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四章【理解】
三十六話 小さな毒舌研究者
しおりを挟む街の戦闘服を扱うお店へと向かったヴィッツとスティアとナスティ。ここは女性向けの服専門店のようで、スティアとナスティがあの服がいい、この服の方がいいかも、と賑わいながら話すのをヴィッツは遠巻きに眺めている。二人は動きやすさを重視しつつ、寒さも防げる戦闘服を選んだ。スティアはいつも通りのピンクを基調とした服に。ナスティはオレンジを基調とした上着に変えてみた。
「肌が出る部分もかなり減ったし、これで寒さはしのげそう」
「動きにも支障はないですし、私もこれで満足です!」
そんな二人を見て
「俺はあんまよく分かんねーけど、二人が納得したならそれでいいんじゃねーかな」
とヴィッツは言う。二人は料金を支払うと
「ヴィッツも半袖じゃ寒いでしょ。男性向けのお店に行きましょう」
「さぁヴィッツさんも新しい服に!」
とヴィッツを引っ張り別の店へと走って行った。男性向けの戦闘服を見つつヴィッツは
「あー、そういやどうせなら肩当てとか胸当てとかあると助かるなぁ。割と攻撃されやすい部分ってのもある」
と防具を見ながら言った。
「そうね。ヴィッツはどちらかというと戦闘の場合、前に出て攻撃を受ける戦い方になるからね」
「服の方が決まったら、そちらに合わせて防具も決めましょうか!」
ヴィッツは厚手のハイネックな白いスウェットシャツを選んだ。そして主に守りが薄くなる左側を保護する形の肩当てと胸当てを身につける。
「んー。今まで薄いシャツだけだったから、ちと慣れるまでは動きづらいかもしれねーな」
ヴィッツがそう言うと
「大丈夫よ。すぐ慣れるわ」
「今までの薄着で無事だった方が凄いくらいですよ!」
とスティアとナスティが言う。
「まあ俺、ほとんど荷物持ちだったからさ。時々は戦闘にも出てたけど。やっぱ前に出ると防御面で不安があったから、これで安心出来るかな」
こうして戦闘に関する装備知識もないヴィッツに色々とスティアとナスティが指南して、服と防具一式を購入した。新しい服と防具に身を包んだ三人は宿へと帰る。かなり時間が経っていたようで、昼を過ぎていた。宿のロビーにはすでに五人揃っており
「買い物からおかえり。とりあえず情報共有したいから、僕らの部屋へ来てほしい」
とザントに言われる。一行は部屋に戻るとまずはヴィッツたちの服装について話した。
「その格好なら充分ね。寒さもしのげて動きやすさも重視してる。ヴィッツは防具も買ったのね」
ミーンの言葉に
「ああ、俺はやっぱまだ戦いには疎い人間だ。荷物担いで守りに徹することも多い。そうなると、防具が必要かなって思った」
とヴィッツは答える。
「そうね。その方が良いと思うわ。まあ服装の話はこれくらいにして、集めてきた情報だとカルロが掴んできたみたいよ」
そう言ってミーンはカルロの方を向く。カルロは
「ああ。俺は機械区域近くで話を聞いた。アークっていう機械区域でもかなり有名な研究者がいて、そいつに弟子入りしてるのがブライトだって話を聞いた。スティアとナスティが師匠がどうのこうの言ってたから、恐らく間違いないだろう」
と言うが
「ただ問題は機械区域への立ち入りは規制がかかってるらしい。さて、居場所は分かったがどうやって入り込むか。あるいは呼び出すか、だなぁ」
と付け加えた。それを聞いたヴィッツは
「まあ考えたところで何も変わらねーし。その機械区域の入り口まで行ってみようぜ」
と言う。それを聞いてカルロは
「あんたは本当気楽だなぁ。でも、それしかねぇな。ここで対策練ってる時間も無駄だ。よっし、そんじゃあ行きますかね」
と全員で食事前に先に機械区域へと向かった。
街の北側に位置する機械区域に近づくにつれて、鉄と油のにおいと蒸気の湿気が充満する。そして住宅地や商業地と違った建物が沢山建っている。こうして住宅地と機械区域の境目である唯一の出入り口にやってきた。門のような扉はないが、道の両端に赤や青に光る二本の柱が立っている。その前に立っている兵士が
「君たち、この街の住民ではないね? ここは機械区域だ。誰でも通す訳にはいかない場所だが、ここに用事でもあるのかな?」
