3IN-IN INvisible INnerworld-

ゆなお

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if六章【決着】

if四十四話 二人一組の時間

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 気がつけばそこは小さな町の目の前だった。
「お、おお? なんかあいつが杖を掲げたと思った瞬間、ここに居た……っておい! ブルーたちが来てねぇぞ!」
 カルロがそう慌てていると脳内に
『大丈夫、もうすぐ着く』
 とストナの声が聞こえた。しばらく待っているとブルーたち四人とストナが現れた。
「ごめんね。ちょっとライアットと話がしたくて皆には着いていかなかったんだ。驚かせちゃったね」
 ローズがそう言うと
「やっぱ世界初の真の魔法使いだからか?」
 とカルロが聞く。それに対しブルーは
「それもある。正式な真の魔法使いは彼女が最初だからね。彼女よりもっと昔にもいたけど、完全な真の魔法使いにはなれなかった。だから色々と話を聞いておきたかったんだ。彼女の場合は特異な例でなったからね」
 ブルーの言葉にヴィッツが
「本来は精霊と契約出来ない身だった、からだろう?」
 と言う。
「精霊と契約出来ない? 魔力の器があるなら魔力の強さに限らず契約出来るんじゃないの?」
 スティアがそう聞くと
「まあプライベートな話だから詳しくは話さねーが。あいつは元々魔力の器を持ってない『魔力欠乏症』だったんだ。数万人に一人、魔力の器を持たずして生まれるヤツがいる。魔力の器がないから精霊が見えないし、契約することも出来ない。でもあいつは奇跡を起こした、というか奇跡が起こった。だから雷の精霊と契約して、そして色々あってこの世界で初めての真の魔法使いになったってわけだ」
 とヴィッツは話した。そして
「『真の魔法使いは人間には存在しない。それが世界の理』って言葉があってだな。ライアットもそれを聞かされてたはずだ。真の魔法使いってのはいわゆる『精霊魔法使い』『呪術師』みたいなクラス分けじゃなくて『真の魔法使いって言う種族』になることだ。人間とは別物になる。だから『人間には存在しない』ってのが世界の理なんだよ」
 するとグレイが
「その話はリオからも聞いたな」
 と言った。ヴィッツは話を続ける。
「ライアットが生きていた時代より前から言われてる言葉だが、そこはブルーが説明したとおりだ。でも何があったかは言えねぇがすべての真の魔法使いは自決して滅びた。一度滅びた種族だな。それから新たな歴史として約三千年前がスタート地点となり、そこから数えて初めて誕生した真の魔法使いってのがライアットなんだ」
 と説明をした。
「元々素直じゃねぇし、人間に対しての嫌悪感もあるってのは知ってた。でも、今頼りになるのがライアットしか居なくて賭けてみたが、まあ森を抜けるよりまさか近くの町まで飛ばしてくれるとは思ってなかったけどな」
 そう言って一か八かの賭けをしたことを話した。ヴィッツの話を聞いてミーンは
「流石、世界が生まれてから生き続けている竜の血を引き継ぐだけはあるのね。私にも読めないし知らないことをあなたが知ってるのが不思議だわ」
 と笑う。すると
「だろう! お前らがバカだと思ってた知識無しの俺がここまで世界のことを知ってるのが面白おかしくてたまらないだろう? いや実際、俺も面白すぎて笑えるんだ。俺がこれだけの知識を得る器だったってことがな」
 とヴィッツも笑った。続けて
「とにかく最終目的まであと少しだ。本当ならもう三日か四日くらいはかかってたのが、最短コースで来れた。今日は宿でゆっくり休んだら、本当の、最後の決着だ。特にティアスとグレイはしっかり休めよ。お前ら二人が要(かなめ)だ。ティアスは体調一回崩してるから、特に慎重にな」
 とヴィッツは真面目な表情で話した。こうして一行は宿で二人部屋を四つ取り、一度荷物を置いて人の少ないところに集まり話をする。
「ねえ、ヴィッツ。儀式はどうやって進行するのかしら」
 ミーンの質問に
「そうだな。その前に説明しときたいことがある。まず島に持ち込める物が限られてる。ティアスの光の杖とグレイの闇の杖は必須だ。他の皆はいつも通りの武器も持ち込める。だが野宿に使ってたテントや食料は余計な物になるから、本当に『もしもの時』の戦える装備だけが持って行ける」
