスティーブさんに手紙を書いてもらったとしても、門前払いされてしまう可能性が高いですね……。たとえ受け取ってもらえたとしても、ご本人に渡る前に見られる可能性もありますし」
 とティアスが言う。すると
「あ! クリスさんが言ってらしたブライトさんはどうでしょうか。クリスさんに腕時計を送った方で、この街でお師匠様のもとにて勉強していると言ってました。この街の方なら協力していただけるかもしれません」
 とナスティが言った。ミーンは
「この際、たとえ城関係者じゃなかったとしても話して損はないと思いたいわね」
 そう言って
「とりあえず私たちはブライトと言う人物を手分けして探しましょう。スティアたちは新しい服に替えてくるといいわ。各自昼食までにはこの宿に戻りましょう」
 ミーンが号令を出して、ブライトを探す組と衣替えする組に分かれた。
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