特にまくし立てるように追い返す様子もなく聞いてくる兵士にカルロは
「ええと、ブライト氏を訪ねてきた」
と言う。すると
「ああ、アーク先生の助手の方か。知り合いか何かかな?」
と聞いてきた。そこにスティアが
「そのブライトさんの故郷の方が彼の安否を心配してるんです。何年か前にここに来た一年後に腕時計を送ってもらってから、連絡がないから元気かと心配してて」
とクリスの話を出してきた。
「なるほど。直接の客人ではないが、ブライトさんのことを聞きたいんだね」
そう言う兵士に
「出来れば直接会って伝えたいんですけど、無理ですかね」
とスティアは様子をうかがった。
「うーん。とりあえずアーク先生のところに連絡を入れてみよう」
そう言って兵士は腰にぶら下がっていた片手に収まるくらいの機械を取り出す。何やら指先で操作をすると、聞き慣れないピーピーと音が鳴り始めた。しばらくしてその機械から声が聞こえる。
『はい、こちらウルグス研究所です。何かご用でしょうか』
「ああ、ブライトさん。こんにちは、機械区域入口警護隊の……」
そう兵士が言いかけた瞬間、機械の向こうからものすごい音と共に少年の怒鳴り声が聞こえてきた。
『おい! 今そこに八人の奴らがいるだろう。そいつらを俺の研究所に連れてこい! 三分以内に連れてこいよ!』
そう言ってブツリと通信が切れる音がした。その場にいる全員が唖然とするが
「ああ、アーク先生また機嫌が悪いな……。先生から許可が出たから案内しよう。バリア解除するぞ」
もう一人の兵士に合図して二つの柱の光が消えた。
「さあ、先生の機嫌を損ねたら大変だから、急いで付いてきてくれ」
そう言って兵士は走って一行を案内する。一行は折れ曲がった緩やかな上り坂を走り、そして角にある一軒の大きな建物の前にたどり着いた。
「ここがアーク先生とブライトさんの研究所だよ。では私は門の警備があるので戻らせてもらおう」
そう言って兵士は元の道を帰っていった。なんとか機械区域に入ることが出来たが
「なんで俺たち八人がいるってのが分かったんだ?」
「そもそも相手は私たちのこと知らないのに、なんだか知ってる風な様子だったけど」
カルロとスティアがそう話していると研究所の扉が開き、中から白髪を後ろでくくった三白眼の十歳くらいの白衣の少年が出てきた。
「おう、とりあえずここじゃなんだ。中入れ」
先ほど聞こえてきた声と同じ主のようで、口の悪い少年は研究室の中に入るのを促すように扉にもたれかかる。言われるがままに一行は研究所の中へと入った。そこは見たこともない機械が沢山並んでおり、奥に続く通路の真ん中に眼鏡でオールバックの青年が立っていた。
「ようこそ。ここじゃ窮屈なので書斎になりますが、こちらへどうぞ」
そう言って青年が案内する。全員が研究所の中に入ったのを確認すると、扉を閉めた少年は全員の間を駆け抜けて一番に書斎へと入った。青年に案内されて書斎へと入ると、少年は目の前のデスクに足を乗せた状態で椅子に座ってこちらを見ている。一行が何か言おうとする前に
「よぉ、姫にミーン。千年ぶりの再会たぁ乙なもんだなぁ」
と少年は言う。その言葉にティアスとミーンは混乱する。
「えっ……」
「私と姫を知ってるって、千年ぶりって……。あなたも魚人の生まれ変わり……?」
ティアスとミーンがそう言うと
「ミーンよなぁ。お前が時空のゆがみに入ってから、どんだけ俺らが苦労したか知らねーだろうが。マジもんの大騒ぎだったんだぜ? まあ俺はその数日後に死んじまって生まれ変わったのがこの時代だけどもよ。ハッ、俺が誰だかわかんねーよな。ま、分かった方がすげーよ。俺様の名前はアーク・ディン・ウルグス。転生前の名はグエーリン、だ」
そう言ってニヤッと笑う。ミーンは冷や汗をかきながら
「グエーリン……。近衛兵でも随一の強者とされていた老兵。晩年は、若手の育成に専念してた……」
そう言って
「アシェラザ師匠にグエーリン元近衛兵長に! ここまで前世の記憶がある魚人の生まれ変わりが出てくるなんて思ってなかったわ!」
と頭を抱えた。