 そう言ってから
「そんじゃあ、ミーンの質問に答えるな。儀式に関してだが、八勇士はやっぱ揃ってねーとダメなんだわ。俺は竜人だからティアスとグレイの力を世界の天秤に流し込むための役目を担ってる。ティアスとグレイはそれぞれ杖に自身の力を注ぎ込む。これがなかなか難しくてな。『お互いの力が均等』にならねーとバランス崩すんだ。どっちか片方の力が強すぎても、逆に弱すぎてもダメ。均等な力を注がねえといけねーから、二人の息がどれだけ合うかが重要だ。で、その間に残ったヤツらはそれぞれの属性の力でその場の精霊力を静めて欲しい。いわゆる結界状態にしてほしい」
 と説明する。スティアが
「精霊力を静めるって、どんな感じですればいいの?」
 と質問すると
「ああ、集中して自分の属性を最大限引き出すだけだ。魔法使う時みたいに自身の中の精霊の力をとにかく集中! まあ気合い入れてりゃそれでいい。ただ儀式終わるまでずっとだからかなり疲れるけどな」
 とヴィッツが答える。
「うーん。ヴィッツの説明いまいち分からないけど。まあとにかく集中すればいいのね」
 スティアがそう言うとヴィッツはうなずいた。するとザントが
「もし、儀式が失敗することになったらどうなるの? ティアスかグレイの力が偏りすぎて、バランスが崩れたら何か起こるの?」
 と質問してきた。ヴィッツは
「そんときゃ、力が強すぎた方の属性の化身が現れる。そいつをぶっ倒しゃあ、とりあえずその場の属性は一旦落ち着く。その後に再度儀式って感じかな。お互いの均等具合が分かれば割とすぐ終わるよ。失敗してもなんとかなる。その分、労力めっちゃ使うけどな」
 と話した。
「世界の命運を分けた話のはずなのに、君はずいぶんと気楽そうに話すよね」
 ザントがそう言って苦笑いすると
「一発勝負じゃねぇからな。何度かはチャンスがある。だから、成功するまですればいいってこった。まあ失敗した分だけ世界の崩壊が進むから、極力早めに終わらせねーとダメだけどな」
 とヴィッツは笑う。それに対してカルロは
「いや笑い事じゃねぇぞ。マジで世界が崩壊するかバランス保つかが俺らにかかってるんだ」
 と冷静に判断する。そして
「最悪一回目は初めてだから無理だったとしても、二回目で決着付けときたいな。それ以上時間かかると本当に崩壊一直線かもしれねぇ。兄貴に姉貴。お互いの力の具合、確認しておけよ。強すぎてもダメ、弱すぎてもダメってことだ」
 カルロがそう言うと
「分かってはいる。だが、どのくらいの力を杖に注げばいいかを試せるのは本番のみ。今は杖に魔力を注ぐことが出来ない」
 とグレイが言う。続けてティアスも
「ヴィッツの動かす世界の天秤が起動しない限り、杖への魔力注入は不可能なんです。だから、本当に本番が最初なんです」
 と言った。カルロはヴィッツに
「なあ、兄貴と姉貴が言ってることは本当か?」
 と聞いた。ヴィッツは
「ああ。俺が世界の天秤を動かさない限り、二人が持ってる杖はただの杖なんだ。世界の天秤が動いて初めて、魔力を注ぐ器となる。そういう仕組みだから、ぶっつけ本番なんだよ。ただ、注いですぐに化身が出ることはねーから。俺がどっちが強すぎる弱すぎるって説明するから、それで調整して二人に頑張ってもらうっきゃねーんだ」
 と説明した。そして
「まあ今回はおまけにブルーたちとストナがいる。いざというときの火力は任せてもいいよな?」
 とヴィッツが聞くと
「任せて! 僕らもたまには暴れたかったからね。まあ何も起こらなければそれに超したことはないけども。何かあったときは僕らが戦うよ」
 とローズが言う。
「そうか。まあ、兄貴も姉貴も体も心も休めるために寝るなり散歩するなり、好きにすりゃいいか。今日は一日ゆっくり出来る。俺たちもまあリラックスするかね。ヴィッツ、解散でいいか?」
 カルロがそう言うと
「そうだな、これ以上ここで説明することはないし。明日の朝まで自由時間としようか」
 とヴィッツも各自好きにするように言った。こうしてスティアとナスティは二人で出かけた。ミーンはティアスを休ませるため、一足先に宿に戻る。ヴィッツとグレイは共に町の中に出かけた。カルロとザントは町の高台に上り周りを眺める。見える範囲だと北の方に海が見える。