「はっはっは! 相変わらずミーンは変わってねーな。おぉ、俺は今最高に良い気分だよ。この若い体に、この時代に生まれ変わって機械なんつーもん見たら、前世の血が騒ぐぜ。俺の戦術を生かした機械兵器の研究が捗るってもんよなあ!」
そう言ってアークは笑う。そして
「あー、よく見りゃ姫も変わんねーな。俺はもう生まれ変わった身だから敬意は見せねーぞ。俺はあくまでもアークとして生きてんだ」
と言う。
「まあまあ、師匠。皆さん、ほとんどの方が理解してませんし、順を追って説明しましょう。私は助手というか弟子というか、師弟関係にいますブライト・タナーと申します。以後お見知りおきを」
ブライトはそう挨拶し、続けて
「皆さんがここに来ることは師匠がすでに察知しておりましたので、皆さんのお名前やここまでの経緯などは存じております。師匠の手荒な歓迎で色々混乱しておりますでしょうし、まずはソファーに座ってください」
入口のすぐ左右に四人ずつ座れるソファーがある。男女で分かれてソファーに座る。
「私はお茶を入れてきます。少し席を外しますね。師匠、あまり混乱をきたすような話はしないでくださいよ」
そう言ってブライトはお茶を準備しに部屋を出て行った。アークと一行だけになった部屋で、まずミーンが
「グエーリン元近衛兵長……」
と言うと
「俺様はアーク、だ! その時代の俺は、記憶は残ってるけどもういない! その名前で呼ぶんじゃねぇ!」
とアークが声を上げる。
「前々から厳しい方ではありましたが、今だとただの生意気な子供じゃないですか……。もうちょっと口調くらいは直した方がいいんじゃないですか?」
ミーンがそう言うが
「うるせーなぁ。俺にゃあ丁寧な口調なんて似合わねーんだよ。昔と比べりゃ性格は大分丸くなってんだろ? 口調くらいいじゃねーか」
と全く態度を改める様子はないようだ。見かねたスティアが
「ねぇ、ミーン。あの子っていうかあの人もフィルみたいな感じなの?」
と小声で隣にいるミーンに聞いてくる。ミーンは額に手を当てながら
「そうよ。アシェラザ師匠がフィルに転生したのと同じで、彼はグエーリン元近衛兵長という、若い頃は歴戦の強者とされてた人。元々荒い口調の人ではあったけど、当時とは違う意味で生意気な口調の子供よ。私たちの国でも面倒くさい人扱いだったから、フィルよりも面倒くさいの」
と言うと
「へっ、悪かったなぁ面倒くさい奴でよぉ。まあ面倒くさいっつーより、近寄りがたかったんだろ? いっつもあいつキレてんなって。そんなもんだろう」
とアークが割って入る。
「そうです。いつも怒鳴ったりして、本当近寄りがたかったですよ。子供の頃の姫もおびえるて泣くくらいでしたから」
ミーンの言葉に
「仕方ねぇだろ。優しいジジイなんかやってたら育つ兵も育たねぇ。あーそういやアシェラザの話が出てたが、あいつもこの時代に転生してんのか?」
とアークは聞いてきた。
「はい。エアイアとキレリアの街の間にある砂漠のオアシスで、フィルという青年として今は生きてます。アークと同じく記憶が残った状態で生まれ変わってましたね。二十五歳と言ってました」
ミーンがそう話すと
「へぇ、あいつの方が年上として生まれ変わってんのか。あいつは数少ない俺の話し相手だったなぁ。でも俺より先に死んじまった。そっか、あいつの八年後に死んだ俺は今ようやく十歳だ。死んだ時期は八年しか差がねぇのに、やっぱ生まれ変わるタイミングってのはズレが生じんだなぁ。でも俺はあいつより二年長生きした。うん、そこだけは誇れるな」
そう言って過去の思い出に浸るアークに
「そういえばフィルはセルヴィーテで傭兵として魔物討伐をしてた時期があると聞きました。そのときお会いになったりしてないんですか?」
とミーンが聞くも
「どうせ五年以上は前の話だろう? 記憶があるにせよ五歳以下の俺が傭兵のにーちゃんに会うようなこたぁねぇよ。俺はその頃は勉強に必死だった時期だ。図書館に通い詰めで勉強してたから、外のこたぁ興味なかったな」
そう言って机の引き出しから袋を取り出し、飴を一つ口に入れた。口の中で飴を転がしながら
「大人ならたばこでも吸えんだがなぁ。流石に怒られっから飴でいつも我慢だよ」
そう言って飴をかみ砕く。そんな姿を見てティアスは
「昔よりは怖さは感じなくなったみたいです」