「あの手前に魔法陣でもあるのかねぇ」
 カルロがそう言うと
「どうなんだろうね。多分、ヴィッツしか分からないんじゃないかな」
 と少し笑いながら答える。すると後ろからクスクスと笑い声が聞こえる。振り向くとブルーとローズがいた。カルロは
「あんたらなら知ってるか? この先に何があるか」
 と聞く。ブルーは
「ああ、そうだね。知っているよ。ルードリー海域へと入るための魔法陣が眠っている」
 と答える。
「眠っている? ってことは今は見えないってことか」
 カルロの言葉にローズは
「竜の血に反応して目覚める巨大な魔法陣。僕らはそれに乗ってルードリー海域に入る。僕らも人間ではないにせよ、人間の魂で出来た存在だからあの魔法陣からしか入れない。ストナは物質だから直通で行ける。もう現地に向かってるよ。君たちが魔法陣で着く頃にはあの子も到着してるはずだよ」
 と説明した。
「へぇ。あの子ってやっぱり特殊な子なんだね。でも本来の力が目覚めるには別の力が必要ってことだよね。カルロ。魔法科学研究所でなんとかならないかな」
 ザントの言葉に
「そうだなぁ。俺が即位すれば親父も兄貴も魔法科学研究所に入り浸りになるだろうし。ここは親父と兄貴と、トップクラスの連中に任せるのがよさそうだな。でも、あんたは俺のそばにいてくれよ。側近っていう大事な仕事が待ってんだからよ」
 とカルロは念を押す。ザントはクスクスと笑いながら
「大丈夫だよ。君を置いてくことなんてしないから。そう、君の寿命が尽きるその日以降もずっと君のそばに居る。それが僕らエルフの寿命の意味なんだ。大事な人を見守るための長い長い時間」
 そう言ってザントは微笑んだ。

 一足先に宿の部屋に帰ってきたミーンとティアス。ティアスは宿の寝間着に着替えてベッドで横になる。
「姫、お体の具合はいかがですか」
 ミーンの問いに
「まだ少しけだるさが残っています。今日は明日に備えてゆっくり休みます」
 とティアスは答えた。
「はい。明日は万全の体勢で儀式を行わなければなりませんからね。でも……」
「でも?」
 ミーンの言葉に疑問を持ったティアス。そんなティアスに
「この旅ももう終わり、となると少し寂しさが残りますね。最初こそ姫を見つけ、儀式を遂行し、連れて帰る。これらをずっと望んでいたはずなのに、気付くと終わるのが寂しい、そう思うようになりました」
 とミーンは答えた。ティアスは
「そうですね。過去の儀式は変えられませんが、この時代は変えられる。元の時代に戻れば私は時期が来れば女王としての責務を果たさなければなりません。グレイのことは気になりますが、恐らく大丈夫でしょう」
 そう笑顔になり
「グレイにはヴィッツがそばに居ますから。彼がいれば安心です」
 とティアスは言う。その言葉にミーンも
「ええ、固い絆で結ばれた二人。きっとこの先も大丈夫でしょう」
 と微笑みながら答えた。
「食事の時間になったらお呼びします。それまでゆっくり休んでください」
「はい。それではまた後で」
 こうしてティアスは眠り、ミーンは自分のベッドに座り本を読み始めた。

 一方、スティアとナスティはカフェで甘い物を食す。
「ねーねー、ナスティ。私たち、もうすぐ最後の任務が終わるわけじゃない? ナスティは実家に帰って、私はカルロの元に嫁ぐし、ミーンとティアスは多分元の時代に帰っちゃうんでしょうね。グレイとザントとヴィッツはどうするのかしら」
 スティアがそう聞くとナスティは
「グレイの性格からすると魔法科学研究所でディア様のお手伝いをするかと思います。ザントさんはどうでしょうね。エルフの森に帰るんでしょうか。ヴィッツさんもご両親のことは分かってしまいましたし、生まれ故郷に帰るのかもしれません」
 と答えた。すると横の席から
「グレイはナスティの言った通りだ。ザントはカルロの側近として仕えることになる。ヴィッツは……まだ自身の中でも決まってないらしい」
 とアベンが言う。
「おっと、タイトにアベンもカフェ来てたのね。隣に居るの全く気付かなかったわ」
 スティアがそう言うと
「ああ! 翼がないから気付かなかった! というわけですね。私たち翼がある姿の方が見慣れてましたから!」
 とナスティは二人に翼がないことに気付く。アベンは
「別に俺はこんなところで食事をするつもりはなかったが、タイトに無理矢理連れてこられた」