と言う。
「なんて言うか昔は本当に怖かったんですけど。今はそのお姿もあって怖さが和らいで見えます」
ティアスの言葉に
「そうだろうそうだろう。あの頃の怖いジジイと比べりゃ、この姿の方が怖かねぇよなぁ」
とアークは同意する。しかし
「でも年相応の言葉遣いは大事だと思います」
とティアスは付け加えた。すると
「ハッ! 二十七になったり十六に戻ったりする姫には言われたかねーよ」
と言う。
「今、二十七といいましたよね? アーク、どこまで知ってるんですか?」
とミーンが問いかけるが
「そこはブライトが帰ってきてからだ。それまではゆっくりしてろ。全員揃ったら話す」
とアークはもう一つ飴を口に入れて静かにしている。しばらくして十人分のカップをトレーに乗せてブライトがやってきた。
「大変お待たせしました。流石に人数が多いと一つのティーポットでは間に合わず。ささ、どうぞ」
そう言ってブライトは一行の前のテーブルにティーカップを置き。アークの前に置いてから、自分の分をアークのデスクの端に置いた。アークは足を下ろしてカップを持つ。
「師匠の話し声が台所まで聞こえてきましたよ」
ブライトにそう言われると
「俺の声が大きいのはしかたねーだろ。それに混乱をきたすような話はしてねーし」
と言って一気にお茶を飲み干した。
「淹れたてのお茶を一気に飲み干すとか、やけどしねーのかな」
アークの様子を見てヴィッツがそう言うと
「ああ、俺は逆に猫舌だ。かなり温めにしてもらっている。だからブライトがここに来るまで時間かかってたろ」
そう言ってカップをデスクに置いた。
「ま、見た目通り体はガキなんだよ。記憶だけジジイのままだ。それは置いといて、ブライト。こいつらに話してやれ」
アークにそう言われ
「はい、師匠。まずは皆さんの経歴の確認からさせていただきます」
そう言ってアークの机の引き出しから何らかの端末を出してきた。裏面は無地だが、表は何かが映るようになっている。座っているヴィッツたちからは見ることが出来ない。ブライトはその板を見ながら
「ええと、まずはリスト順に確認させていただきます。ヴィッツ・ウェアルドさん。二十歳。ザルド大陸ワルトゥワの村出身。家族構成は母親一人でご自身が五歳の時に病気により死亡。父親は生き別れで、どの町出身かは不明」
と言う。
「あ、ああ。合ってるな」
「続いてスティア・クレト・エレストニアさん。十八歳。アルデナス城第一王女ですが、勝手に許嫁が決められたことに反抗し家出。以降、ザルド大陸に渡り今までの修行の成果を確かめるために実践を通して日々修行。途中、修行の旅に出たザントさんと出会う」
「ええ、そうね。間違いないわ」
「そしてザント・オーリさん。人間換算で二十年生きているが、力を抑えられていたためしばらく五歳から見た目が成長しなかった。エルフの杖の封印を解くことで、杖の力を最大限発揮できる二十歳の姿になる」
「う、うん。そうだけど、エルフの森であったことまで知ってるって。どういうことだろう」
「詳細は後で説明しますので、続けさせていただきます。ミーン・ソリアエルさん。二十九歳。本来なら千年前に居た魚人であるが、千年前の事故により竜人に頼まれて陸でも生きられる体にしてもらう。そして時空のゆがみがこの時代とつながっていることが分かり、任務として時空のゆがみに入りこの時代にたどり着いた」
「そうね。私は過去を見る側だったけど、こうやって自身の過去が暴かれるのってこんな気持ちなのね。不思議だわ」
「そうですね。普通じゃ体験できないことですから。次、ナスティ・クレセントさん。十八歳。両親と四人の弟妹たちが居て、病気の両親を助けるために年齢的に働けないご自身は盗みを働く。十二歳の時に現サウザント国王ディア氏に盗みを働き捕まるも、その能力を買われて特殊部隊の一人として働くことになる」
「わぁ、私の家族の人数まで把握してるんですね! なんだか自分のことが筒抜けでちょっと怖いです!」
「事情があります故に、色々調べております。申し訳ありません。では次はグレイ・ハウ・ラインドさん。二十七歳。元々はウィル湖の真下にあった村出身で、水の月で水の日に生まれた水神の生まれ変わりとされる水を統べる力を持つ。そしてこの時代の闇を司る者でもある。事故により記憶を失っていたが、現時点ではすべての記憶を取り戻している」