 と不服そうな顔をしつつ大盛りのパフェを食べている。そんなアベンを見て
「そういえばアベンって声とか姿形そのままだけど女性でいいの?」
 とスティアが聞く。アベンは
「声帯はないから声は変わってないが、生物学的に言うと女に分類される」
 と答える。それを聞いてスティアは
「そうなんだ。そういえば男性の魂率がどうのこうの話してたわよね。魂に性別があるのに記憶とかは一切ないって不思議ね」
 と以前の話を思い出す。タイトが
「男性率が高いから男性の人格になるというものでもない。生まれ変わるときの性別も同じく、だ。だが血の契約をするためには男性率と女性率が大きく関わる。男性率が高い者は性別が男に固定され、女性率が高ければ女に固定される。これで初めて血の契約を交わすことが可能になる。こうしなければローズを助けることは出来なかった。あのまま元の世界に戻れば即時人間に生まれ変わり、ローズという人格は消滅していた」
 と説明をする。それを聞いたナスティが
「例え生まれ変わる人間に犠牲が及ぼうとも、ローズさんを助けたかったのですね。ローズさんという人物を、人格を護りたかった。それが、皆様の意見だった、というわけですね」
 と言うとタイトはうなずいた。
「たしかに悪いとは思った。それでも俺たちはローズの命を繋ぎ止めたかった。まだ百年以上あるこの時間、ローズを失って過ごしたくはなかった」
 それに続いてアベンも
「ローズは俺にとっては大事な親友だ。気難しい俺にも気さくに話しかけてくれる良い友達だ。まぁ、今の俺にはこのタイトというお荷物が出来てしまった訳だが……」
 とローズを大事に思いつつ、タイトをにらみつける。
「お前だってその覚悟はあると言っただろう」
「それはローズを助けるためだ!」
「血の契約については知っていただろう」
「知ってはいた! だが、こういう結末になるのは予想外だったんだ!」
 とアベンは自身の胸を指して言った。
「こんな邪魔になるものが付くのは予想外だったんだ!」
 文句を言いつつもアベンはパフェを食べる。タイトは少しため息をつき
「スティアにナスティ。見苦しいところを見せて済まなかった」
 と二人に謝る。するとスティアは
「あ、うん。血の契約がどういうものなのかは私たちには詳しくはわからないけど。まあ、あれ。たしかにその胸は大きすぎるわね。羨ましいを通り越して驚きだわ」
 と苦笑いした。ナスティも
「肉体はない、という感じですけれどもたしかに何をするにも邪魔そうですよね!」
 とアベンに同情する。
「ああ、そうだ。こいつに言ってやってくれ」
 アベンがそう言うと
「お前の性質を最大限引き出した結果だ。俺の趣味趣向とは関係ない」
 とタイトは困った様子で話す。
「最大限出さなくても良かっただろう!」
「いや、ローズを救うにはそれくらいは必要だった」
「むぅ……」
 こうして他に客がいないカフェで四人でいろいろ話ながら時間を過ごした。

 男二人でブラブラと町の中を歩く。ふとヴィッツが
「あ、そういやさ。あの花のこと、まだ詳しく聞いてなかったな。結局あの花とライアットから聞いた話ってのはなんだったんだ?」
 と聞くと、グレイは思い出されたかといった様子で顔を背けた。そんなグレイを見て
「まあ言いたくなかったら詳しい話は聞くのは止める。ただ一つだけ教えてくれ。青い花、あれの意味だけ教えてくれ」
 とヴィッツが言う。グレイはため息をつきながら
「青は友愛の証、らしい」
 と一言だけ言った。それを聞いたヴィッツは
「ああ、純粋なる友愛の証。だから根元まで青じゃねーとダメだったって訳か。それにしちゃ青の花は少なかったな。赤とピンクが多かった。ああ、つまりはそういうことか」
 と何か分かったように一人納得する。そして
「お前の気持ちはそういうことだってことか。いやまあずいぶん重たい責任を持ったもんだ。ま、それを受け入れる覚悟ってのはある。それくらいの責任は俺にもあったってこった」
 そう言ってヴィッツはグレイを見ながら
「そういうことだ、相棒。これからはずっと一緒だよ」
 と言った。グレイはその言葉に最初はきょとんとした様子だったが、状況が飲み込めたのか笑みを見せた。こうして夕飯は全員揃って宿の食堂で食べ、風呂で身を清めて万全の体勢で旅に出るため、早めに眠りについた。こうして準備を整えた一行は朝になり、宿を出て村を出て北を目指した。
「ねぇ。不要なものは持っていけないって言ったわりには、テントとか全部持ってきたけどいいの?」
 スティアが聞くと
「一応今まで世話になった荷物たちだ。一回サウザント城に荷物を送り出してから、俺たちはルードリー海域に入る」
 とヴィッツは言った。
「荷物を転送する手段があるってこと?」
 スティアの追加の質問に
「ああ、そうだ。とにかく魔法陣に向かったら教えるよ」
 とヴィッツが言う。そのまま荷物を背負い、ヴィッツたちは魔法陣のある場所に向かった。一時間ほど歩くと、そこは何もない岬の先端だった。草に覆われたその岬を見て
「何もないわね。何か洞窟とか祠的なものがあるのかと思ってたけど。ヴィッツ、確かにここで合ってるのかしら」
 ミーンがそう言うと
「間違いない、ここで合ってるよ。皆、ここまで下がってくれ」
 とヴィッツは少し後ろに下がり背負った荷物を地面に置いて、北を向いて両手を振り全員がヴィッツの後ろに来るように案内する。ヴィッツに言われるままに全員下がる。そして
「こっからは竜人である俺の出番だ。ちと衝撃が来るかもしれねぇ」
 そう言ってヴィッツは右手を地面に付けて何か唱えた。次の瞬間、衝撃と共に目の前の岬一杯に光る巨大な魔法陣が現れた。ヴィッツ以外は驚いた。
「何これ。結界の魔法陣とかと全然違う。凄い魔力を帯びた魔法陣だわ」
 スティアは驚く。
「これ、ヴィッツが呼び出したの?」
 ザントが聞くと
「俺以外呼び出せない、ここにある転送用魔法陣だ。竜の血が流れた竜人のみが使える。ああ、変身は特にしなくても大丈夫だから、人間の姿のままでも使えるんだ。竜の血に反応するんだ。それじゃあちと魔法陣を調整してサウザントの転送魔法陣に座標を指定っと」
 魔法陣の文字が変わる。そしてヴィッツは
「おーい。魔法科学研究所の誰かー。俺の声が聞こえるかー」
 と魔法陣に向かって声を上げる。するとしばらくして
『えっ、今ヴィッツ様の声がこっちから聞こえましたよね?』
『ああ、転送魔法陣の方から声が……魔法陣が光ってる?』
 二人の研究員の声が聞こえ
「おー繋がった! 今からそっちに荷物だけ送り届けるから預かっといてくれ!」
 と言う。
『えっ。荷物を転送? 登録されてない、ましてや人間ではない荷物だけを?』
『それより転送魔法陣から声が出るなんて信じられない!』
 と混乱した様子の研究員に
「へへっ、竜人様の力舐めんなって! おーい、みんなー。不要な荷物を魔法陣の中心に置きな!」
 ヴィッツがそう指示し、スティアとカルロは各自の、ザントがヴィッツの持っていた分を抱えて魔法陣の真ん中に置く。
「よし! それじゃ魔法陣の外に出な」
 ヴィッツの指示に従い三人は元の場所に戻る。そしてヴィッツが何かを唱えた瞬間、魔法陣の中心にあった荷物が消えた。そして
『うわっ! 転送魔法陣にたくさんの荷物が来た!』
『ヴィッツ様! 今、竜人がどうとかおっしゃいましたよね? 竜人は見つかったのですか?』
 と聞いてくるも
「急ぎの用事なんで、詳しいことは任務終えてから話す! そんじゃあ通信切るぜ!」
 とヴィッツは一方的に魔法陣を書き換えて通信を切った。あっけにとられる全員を見て
「まあこういうわけで、転送魔法陣とこの魔法陣を直結させて荷物を送った」
 ヴィッツの説明に
「あの転送魔法陣は人を登録して送ったり引き戻したりするもんだぞ。竜人の血ってのは本当すげぇことが出来んだな……」
 とカルロは驚いた様子で言った。
「さあ、準備は整った。全員魔法陣の中心に集まってくれ」
 ヴィッツは魔法陣の真ん中に立つと、全員を呼ぶ。中心部に集まると
「みんなで乗るにしても広すぎない? 二十人くらい乗れそうな大きさの魔法陣よね」
 とスティアが言う。ヴィッツは
「そりゃあ、乗るのが八人とは限らねぇからな。八精霊の勇士と光を司る者と闇を司る者と竜人。多ければこれに何人かついてくる場合もあるってわけだ。実際、ブルーたち四人が来ただろう? ストナはあれだな。直通で一気に駆け抜けて現地待ちだろう」
 と説明する。
「じゃあもう出発するぞ」
 そう言ってヴィッツが何かを唱えると、全員は一斉にその場から消えた。
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