「間違いない」
「では次、ティアス・リラ・ウォリン・エリアストさん。十六歳。千年前の次期王位継承権を持つルードリー海域を住まいとする魚人族の王女。時空のゆがみ付近は立ち入り禁止とされていたが、秘密裏に近寄り必死に逃げるも魂だけこの時代に移動。グレイさんと魂が同化したが、エルフの杖の力で分離し、本来の姿になる。光を司る者である」
「はい、間違いありません」
「それでは最後になります。カルロ・オディルア・ヴェストラットさん。二十四歳。サウザント国の第一王位継承者である王子。十五歳の時に修行のため、ナトルイア島に向かい無人島で生活し修行を積む」
「まあ俺の経歴はそれくらいだな」
こうして八人の詳細を話したブライトは
「それでは本題に入ります。皆さん八人は基礎精霊に選ばれた「エルフの杖の封印を解く鍵」であり「竜人の元に導く鍵」でもあります。精霊たちはただ闇雲にその人物を選んだわけではありません。基礎精霊の中でもよりマナの根源に近い場所にいる精霊と契約出来る者だけが選ばれます。だから一般人でも、その精霊に選ばれたのならばその鍵の役目を果たさねばなりません」
ブライトに言われてヴィッツとナスティは離れたところから顔を見合わせる。
「やっぱ、精霊に選ばれたってのが大事なのか」
「そうみたいですね!」
二人はそう話す。
「そして皆さんが探している竜人の手がかりはここセルヴィーテ城ではなく、リュナ大陸にあります」
突然核心の話になりミーンが
「ちょっと待って。そういえば何気なく聞いてたけど竜人の話も基礎精霊の話もしてたけど、あなたたち一体どこまで知っているの?」
そう問うとアークが
「ミーン。俺が記憶持ったままこの時代にいること、それが何するか意味分かるか?」
と問いかけ、そして
「つまり、だ。俺はミーンが時空のゆがみに入った後のことを知っている。あの後、お前が入った時空のゆがみは消滅し、それ以降一切出なくなった。これ以上、後続の部隊も送れねぇって大騒ぎになったもんだよ。そんで、その後がどうなるか一か八かの賭けで寿命が近かった俺は死んでこの時代になんとか生まれ変われた。記憶が残るかも、きっちり千年後に行けるかも不安だったが、無事この通り記憶もある状態で転生できた。ま、未だガキの姿ではあるけどよ。んで、物心ついた俺はひたすら機械の勉強と研究をして、そして七歳の時にセルヴィーテ城に招き入れられた。そこで真実を明かされた。それが『もうすぐ基礎八精霊を宿した八勇士が竜人を探しにやってくる。彼の者を探し出して導け』ってことだ。恐らく傭兵としてフィルのやつがここにいたってことは『セルヴィーテはリュナ大陸を警戒している』って話を聞いてるだろう。あれは表向きにこの大陸のもんを軽率にリュナ大陸に行かせないための言い訳だ。あの場所は竜の住む神聖な大陸。この大陸と海峡で隔たれているが、容易に行ける場所じゃねぇ。それでも興味本位で行く奴がいるから、色々仕掛けてあんだ。まあ、そういうわけでお前らがくるのをずっと待ってたんだよ。お前らをリュナ大陸に渡らせるためにな」
とアークは話す。続けてブライトも
「皆さんのプロフィールを調査されたのも現セルヴィーテ国王です。セルヴィーテ城は代々リュナ大陸の見守りを務める役目を担っています。そのため竜人のこと、竜人に関わる人物のことも色々調べています。皆さんがお探しの竜人もすでに誕生しているとのことです。まだ意識は目覚めていないため、皆さんの力で目覚めさせる必要があるでしょう。リュナ大陸に渡るために大がかりな作業になります。数日はここセルヴィーテの街で過ごしてください。元々準備は進めていましたが、決行のための整備が必要なのです」
と話す。聞いた話にカルロは
「やべぇな。ちょっとでもセルヴィーテ城に入れるコネでも出来ればと、藁にもすがる思いでクリスの知り合いを訪ねてきたってのに。まさか、ここまでピンポイントに核心の話にたどり着くとはな」
と言う。それを聞いてスティアが
「ああ、そうそう。ブライトさん。キレリアの街に住むクリスがあなたとの再会をずっと待ってるわ。腕時計を送ってもらったこと、凄く喜んでて今でも大事にしてるわよ」
と思い出して話す。すると
「ああ、イマニカ家の御令嬢ですね。知的な男性が好きだということは存じておりますが、私は不釣り合いな人間ですから」
とブライトは苦笑いしながら話す。
「そんなことないわよ。すっごい真面目な人じゃない、この師匠と比べたら」
スティアがそう言うと
「ははは。師匠はたしかに口も態度も悪いですが、勉強と研究は一途で熱心な方です。だからこそ私は師匠の元で働いています」
とブライトは答えた。それに対してアークが
「口も態度も悪い師匠で悪かったですよー。お前ら、あんま俺のこと馬鹿にするとリュナ大陸に行く計画止めちまうぞ」
と言うが
「世界の命運に関わることですから、いくら師匠が拗ねてもダメですよ」
とブライトが言う。
「へいへい。まあそういうこった。準備が出来たら呼びに行く。あとこの機械区域の出入りも許可通しとく。ただ俺の研究所以外にはあんま行くなよ。ああ、あと何かお前ら通信媒体になるもんもってねーか。これで連絡すっからよ」
そう行って門番が持っていた物と同じような片手に収まる四角い機械を取り出した。
「それ、何? 仕組みとしてはサウザントのキーコインによく似てるけど、魔法の物じゃないよね」
ザントが尋ねると
「ああ、サウザントでも似たようなもんがあんのか」
とアークが聞くのでザントはアークに自分のキーコインを見せた。後ろで座ってるカルロが
「城の付近限定だけど、魔法科学でマナの力を利用したキーコイン同士での会話が出来る。離れすぎると使えないのが欠点だ」
と説明する。ザントに渡されたキーコインをアークは見ながら
「これなら波長合わせたらなんとかなりそうか。おい、このキーコインは全員もってんだな?」
と言う。
「ああ、俺とスティアと兄貴と姉貴とナスティは特別な、他三人は来客用キーコインを持ってるはずだ」
カルロがそう答えると
「よし、全員のキーコインをこの机に並べろ」
とアークが促す。
「なんか使いもんにならねーことにするなよ?」
カルロが念を押すと
「心配すんな。お前らの手持ちには一切改良は加えん。こっち側の通話機の設定いじるだけだ」
と言ってキーコインを触りながらアークは通話機と言った機械を操作する。しばらくして
「よし、これで出来たはずだ。元の奴ら、持って行け」
そう言われ各自、自分のキーコインを持つ。
「ちょいとテストだ。一般的なやつと特殊なやつとそれぞれテストする。ブライトはこれ持って廊下に出ろ。まずはヴィッツ」
アークに言われブライトが廊下に出る。少しして、ヴィッツが持っていたキーコインから奇妙な音がなる。
「キーコインを一瞬だけ強く摘まんでみろ」
アークに言われヴィッツはキーコインを摘まむ。
『ヴィッツさん、聞こえますか?』
と廊下に居るはずのブライトの声がはっきり聞こえる。
「お、おお……。話し声が聞こえる。これ、魔法の力と違うんだよな? キーコイン同士じゃねーのに会話できんのすげー」
ヴィッツが感動していると
『こちらの機械の波長を魔法の力に合わせました。詳しいことは話せませんが。では別の方のをテストさせていただきます』
そう言うとプツッと音がして通信が途絶えた。続いてカルロのペンダントから音がする。ヴィッツの時と同じようにペンダントを少し強く摘まむ。
『カルロさん、声は聞こえてますか?』
「ああ。しっかり聞こえてる。これ、別々の人間に通信出来るってことか。機械ってのもすげーもんだな」
『先ほどヴィッツさんにも話したとおり極秘内容ですからね。テストにご協力ありがとうございました』
そう言ってプツッと音が途切れると、ブライトが部屋に戻ってきた。
「それじゃあ、準備ができ次第連絡すっから、てめーらは街でしっかり準備と休憩とるこった。こっから俺とブライトは忙しくなる。あ、城に入りたきゃ入れるようにしとくぜ。話がしいたいやつがいんだろ?」
こちらの意図をくみ取ってくれたらしく、アークは城への出入りの許可を出してくれた。こうして一行は気付けば夕方になっており宿へと戻った。
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